高坂穂乃果は勇者である   作:ZENSUN

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1-9 初陣6

 雨が止むと、大型のバーテックスの姿が露わになった。水黽(あめんぼ)のような長い脚が地面を覆う根の隙間にゆっくりと伸ばし、巨大な体が音もなく進んでいく。小型種を殲滅した雨は、大型のバーテックスの持つ、硬い表皮を破ることは出来なかった。

 元より期待などしていなかったが、実際に目にすると、お前では勝てないと言われているようで、消耗した心に重くのしかかる。

 バーテックス――これほど理不尽な存在は他にはいない。

 ぐっと、口を結んで海未は自身の心に問いかける。

 

――奇跡は起こすものでしょう?

 

 神樹の……神の力は既に海未の手の内にある。

 本来ならば、人の身には大きすぎるその力を海未は持っている。

 それ自体がもう奇跡のようなものだ。

 大切な人を自ら守るチャンスがあるのに、行動しない理由はない。

 

 弓を引く。

 照準、そして放つ。

 白い光が、七色の空を塗り替えて、膨らんでいく。

 

 それでも……

 バーテックスは止まらない。バーテックスが一歩進む度、海未に焦りを生み出した。

 バーテックスが再び小型種を生み出し始めるのが見えて、海未は迷わず『時雨』を放つ。

 小型種を払う雨は、生み出された小型種を破壊していった。

 しかし、同じ手が何度も通用するような相手ではないということを、海未は身をもって知ることになった。

 

 生み出された小型種が一か所に集まり、これまでの小型種よりも数倍は巨大な個体へと変化していく。強化された個体は、降りかかる時雨をものともせずに、空を悠然と漂っている。

 次々と集まっては合体していくのを、海未も黙って見ているわけではない。

 直ぐに弓を構え、矢を放つ。力の収束もそこそこに放った矢が命中する寸前、その大きさからは想像も出来ない加速力でかわしてみせた。

 

――速いッ!!

 

 水生生物を思わせるシルエットが揺らめいて、空を泳ぐようにして海未の方向へと迫っていく。その個体を追うように、次々と合体した個体が身を翻して、海未のもとへと向かって動き出した。

 迎え撃たんと、海未はそれらに向かって続けざまに矢を放ったが、その全てが的を射ることは出来なかった。

 ならば、と『時雨』を放っても、合体した個体の前では威力が足りなかった。

 一定距離まで近づいた合体個体は、ギザギザとした口を開くと、さながら爆撃機のように、高度をさげ加速しながら一瞬で小型種をばら撒くと、再び高度を上げて離脱していった。

 

 周囲にばら撒かれた小型種が一斉に起爆し、海未は爆風に飲み込まれた。

 

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