高坂穂乃果は勇者である   作:ZENSUN

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1-10 初陣7

 嵐のような風が、周囲の破片を巻き込んで、海未を盛大に揺さぶった。

 立っていられないほどの振動と衝撃。

 押し寄せる合体個体が、次々と降下しながら小型種をまき散らしては通り過ぎていく。

 天と地が逆転したような気分の中、破片に脇腹を打ちつけながらも、海未は懸命に活路を探していた。

 頼れるものはただ一つ。

 自信はない……

 だが、生きるためには、

 

――やるしかない!

 

 弓を構え、イメージする。

 今から放つのは、嵐を引き裂く一矢(いっし)

 (つが)えた矢が風を纏い、(やじり)に集束し、一点へと凝縮する。

 幾重にも重なった風は、限界まで圧縮され閉じ込められた。

 目には目を、暴風には暴風を。

 狙うのは一瞬――

 海未が叫ぶ。(やじり)から風が解き放たれ――

 

 空が切り裂かれたかと見紛うような勁風(けいふう)が吹き抜けた。

 再び降下を始めていた合体個体もろとも、爆風を消し去った。

 それだけではない。膨大なエネルギーを持った風が地表を舐めた。地面を覆っていた植物を根こそぎ蹴散らして、地を駆けた。

 そして、その先には今なお前進を続けている大型のバーテックスの姿があった。

 明らかにバーテックスの歩みの速度が上がっていた。

 慌てたように小型種の生産を再開するが、海未の放った時雨がそれを許さない。たった一匹の小型種さえ許さないと、海未は二発、三発を時雨を撃ち続ける。

 大型バーテックスがさらに速度を上げる。

 ここまで来て、逃がすものかと、海未は矢を放つ。

 振り上げられた長い脚を撃ち砕き、バーテックスの姿勢が傾いだ。

 

 限界は近い全身から警告が発せられているのを、海未は声で吹き飛ばして勁風(けいふう)が凪いだ地上を(はし)った。

 守る手段を失った大型のバーテックスを見据え、海未は懸命に進む。

 巨大な脚の下をくぐり抜けて、バーテックスの真下へと潜り込む。番えた矢に力集め、海未は跳ぶ。

 大型のバーテックスとの距離が零になった瞬間、海未は練り上げた『種』(いちげき)を撃ち込んだ。

 

 撃ち込まれた種は、バーテックスの体内で荒れ狂う激流のように御魂をも喰らいつくし、青い光の華を咲かせると、眩い閃光を伴って散華した。

 

 轟音でも爆発でもなく、静寂が戦闘の終わりを告げた。

 持てる全てを凝縮し吐き出した海未はへたり込むと、崩壊していくバーテックスを見上げて気づく。

 だが不思議と取り乱したりすることはなく、どこか俯瞰しているかのような気分のまま、頭上から降ってくるバーテックスの残骸を見つめていた。

 

 

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