「つまり、先日思わせぶりな言動をしておきながら、別に茜さんと葵さんは古くから日本を守ってきた霊能者一族というわけではない……?」
「まぁ身も蓋もない言い方やけど、そういうことになるな」
後日、琴葉神社にて。
茜さん、葵さん姉妹にご招待され、女子高生の集いらしくお菓子をつまみながらオカルト世界と琴葉姉妹二人について色々と説明を受ける。
「別にうちらのオトンもオカンも霊能者ってわけやなかったし。普通の神主とその奥さんやったで」
「日本の神社仏閣の全部が全部、そういう家系の血筋で管理されてるわけやないからなぁ。知っとる? 日本の神社と寺院って合計したら全国のコンビニの2倍以上あるんやで」
「そこに全部霊能力者なんかおったら隠しきれるわけないわなぁ」
「ではどういう経緯でオカルト蠢く裏側の世界にデビューを?」
「「オトンとオカンが【悪魔】に殺されて、霊能者の一族に保護されたから」」
「……なるほど、お二人のご両親のご冥福をお祈りします。ではお二人はオカルトの世界に関してその時に教えてもらったと」
「そうそう。ほんでな、うちらが保護された時って、日本中で霊能力者が本気で足りへんかった時期やねん」
「『古い神社の娘なら、もしかしてどこかの家の血が流れてないか?』って才能のチェックというか、検査されたんよ」
「結果、当たりやったらしくてなぁ。『後見して修行もつけるから霊能者を目指さないか』って話をされてな」
「助けてもろた恩もある。オトンとオカンの仇もある。何より知ってしもた以上【常人の目に見えない存在】である【悪魔】に怯えて生きたくなかったうちらは承諾したで」
「まぁその頃は、まさかガイア連合がここまで日本の状況を持ち直してくれるなんて誰も思ってなかったんやろなぁ」
「なるほど……ではお二人は修行は受けて無事霊能者になったけれども、状況的に不要になってポイされたんですか?」
「言い方ぁ!! ……むしろ逆やで。うちらは実家であるこの神社一帯の霊的防御を担えるようになる事を期待されとる」
「その心は?」
「【終末】や。国内はまだ平穏やけども、それでも徐々に終末へと近づいとる。海外みたいにあちこちに悪魔が出没して人の世の理が終わるんも時間の問題や」
「終末が来たら自分らが生き残れる保証はない。今地方の霊的組織は終末後の生き残りをどうするかでどこも駆けずり回っとるで」
「皆生まれ育った地元を捨てたいわけやない。けど全部を助けるのは、無理や。霊的組織同士の結びつきを強めていざという時の約束を交わしたり、装備を準備したり可能な限りの備えをするしかない状況や」
「それでうちらは『その時』が来たらここら一帯を守れへんかって。他の知り合いも別の場所に向かった。守りきれそうな場所は駄目そうな場所の人らを受け入れようって話やな」
「あの、なんか終末が来ることは前提として話が進んでるみたいなんですが、どうにからならないんですか? ガイアグループが実はガイア連合という霊的組織の表の顔で、実力者揃いの凄い所だって話してたじゃないですか」
「【終末が来る】その話の出どころはガイア連合や」
「わーお……」
つまり国内最大手かつ最強、世界でも屈指の霊的組織が、終末回避に関しては既に匙を投げているというわけだ。
そういえばガイアポイントカードのCMの謳い文句は『系列店では永久不滅、世界が滅んでも有効』でしたね……うん、絶望的ですね。
「終末が来たら、日本を含めた世界は今の海外の状況より酷くなるんですよね? 海外の状況って、お二人の端末で見せてもらったDDS-NETみる限り本気でダメそうなんですけど」
「今の海外の状況は半終末って所らしいで。今より酷なるんは間違いないやろうな」
「じゃあ、あの怪しい日本語でやたらこっちを構い倒してきた外人さん達はどうなるんです……?」
「謎の踊りしながら海外の曲を空耳カバーする動画は、一発取りなんもあってウケタなぁ……。まぁ、大半はどうにもならんかもしれん……」
「そんな……」
「まぁ、でも、わかるやろ? そんな半終末の世界で生き残ってる人らが頼みにしてるのが……」
「【悪魔召喚プログラム】……そして【デモニカ】ですか……」
「そういうことやな」
「なるほど、しかしこの悪魔召喚プログラムを起動して、悪魔と契約するには覚醒者とやらである必要があると」
「せやで、非覚醒者では悪魔を実体化させるためのMAGが足りへんし、そもそも悪魔が見えへんからなぁ」
「【デモニカ】があれば非覚醒者でも戦える……らしい。けど今は国内じゃほとんど一般に流通してないらしくてうちら程度では良くわからんのよ」
「どうしてです? メイド・イン・ガイアなんでしょう?」
「海外輸出に全振りされとるって話や。対メシアン過激派戦線はそりゃ欲しいやろな」
「修行して覚醒せんでも悪魔と戦えるようになるなんて夢の兵器やもんな……」
「一応ガイア連合の正規メンバーになれれば手に入るって噂やけど、もの凄い高いらしいしなぁ」
「コネと金が足りないということですか……」
「まぁ組織外の霊能者向けに一般販売されてるアガシオンすら金積んで買えへんうちらにとっては、指咥えて見てるしかない代物やな」
ちらっと右手の指輪を見る茜さんと葵さん。
なんでも先日ガチャで当てたアガシオンは、普段はその指輪の中に収納されているのだとか。
今私の手元にある【悪魔召喚プログラム入りガイア連合製スマートフォン】こと通称【COMP】はアガシオンを引き当てたお礼にと茜さんと葵さんが伝手を辿って取り寄せてくれたものだ。
結構良いお値段ではあるが、精々が高性能スマホ+α程度のお値段でアガシオン2体とは比べるまでもないとか。
しかもガチャ産アガシオン、一般販売されてるアガシオンより露骨に優秀なスキル持っていたりするらしく、本当に望外の大当たりだったらしい。
私はそれを聞いて、ガイア連合の運営がガチャを回したくなる人間の心理についてよく解ってる事だけは理解したのだ。
さすが系列の会社がソシャゲを複数大ヒットさせてるだけのことはある。
「ではこのCOMPは宝の持ち腐れでは……? 肝心の悪魔召喚プログラムは私には起動できないし、今悪魔との契約をしたら干からびて死んじゃうんですよね?」
起動はさせられないけど起動してある悪魔召喚プログラムのガチャを回せたの、ひょっとして開発の想定外の使い方では……?
バグとして報告しなくていいんでしょうか……?
いや、ひょっとしてあれは開発がわざと……!?
「そうやねん。ってわけでゆかりさん、覚醒修行してみぃへんか?」
ずいっと身を乗り出す茜さん。
スウェーで距離を保つ私。
「まぁこの話の流れでお断りする選択肢は無い気がするんですが、一応お聞きします。修行とはどのような?」
「覚醒に適した霊地で座禅したり、体を鍛えたり、滝に打たれたり……」
「座学や武芸の練習もあるで~」
「おおっ、わりと想像する修行そのまんまなんですね。漫画にでてくるような」
「そやな。まんまそんな感じやで」
「うちらゆかりさんが過呼吸で倒れてる時に話しとったんやけどな? ゆかりさんきっと才能あるんちゃうかと思うねん。なんせ霊能者が呪術使って不正するのをブロックしてあるガイア連合産のガチャで確率の壁をぶち抜いた女やからな」
「それに大体なんか変な尖り方してる人って霊能者の才能あるイメージあるんや。まぁこれは一緒に修行しとった連中のせいで偏見も入ってるかもしれへんけど」
「あ~やっぱり解る人には解っちゃいます? まぁゆかりさんは世界が羨む才知と美貌を兼ね備えた女ですから? 何をやってもこなせてしまうというか……漫画の修行編みたいな特訓なんてちょちょいとクリアして霊能者デビューしちゃうんじゃないですかね? いやぁ自分の才能が憎いですね。ところでお二人共、何か言いたそうにしてますが、遠慮せず褒めてくれていいんですよ?」
「……うん! 修行ではうちらも全力で手伝どたるさかい、頑張ろな!」
「……そうだねお姉ちゃん! ゆかりさんならきっと乗り越えて覚醒できるよね!」
「そうですね~。ではとりあえず学校が休みの土日から始めるということでお願いできますか?」
「おっしゃまかしとき! うちらが修行しとった場所使わせてもらうんに話つけるから正式に決まったら改めて連絡するな?」
「わかりました。それでお願いします。いやぁ楽しみですね!」
はっはっはと3人で朗らかに笑い、その場はお開きとなる。
いやぁ、世界がヤバイのはニュースでもやってましたが、まさかここまでヤバイとは思ってなかった。
ここはいっちょ将来の生き残り見据えて、魔法少女ゆかりさん、始めちゃいますか!!
琴葉姉妹の話してる情報は伝聞・推定が沢山混じっていて、正しい情報源があるわけではありません。
地方の駆け出し霊能者としては知人から話を仕入れたり、DDS-NETなどを通して情報収集したりと頑張ってるほうという設定。
悪魔召喚プログラムは本編によると覚醒者しか起動できないらしい。
しかし画面が非覚醒者には見えないとか起動済みの操作ができないとは明記されなかったからね、ゆかりさんもガチャくらい回せるね、きっと。
アガシオンは転生者なら無理なく買える程度にはお高いらしく、特殊なスキルを持った悪魔は外伝に登場しているのでガチャ産は一般販売よりきっとスキル面で恵まれているとかあるだろうなと思った。ショタおじを信じろ。