「穂乃果、どうします? 引き受けた結果、私たちの所為でなんて言われたら、一番傷つくのはことりですよ」
苦手であることを強要して、結果として失敗したら、どんなに二人が庇ったり慰めたとしても、ことりの性格上、絶対に罪悪感に苛まれてしまう。たとえ、にこが何も言わなかったとしても、だ。
「うん、わかってる。でも、私は引き受けたい。多分、私はバカだからさ、責任の重さとか、コンテストの事も本当にはわかってないかもしれない。でも、矢沢先輩には私たちしかいなかったんだと思うんだ」
穂乃果はにこが言った「私が嫌だって言ったら、あんた達が部員になってくれるっての?」というフレーズが頭に残っていた。
本音を言えば、きっとにこだって仲間と一緒にステージに立ちたかったはずだ。だが、それが叶わないと、諦めて穂乃果たちに頼んだのだろう。アイドルコンテストはグループだけではなく、個人コンテストもあるはずだ。それでも、にこはグループコンテストを選んだことに、きっとにこの本音が隠れている気がした。
「部員も居ない。でも、頼める人も居ない。でも、コンテストを諦めきれなかったから、私たちを頼ってくれんだと思う、だから……」
「穂乃果、もういいです」
「でも、海未ちゃんにもことりちゃんにも迷惑かけちゃうし……」
「穂乃果ちゃん!」
今にも泣きそうな顔をしていた穂乃果に、ことりが抱きついた。
「ことりちゃん!?」
「やろうよ、穂乃果ちゃん!」
「でもっ!」
「私頑張るから、ね」
抱き着いたまま、ぐいっとことりが顔を近づけて言う。
「やりたいのでしょう?」
穂乃果がやりたいと言い出したり、やっぱり怖いと思うはいつもの事。勢いで始めるくせに、気が付いたら立ち止まっている。そんな穂乃果の手を引くのもいつものこと。人一倍好奇心旺盛で、それでいて意外なほど繊細で優しい幼馴染。その背中を押すように、二人は穂乃果に向けて微笑んで見せた。
「やりたい……けど……」
「私たちに迷惑をかけるなんて、そんなの今更でしょう? これまで、どれだけ迷惑掛けられたと思っているんですか」
「多分、きっと、私は二人の足を引っ張っちゃうだろうけど、私も穂乃果ちゃんの気持ちを手伝ってあげたい」
「二人とも……ありがとう――」
ことりは海未の手を引っ張って強引に引き入れた。
恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、海未は二人に手を回して二人を抱き寄せて、三人は抱き合いながら頑張ろうと誓い合った。
ちょうどそのタイミングで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。仕方なく、にこへの返事は放課後改めて部室で伝えることに決めて、三人は教室に戻っていった。