「それで、ただバックダンサーをやってもらうんじゃフェアじゃないし、終わったらお礼ってわけじゃないけど、私も勇者部に入部してあげるわ」
「え!?」
にこの発言に穂乃果が驚きの声を上げた。
「どういうことです?」
海未が訝しげな表情で尋ねる。提案自体はありがたいものだが、それだけに、簡単に受け入れることが出来なかった。
「勘違いしないでよね、あくまで入部するだけよ」
つまり、にこが言っているのは幽霊部員になるということだ。しかし、それには一つ問題があった。
「確か、掛け持ちは禁止されてましたよね」
ことりの言うように、この学院では、部活動の掛け持ちは禁止されている。にこが勇者部に(たとえ幽霊部員であっても)入部するにはアイドル研究部を辞めなくてはならない。
「それなら大丈夫よ。このアイドル研究部はもう廃部だし」
「えぇっ!?」
本日二回目の叫び声が部室に響いた。今回は海未も動揺を隠せなかった。
「部員がいないんだもの、当然でしょ」
当然という言葉に反して、にこの顔は諦めのような悲しさを帯びていた。
「本当に、それでいいんですか?」
「私が嫌だって言ったら、あんた達が部員になってくれるっての?」
「それは……」
「さっきも言ったけど、いい部分だけを味わおうなんて話はないの、アイドルも部活動もね」
そこまで言って、にこは部室を出ていこうと扉に手を掛けた。
どこに行くのかと尋ねる穂乃果に、にこは、
「引き受けてくれるって言ってくれたのはありがたいけど、もう一度、三人でよく考えてから答えてちょうだい」
と、言って部室から静かに去っていった。
残された三人は顔を見合わせたあと、改めてにこの頼みについて考えた。
「海未ちゃんどうしよう?」
「コンテストは審査もあるという事ですし、私たちはバックダンサーとはいえ、私たちのパフォーマンスも審査の対象になるでしょうから、簡単に引き受けていいものか迷いますね」
「私はやっぱり引き受けてもいいと思う。矢沢先輩が勇者部に入ってくれるっていうのは置いておいても、私たちを頼ってくれたんだし」
「それはそうだけど、私ダンスなんてしたことないよ」
バックダンサーとしてコンテストに出るという重圧に、今一歩踏み出せないことり。幼馴染であるがゆえに、ことりは穂乃果と海未の身体能力を知っていた。穂乃果はそもそも体育会系であるし、海未に至っては武術に日舞の経験まである。
ダンス経験はなくてもこの二人は直ぐに上達するだろう。しかし、
「私運動苦手だし。絶対二人の、矢沢先輩の迷惑になるよ……」
次回更新は29日です。