高坂穂乃果は勇者である   作:ZENSUN

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2-4 それぞれの朝4

「ふたりとも、おくれちゃうよ~」

 

 校門前で騒ぐ二人を優しくたしなめて、ことりは穂乃果を りつける海未の腕を取った。その際、ささやかではない膨らみが押し付けられ、海未は違う意味で顔を赤く染めながらも、ことりのなすがまま、腕を引っ張られ校舎へと入っていった。

 どさくさ紛れに海未から逃げ出して、先に校舎に入った穂乃果は下駄箱で上履きに履き替えていると、背後から声を掛けられた。

 

「勇者部……ってあなたよね」

 

 振り返った先に立っていたのは、ツインテールの随分と小柄な少女。

 穂乃果は一瞬、この少女が一年生かと思ったが、直ぐにスカーフの色を見て、この少女が三年生の先輩であることに気が付いた。

 

「えっと……」

「矢沢にこよ」

「高坂穂乃果です。なにかご用ですか、矢沢……先輩」

 

 たどたどしくはあったが穂乃果は敬称を忘れなかった。

 先輩、と呼ばれたことにわずかな動揺を見せたにこであったが、穂乃果を見上げると咳払いを一つ挟んで間を置くと、本題を話し始めた。

 

「ポスターを見たわ。どんなことにでも力を貸してくれるって本当?」

「え、あ、はい」

「お願いしたいことがあるから、今日の昼休みにアイドル研究部の部室まで来てほしいのよ」

 

 初対面の先輩から頼みと称しての呼び出し。そこだけを切り取ってみると、あまりいい印象は抱けない。それは穂乃果も同じだった。だが、それ以上に勇者部を頼ってくれる人が現れたという事実に穂乃果は少しだけ嬉しくなった。

 

「わかりました。あ、海未ちゃんとことりちゃんも一緒でいいですか?」

「かまわないわ。何なら昼食も持ってきていいわよ。部室にはエアコンもついてるし、涼しい所で食べたほうがいいでしょ?」

 

 言い終えて、にこは「それじゃ、昼休みお願いね」と告げて、足早にその場から離れていった。にこの方からしても、下級生を呼び出しているところを第三者に見られたくなかったからだ。

 去っていくにこの背中を見送っていたところに、遅れてきた海未とことりが追い付いて、穂乃果に、どうしたのかと尋ねた。

 

「なんか、勇者部に頼みたいことがあるんだって」

「ほんと? よかったね穂乃果ちゃん!」

「それで、頼み事とは何だったんです?」

「内容は昼休みにアイドル研究部の部室で話したいって」

「それじゃあ、昼休みになったらそこにいくんだよね」

「もちろん三人一緒にね! ご飯もそこで食べて良いって言ってたし♪」

 

 ふふん、と期待に満ちた表情で穂乃果は言った。この場合、期待の対象が昼ご飯そのものなのか、依頼の内容なのかは誰も聞かなかった。

 昼休みの到来を知らせるチャイムが鳴ると、教室の空気が一気に華やいだ。

 流石の海未も思わず、あくびをしそうになって、海未は慌てて口元を手で隠した。慌てて、辺りを見回してみたが、幸いにして、海未の事を見ていた人物はいなかった。

 いなかったが――

 

「ほぉのぉかぁぁぁぁ!」

 

 視界の片隅に幼馴染が机突っ伏して何やら気持ちよさそうな呼吸をしているのが映った瞬間、教室に雷が落ちた。 

 

「海未ちゃんひどいよぉ……」

 

 落ちた雷を受けた頭部をさすりながら、穂乃果は涙目でことりにすがりついていた。

 わざとらしくウソ泣きする穂乃果をことりは撫でながら、目くじらをたてる海未をたしなめた。

 

「ことりは穂乃果に甘すぎます! そもそも……」

「まぁまぁ、海未ちゃん。アイドル研究部の部室にも行かないといけないし、お説教はこのくらいで、ね」

 

 第二ラウンドが始まりそうになるのを、ことりの執り成しで抑え、三人は約束のアイドル研究部の部室に向かった。




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