☆
覚悟を決めて目を閉じた海未が再び目を開けると、どういうわけか降ってきた残骸は海未を避けるようにしてあたりに散らばっていた。
(運が良かった、というわけではないのでしょうね)
奇跡が起きたなんて夢を見るほど海未は楽観的な人間ではない。この状況は明らかに何らかの介入があったのは明らかだ。
だが、兎も角バーテックスを倒したのは間違いはないらしい。だとすれば時期にこの結界である樹海も消えて、元の世界に戻ることになるだろう。
「まだまだ精進しなければなりませんね」
そう呟いたタイミングで、七色の世界は霧散し、見慣れた現実の風景へと変化した。
海未が立っていた場所は、音ノ木坂学院の敷地ではなく、学院から少し離れた公園の中だった。
見慣れた風景、見慣れた空を見ると改めて、生きて帰ってこれたという実感と同時にこの手で守ることが出来たという達成感。
――会えるとは思っていませんが。
その余韻に浸りながら、海未は大切な友人の無事を確かめようと音ノ木坂学院へと足を向けた。
公園から学院まではおよそ十分ほど。戦闘後の疲労感で重い足取りで学院へと向かって歩いていく。その疲労感さえ心地良いと思えるほど今の海未の気分は高揚していた。
どこか浮ついた気分のまま、夕焼けに照らされた音ノ木坂学院の校舎を眩しそうに見上げると海未は改めて守ることが出来て良かったと思った。
「あれは穂乃果?」
ふと、玄関先に立つ人影に目をやると、その人影は海未のよく知る人物であることに気が付いた。
穂乃果の無事を確認したことで、より一層海未の中で達成感が膨らんでいく。これまでの努力が間違っていなかったのだと、言われたような気分さえした。
玄関先に立つ人影は穂乃果一人ではなかった。もう一人、穂乃果の隣には赤毛の女の子の姿があった。
穂乃果は持ち前の明るさと人懐っこさもあって、行内での交友関係はかなり広い。だが、それに反して学外でも遊んだりするような友人ともなれば極端に少なくなる。
確かに穂乃果のコミュニケーション能力は高いが、それでいてどこか頑なな面もある。一歩踏み込んだ関係になることに関しては意外なことに億劫なのだ。
休日に海未やことりといった小さい頃からの友人意外と遊びに行くことは稀でクラスメイトと遊びに行くとしても、そのメンバーには必ず海未かことりが含まれていた。
――私の知らない友人が?
玄関先の二人の様子はかなり親しげに見える。赤毛の女の子に向ける表情は、海未やことりに向けるものに近いものだ。
そんな穂乃果の姿を見ていると、なんだか落ち着かない感覚がして胸がもやもやとしてくる。
得体の知れない感情に戸惑っていると、穂乃果と赤毛の少女の顔がどんどんと近づいていくのが見えて、
「……!?」
その光景は海未にとって、あまりに衝撃的なものだった。胸を雷に打たれたような衝撃が走り、同時に何かが終わってしまったかのような気分になった。