雨が止むと、大型のバーテックスの姿が露わになった。
元より期待などしていなかったが、実際に目にすると、お前では勝てないと言われているようで、消耗した心に重くのしかかる。
バーテックス――これほど理不尽な存在は他にはいない。
ぐっと、口を結んで海未は自身の心に問いかける。
――奇跡は起こすものでしょう?
神樹の……神の力は既に海未の手の内にある。
本来ならば、人の身には大きすぎるその力を海未は持っている。
それ自体がもう奇跡のようなものだ。
大切な人を自ら守るチャンスがあるのに、行動しない理由はない。
弓を引く。
照準、そして放つ。
白い光が、七色の空を塗り替えて、膨らんでいく。
それでも……
バーテックスは止まらない。バーテックスが一歩進む度、海未に焦りを生み出した。
バーテックスが再び小型種を生み出し始めるのが見えて、海未は迷わず『時雨』を放つ。
小型種を払う雨は、生み出された小型種を破壊していった。
しかし、同じ手が何度も通用するような相手ではないということを、海未は身をもって知ることになった。
生み出された小型種が一か所に集まり、これまでの小型種よりも数倍は巨大な個体へと変化していく。強化された個体は、降りかかる時雨をものともせずに、空を悠然と漂っている。
次々と集まっては合体していくのを、海未も黙って見ているわけではない。
直ぐに弓を構え、矢を放つ。力の収束もそこそこに放った矢が命中する寸前、その大きさからは想像も出来ない加速力でかわしてみせた。
――速いッ!!
水生生物を思わせるシルエットが揺らめいて、空を泳ぐようにして海未の方向へと迫っていく。その個体を追うように、次々と合体した個体が身を翻して、海未のもとへと向かって動き出した。
迎え撃たんと、海未はそれらに向かって続けざまに矢を放ったが、その全てが的を射ることは出来なかった。
ならば、と『時雨』を放っても、合体した個体の前では威力が足りなかった。
一定距離まで近づいた合体個体は、ギザギザとした口を開くと、さながら爆撃機のように、高度をさげ加速しながら一瞬で小型種をばら撒くと、再び高度を上げて離脱していった。
周囲にばら撒かれた小型種が一斉に起爆し、海未は爆風に飲み込まれた。