穂乃果の家から、待ち合わせの場所まではそれほど遠くない。いつも穂乃果が一番遅くやってくるため、だんだんと待ち合わせ場所が穂乃果の家に近くなった結果だ。
珍しく、というよりも初めて三人がほぼ同時に集まった。
「おはよう! 海未ちゃん、ことりちゃん!」
「おはようございます」
「おはよう、穂乃果ちゃん、海未ちゃん」
朝から元気満点の穂乃果に芸術点満点のお辞儀をする海未、低血圧でいつもよりもふわふわ度が増したことりは挨拶もそこそこに歩き出した。
幹線道路と比べて交通量の少ない住宅街を他の生徒と共に歩いていく。この時間帯にこの通りを歩いているのは、ほとんどが学生で、たまに近くの住人や通勤者が通るものの、ほとんど学生の専用道路とも言えた。
眠そうに歩く子や、穂乃果たちのように友人と登校する子、スマートフォンに目を向けて歩く危なっかしい子と三者三葉といった通学路の中にあって、明らかに異質な視線を感じ取って、海未は意識をそちら側へと切り替えた。
(見られている? これは、敵意……?)
奇妙な視線だった。友好的でないというのは間違いないが、入念なセキュリティーチェックでもするかのような、敵意はなくとも疑いはある、そんな感覚だった。
(どこから……)
気取られないように、二人との歩調を合わせつつ、周囲に視線を走らせる。勇者とはいえ、武家の家系に生まれた身、たとえ生身でも大抵のことは対処出来るように手ほどきを受けている。
(周辺に居るのは学生ばかり、だとするといったいどこから……)
しかし、そんな海未でさえ視線の出処がはっきりと掴めずにいた。見つけたからといって、通学路で表立って対処するわけにもいかず、海未はその視線を背に受けながら学院のそばまで歩くほかなかった。
「海未ちゃんどうしたの? すっごく怖い顔してるよ?」
決して気を抜かないようにと歩いていた所為か、海未は表情にまで気が回っていなかった。穂乃果に指摘されてようやく、海未は張りつめていた緊張を解いた。
「おなか痛いとか? それとも……あっ!」
何かに気が付いた様子の穂乃果が、一泊遅れてよそよそしい態度を取ったことで、どういう考察をしたのか海未は顔を赤らめて真っ向から否定した。
そんな二人のやりとりを、ことりは微笑みながら見守っていた。この構図は昔から変わっていない。
(全く、穂乃果にはいつもいつも……。それより、視線の主は消えましたか)
安堵と呆れたため息を海未は同時に吐きだした。
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