高坂穂乃果は勇者である   作:ZENSUN

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2-5 バックダンサー

 それぞれの昼食を片手にアイドル研究部の部室にたどり着いた穂乃果たちは迷うことなくその扉を叩いた。

 扉の向こう側からの応答は早く、穂乃果たちは「失礼します」と告げて、部室に入った。

 

「散らかってるけど、適当に座って」

 

 穂乃果たちに背を向けたまま、この部屋の主たる人物は手を振って三人の来客を歓迎した。

 部屋に入った三人はぐるりと部室内を見渡して、言葉を失った。ーーいい意味で、だ。

 アイドル研究部の部室は様々な物に囲まれて雑然としていた。しかし、汚すぎるというわけではない。壁に張られた様々なアイドルたちのポスターやタペストリー。棚にはグッズが並べられ、鍵付きのキャビネットにはライブ映像が収められたディスク媒体が多数収められていた。棚の脇に積み上げられた段ボールの数を見れば、ここに展示されているものが、ごく一部であることがうかがえる。数が多くどうしても所狭し感は否めないが、グッズ類の展示の仕方も丁寧であり、まるでアイドルグッズのショップと言っても刺し違えないというレベルだった。

 

 それ以外にも、部室の中央には長方形の折り畳み式テーブル、エアコンはもちろんのこと、デスクトップパソコン、冷蔵庫に電子レンジといった家電類も充実していた。

 穂乃果たちは圧倒されながらも、テーブルに備えられていた席に並んで腰を下ろした。

 

 ちょうどそのタイミングで、ずっと背を向けていたにこもデスクトップパソコンの前から立ち上がり、冷蔵庫から缶のお茶を4つ取り出してそれぞれの前に置くと、穂乃果たちと向かい合わせに腰を下ろす。

 

「とりあえず食べながら話しましょ」

 

 差し出されたお茶をありがたく受け取った三人はそれぞれ持ち込んだお弁当を開き、いただきますと言って食べ始めた。

 

「食べながらでいいから聞いてちょうだい。まず私の名前は矢沢にこ、一応このアイドル研究部の部長ってことになるわね」

 

 赤いリボンで黒髪を二つに括った、どう見ても高校生には見えない容姿。エアコンが苦手なのか、初夏にもかかわらずピンク色のカーディガンを羽織っていた。

 にこの自己紹介に続いて、穂乃果たちも穂乃果、海未、ことりの順で自己紹介を済ませると、にこはお茶を一口飲んでから、要件を話し始める。

 

「お願いしたい事っていうのは、他でもないわ。私のバックダンサーをやって欲しいのよ」

「バックダンサー?」

 

 図らずも三人が同時に首を傾げ、疑問符を頭の上に浮かべている。ただしこの場合の疑問はバックダンサーが何か、ということではなく何故バックダンサーを依頼してきたのかというものだ。




次回更新は21日です!
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