ーー四年前。
絢瀬絵里と絢瀬亜里沙は生まれた時から特別だった。
それは、大赦に連なる名家に生まれたからでもなく。勇者としての適正が高いなどということでもない。
絢瀬の家に生まれたのだから、勇者になるのは当然で、優秀であることは当たり前だった。
勇者の纏う戦闘衣を紡ぐ技術を持っていたことから、絢瀬家は歴代の勇者の情報を詳細に記録し、分析を続けていくうちに、勇者適正を持つ子どもたちの遺伝子の一部には、共通した因子が存在することが発見された。絢瀬家はその因子そのものだけでなく、それにまつわるもの全てを徹底的に調べ上げた。調べを進めていくと、その因子は、西洋で魔女と呼ばれた者たちが持っていた遺伝子にも共通していることが分かり、勇者は日本のみならず海外においても名を変えて存在することを突き止めた。
優秀な勇者を生み出すため、絢瀬家は魔女の血を求めてヨーロッパに渡り、かつての魔女の家系をも取り込んで自らの血を強くする手段を取った。
入念な計算のもとに生み出された絢瀬の後継者。それが、絵里と亜里沙だった。
現代において魔女という才能が失われつつあることは、魔女としての因子が劣性遺伝していくことに関連があると考えられたため、金髪碧眼の姉とアルビノの妹という、珍しい遺伝子情報を与えられ生まれてきた姉妹は、絢瀬家の計画通り、高い勇者適正を有していた。
幼少期より、計算されたスケジュールをもとに教育が進められ、絵里は十歳になると、最年少で勇者としてのお役目を言い渡された。妹の亜里沙は、適正こそ歴代勇者たちの中でも最高のものであるとされたが、極端な遺伝子調整の反作用で身体の成長が平均より遅く、肉体の強度が足りないとされ、勇者のお役目は当面の間、絵里が担うこととされた。
先天的に意図して欠陥を埋め込まれた結果、亜里沙は抵抗力が弱く、よく熱を出していた。亜里沙が期待に応えられないとわかると、絢瀬家は絵里を優遇するようになった。何をするにも絵里が優先され、亜里沙は家の中で疎まれる存在になっていた。
一時は養子に出すか、という議論が持ち上がったものの、絢瀬家の技術が流出すということと、絵里に万が一があった場合の予備として、教育は続けられた。
そんな妹を絵里はとても可愛がっていた。それは決して憐憫≪れいびん≫ではなく、唯一の家族に対する愛情だった。幼いながらに絵里は、自分の両親が遺伝子上のものでしかないということを理解していた。故に自分にとって血のつながった家族は妹しかいないということも。