嵐のような風が、周囲の破片を巻き込んで、海未を盛大に揺さぶった。
立っていられないほどの振動と衝撃。
押し寄せる合体個体が、次々と降下しながら小型種をまき散らしては通り過ぎていく。
天と地が逆転したような気分の中、破片に脇腹を打ちつけながらも、海未は懸命に活路を探していた。
頼れるものはただ一つ。
自信はない……
だが、生きるためには、
――やるしかない!
弓を構え、イメージする。
今から放つのは、嵐を引き裂く
幾重にも重なった風は、限界まで圧縮され閉じ込められた。
目には目を、暴風には暴風を。
狙うのは一瞬――
海未が叫ぶ。
空が切り裂かれたかと見紛うような
再び降下を始めていた合体個体もろとも、爆風を消し去った。
それだけではない。膨大なエネルギーを持った風が地表を舐めた。地面を覆っていた植物を根こそぎ蹴散らして、地を駆けた。
そして、その先には今なお前進を続けている大型のバーテックスの姿があった。
明らかにバーテックスの歩みの速度が上がっていた。
慌てたように小型種の生産を再開するが、海未の放った時雨がそれを許さない。たった一匹の小型種さえ許さないと、海未は二発、三発を時雨を撃ち続ける。
大型バーテックスがさらに速度を上げる。
ここまで来て、逃がすものかと、海未は矢を放つ。
振り上げられた長い脚を撃ち砕き、バーテックスの姿勢が傾いだ。
限界は近い全身から警告が発せられているのを、海未は声で吹き飛ばして
守る手段を失った大型のバーテックスを見据え、海未は懸命に進む。
巨大な脚の下をくぐり抜けて、バーテックスの真下へと潜り込む。番えた矢に力集め、海未は跳ぶ。
大型のバーテックスとの距離が零になった瞬間、海未は練り上げた
撃ち込まれた種は、バーテックスの体内で荒れ狂う激流のように御魂をも喰らいつくし、青い光の華を咲かせると、眩い閃光を伴って散華した。
轟音でも爆発でもなく、静寂が戦闘の終わりを告げた。
持てる全てを凝縮し吐き出した海未はへたり込むと、崩壊していくバーテックスを見上げて気づく。
だが不思議と取り乱したりすることはなく、どこか俯瞰しているかのような気分のまま、頭上から降ってくるバーテックスの残骸を見つめていた。