【カオ転三次】ゆかりさん奮闘記   作:ぼてぼて

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書きたい内容はだいたい固まっていてもどう表現するか悩んだので初投稿です。
変に悩んで完成しないより、とりあえず投稿したほうがいいってね!

葵ちゃんの口調今まで間違えててすいません。
既存投稿分は今度直すので許せサスケ。
今話から修正済みのはずです。


ゆかりさん、霊地で修行する

茜さんと葵さんがかつて修行したという霊地。

案内がなければ結界で一般人が近寄れないようになっているという修行の場。

どんな野生の秘境かと思いきや、修行が行い易いようにきちんと砂利道や木造建築などが整備され、歴史を感じさせながらも人の手がしっかりと入った場所であった。

ただちょっと、明らかに『最近作られました』感丸出しの場違い極まりない、銭湯と自販機が並ぶ無人コンビニ(ガイア系列)とイートインが併設された小さなスパもどきには『オカルト世界もコンビニの便利さには勝てないのか』とがっくり来たものの。

実際にここで修行してみれば『この建物ができる前の人達は修行後どこでお風呂を? えっ、どうして笑顔で滝を指さすんです……?』という、人間そりゃあ便利さと温かいお風呂には勝てないよなぁという当たり前の事実を、毎回お世話になることで実感し。

そのイートインの野外席で、今日も修行後の一風呂を終えた私達は各自飲み物を片手に談笑していた。

 

 

「「「「お疲れー!」」」」

 

冷えたコーヒー牛乳を一気にあおる。

屋外の風と甘い飲み物が、風呂上がりの疲れた体に染み渡る。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙~。染みるぅ~」

 

「ゆかりさん、おっさん臭いで」

 

「まぁまぁお姉ちゃん。ゆかりさんも随分慣れてきたんだから」

 

「私と出会った頃は修行が終わると同時にぶっ倒れて、毎回死にかけのゴキブリみたいに痙攣してましたからね」

 

テーブルを囲むのは私と、茜さん、葵さん、そしてこの霊地で知り合った、琴葉姉妹の以前からの知り合い。

最近仲良く一緒に修行してる新メンバー、東北きりたんである。

 

「まぁ、そうですね。最初の頃に比べれば随分慣れました。いやぁ思えば随分無茶したもんです」

 

この霊地に出入りするようになって早数ヶ月。

特に今は夏休みで学校が休みなので、毎日のように修行で入り浸ってる。

夏休みの宿題? ああ、あいつは家に置いてきた。

勉強はしたが、ハッキリいってこの修業にはついていけない……。

 

「いや、宿題はやらなあかんやろ。後、ゆかりさんの修行は無茶とかそういうあれを超えてると思うで」

 

「後で写させては聞かないのでそのつもりで~。後、ゆかりさんは覚醒する前に死なないようにほんとに気をつけよう?」

 

「心の声を読まないでくださいよ。それにゆかりさんは魔法少女になって大活躍するまで死ぬ予定はないのでご心配なく……。しかしあれですね。無茶と言えば一番は初日の山登りでしょうか?」

 

「どんな話です? その頃はまだ私と会ってませんよね?」

 

「「あれかぁ……」」

 

「ふむ、ではよろしい、お話しましょう。あれはそう、私が初めてこの霊地に修行に来た日の事です……」

 

 

…………

………

……

 

 

『はい、それではゆかりさんの【覚醒修行RTA】、はじまるよ~』

 

『何を言うてんねん、ゆかりさんは』

 

『えっ、【私が本当の覚醒修行を教えてやる】のほうが良かったですか?』

 

『あら素敵!』

 

『葵!?』

 

『冗談はさておき、今日は初日なわけですがどのような修行を? 動きやすい服装ということでジャージと運動靴で来ましたけど』

 

『あ、うん、まぁ初日やしな。無茶して体壊してもあかんし、無難に山登りの初心者コースがええと思う』

 

『荷物を背負って決められたコースを登り降りする体力作りの訓練だよ。修行をするにはまず体力! ここに来た子は皆通る道だね!』

 

『ふむり。事前に説明のあった内容ですね。奇をてらっても仕方ありません。修行とは一見地味で辛いものと相場が決まっています。まずはおすすめの山登りからやってみます』

 

『ええ心がけや! ほんなら今日山登りに行く人らと一緒に行ってきたらええで。道に迷ったら危ないし、ペースメーカーの引率もおるからな』

 

『おや、お二人は付き合ってはいただけないので?』

 

『山登り初心者コースは私達だと今更だからね。私達は術式訓練に参加してくる予定だよ』

 

『なるほど。では山登りコースに向かう人達が集まる場所だけ教えて下さい。お互い修行が終わったら合流しましょうか』

 

『ええで~。ほな今日はそれでいこか』

 

『ええ、では後ほど』

 

 

…………

………

……

 

 

「普通では?」

 

「慌てない慌てない。ここまでは前置きです」

 

「なんでちょっと楽しそうやねん……」

 

「ゆかりさん本当に反省してる???」

 

「やだなぁ、もちろんですよ」

 

「ちょっと、内輪で盛り上がらないで続けてくださいよ」

 

「ほなそこからはうちが語ろか……」

 

 

…………

………

……

 

 

『ふぅー……。やっぱり術式の訓練は堪えるな。葵、進んどるか?』

 

『あ、うん。せっかく霊地に来たんだから、しっかり術の訓練はしときたいしね』

 

『せやなぁ……。ただ今日はそろそろゆかりさんも帰ってくるやろし、ここらで切り上げへんか? ……うん? なんかあっちが騒がしいな』

 

『ほんとだ。どうしたんだろう?』

 

ざわざわ……ざわざわ……

 

『すんません、なんかあったんですか?』

 

『ん? ああ、どうも登山訓練の上級コースで事故があったみたいだ。一人崖から落ちたらしい』

 

『え、本当ですか? 上級コースは危険だから皆万全の準備で挑むはずなのに……ねえ、お姉ちゃん』

 

『皆までいうなや葵。救助はされたんですか? うちら【ディア】使える使い魔連れとるんですが……』

 

『何、本当か? 二人共若いのに随分……。いや、さっき医務室に運び込まれた所だ。【ディア】持ちなら歓迎されるだろう』

 

『ちょっと行ってきますわ』

 

『ああ、同じ霊地で修行する修行者の誼で助けてやってくれ』

 

『ふふ、アガシオンの初陣だね!』

 

『せやな、まぁ人助けが初の実戦とか、ええことやと思うで』

 

アガシオンを使役するMAGの消費は重いが、人命には変えられない。

幸いここは霊地、しばらく休めば多少は回復するだろう。

 

『すいません、怪我人が運び込まれたって聞いたんですけど……って』

 

『【ディア】で良ければ使えますよ! ……って』

 

『『ゆ、ゆかりさあああああああああん!!』』

 

 

…………

………

……

 

 

「よく崖から落ちて無事でしたね。いやホント生きててよかった。コース間違えたんですか? 途中で『おかしいな?』とか気づきそうなものですが……」

 

「いやそれがな……」

 

「私達もそう思って、初心者コースの集合場所までしっかり案内しなかった事を謝ったんだけどね……」

 

「いやぁ、初心者コースの集合場所のちょうど真横で、上級コースの人たちが集まってまして」

 

「まさか自分から行ったんですか!? 何故!? いや、修行初日とか明らかに雰囲気が初心者ですし、周りの人に何か言われなかったんですか?」

 

「いや、『ゆかりさんならひょっとして初日から上級コースでもいけるのでは?』と思いまして。後、他の方は『こっちが上級コースですか? よろしくお願いします!』って元気に挨拶して自信満々な顔でニコニコしてたら、何か言いたそうな顔はしてましたけど誰も何も言いませんでしたね」

 

「日本人の悪癖が!? 『なんか初心者っぽいけど、違ったら馬鹿にしたみたいで失礼だしどうしよう。誰も何も言わないし……』みたいな感じに!?」

 

「うん、そうみたいやね……。救助してきてくれた上級コースの人らに、知り合いやって解った後凄い謝られたし……」

 

「『明らかに上級コースに挑むには実力が足りてないけど、本人が大丈夫です! って必死についてくるから無理矢理返すタイミングを見誤った』ってもの凄い後悔した顔で……」

 

「下手に初日で誰も顔見たことなかったんも原因みたいやね。別の霊地から来たんかもと思われたみたいで……。上級コースに途中まで食らいついていった根性だけは凄いけどなぁ」

 

「三途の川が見えましたよ。お二人のアガシオンが居なければ危なかった……」

 

「「いや、笑えないから」」

 

「本気で周りの迷惑になるので、実力足りてないのに馬鹿な事するのは辞めましょう???」

 

「いや、流石のゆかりさんも反省しました。それからはちゃんと初心者コースで修行してましたよ」

 

「当然の事を自慢げに言わんでもろて??? ……他はあれやな。当霊地の名物修行、【蛮死異雀符】」

 

「あの件はまだ許してませんよ?」

 

「あ、うん。あれはゆかりさんは怒っていい。大問題になったし。ただあの修行を一回はやるのはここの伝統だから、そこは仕方ないね。古くはあの訓練で一発で覚醒した人もいる由緒正しい修行法なんだよ?」

 

「ああ……私もやられました。ですが、大問題? あれはここに居る人なら誰しも通る道では?」

 

「いや、それがな……」

 

 

…………

………

……

 

 

『どや! ええ眺めやろゆかりさん!』

 

『ええ、最近は山の雰囲気を楽しむ余裕も多少は出てきまして、空気も美味しいですし。こう、清浄な雰囲気というのでしょうか? そういうのも悪くないと思います。ところでこの場所、随分高いところにありますね?』

 

『ここまで登ってくるのもいい修行になったでしょ? ここから下の川まで二百メートル以上あるんだよ!』

 

『なるほど、下に見える川が修行場の滝に繋がってるんでしたっけ。日本の川にしては割と深いそうですね。ところで、【今日は特別な修行をするから】と言われてここに案内されましたが、何故私の目の前の部分だけ手すりが無いんでしょう。どうみても最初からこの部分だけ設置されてませんよね』

 

『今日の修行はこの霊地で修行する人らが全員一度は必ず経験する修行でな? うちらも経験したし、ゆかりさんもそろそろかなと思って予約しといたんや』

 

『そうですか、わざわざありがとうございます。お二人共今日は朝から随分機嫌が良さそうでしたものね。ところで今日の修行に必要だからと着せられたこのライフジャケットのような服なんですが、何のために着たのか説明していただいても?』

 

『あっ、ちゃんとこれを背中につけないとね。…………よし!』

 

『よしじゃないが? ……いや、フックだけ背中につけられも。紐すらついてないじゃないですか、まさか紐なしバンジーを飛べと?』

 

『『…………』』

 

『いやいやいやいやいや。笑顔でこっち見られても…………飛びませんよ?』

 

『大丈夫だよゆかりさん、安心して!』

 

『微塵も安心できないが? ……一応お聞きましょう。何を安心せよと?』

 

『ここの修行は飛ぶんとちゃうで! …………落ちるんや』

 

『は?』

 

瞬間、私の足元の床がガコンと音を立てて消失する。

 

『はっ? はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?? あああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

 

『これぞ、当霊地名物修行【蛮死異雀符】! 安心してええでゆかりさん。ゆかりさんには見えてへんやろうけど、うちら覚醒者には見えてる霊糸がちゃ~んとさっきつないだフックと繋がっとるからな!』

 

『まぁ、落とされる人には見えないせいで一番下に落ちるまで気づけ無いから、本気で死を覚悟するんだけどね! 私達もやられたし! 伝統だから! 伝統だから!』

 

『おお~、ええ落ちっぷりや。……そろそろ一番下やな。葵~、巻き上げ準備~』

 

『はぁい。動きが静止したら教えてねお姉ちゃん』

 

『まかしとき~、ちゃんと見とるで。おっ、一回目跳ねたな。ここでパニクるんよなぁ~懐かし~』

 

『結構ぎりぎりまで落ちるからねー。ゆかりさん気絶してない? 大丈夫?』

 

『顔まで見えんなぁ。まぁ【乙女の尊厳】漏らしとっても大丈夫なように替えの下着は用意してあるし。いや~しかしやる方は楽しいなこ……!?』

 

『どうしたのおねえちゃ……!?』

 

一度目のバウンドから再度落下し、二度目の最終落下点。

もう一度くらい軽くバウンドするはずだった私は、しかし背中側からのブチンという感触と共に……。

川へと落っこちた。

……何を見てヨシ!って言ったんですか?

 

『『…………』』

 

『…………あ、あかん! 施設整備は何しとんねん! 葵、下に連絡や! 救助、救助~!!』

 

『ゆ、ゆかりさああああああん!!!』

 

 

…………

………

……

 

 

「えっ、それ洒落になってないやつでは? 助かったんですか?」

 

「あの、きりたん? 目の前で私が生きてるのが見えませんか? まぁ三途の川の向こう側で死んだはずのお祖父ちゃんとお婆ちゃんが手を振ってましたけど」

 

「川を流されてるところを総出で救助してなんとかな……」

 

「【ディア】がなければ危なかった……。ちょっとただの事故では済まされないからね、上まで話が行って大問題になったよ」

 

「流石のゆかりさんもこの件に関しては激怒しましたよ。だまし討ち修行に加えて設備不良ですからね。私からは回避のしようがないですし」

 

「一回目の落下で霊糸が切れてたら死んでたしな……。二回目の緩い落下で切れたあたり限界やったぽいし」

 

「施設整備は何をしてるんですか。怠慢すぎませんか?」

 

「どうも定期的なチェックはしてたみたいやけど、最近終末も近くなってあちこちで随分修行者増えたやろ? そのせいで想定より負荷がかかってたみたいでなぁ……」

 

「なんとまぁ……。いや、しかしこれどういう決着を?」

 

「先方としては信用問題だし平謝りで、ゆかりさんの希望もあってガイアポイントで賠償になったよ」

 

「まぁ、施設整備の人に腹を切らせても私何一つ得をしませんからね。ガイアポイントなら日常生活でも使えるし、終末の備えにもなりますから。後流石に現金大量に持って家に帰れませんし」

 

「まぁ、ガイアポイントは実質貨幣みたいなところありますし……金銭で解決したと思えば納得なんですかね……? しかしゆかりさん、二度も死にかけてよく修行続けてますね。いくら修行が時に命を落とす危険なものもあるとは言え、実際に死にかける人なんて滅多にいませんよ?」

 

「二度ちゃうで」

 

「えっ」

 

「三度なんだよなぁ……」

 

「えっ」

 

「滝行やってる時に、滝の上からカピバラが降ってきて頭を打ちまして……」

 

「カピバラっ!? 野生のカピバラがこの霊地に!? いや、無事だったんですか、それ!?」

 

「いえ、ですから、私目の前で生きてますよね??? あっ、カピバラは【ディア】で治療された後動物園に引き取られました。私も【ディア】で治療されてまぁ無事です。修行を通じて体が丈夫になってて助かりました。ちなみにこの時は賽の河原っぽい場所に出まして、鬼っぽい見た目の人にこいつまた来たよみたな顔されました」

 

「あの、それ幻覚とかではなく本気で三途の川渡りかけてませんか? 三度も霊地で臨死体験を? ……あの、実はゆかりさんってもう覚醒者だったりします?」

 

「いえ、それがなかなか覚醒に至らず……。こう、当初に比べてぐんっと体力とか霊感はついたと思うんですが、最後の一歩が踏み出せない感じがするんですよね」

 

「いわゆる半覚醒の状態なんかもしれへんなと思っとる。ちょっと三回も死にかけるんはうちらとしても予想外やったけど、修行の成果は出てるとは思うんよ」

 

「今なら山登り上級コースでも耐えられそうだもんね」

 

「嬉しいような、経緯を思うと嬉しくないような……。まぁ元々終末までに覚醒できればというつもりで修行してますから、日本的にはまだ小康状態がしばらく続きそうということですし、ここらで改めてじっくり腰を据えて修行に取り組みたいですね」

 

「ほんまそないして……このペースで死にかけられたらうちらの心臓のほうが持たへん……」

 

「ゆかりさん気付いてる? 最近ゆかりさんってここの有名人で、裏で【不死身の女】って呼ばれてるんだよ?」

 

「むっ、最近時々感じる視線は、三度死線を乗り越えた私に対する尊敬の念でしたか? ふふっ、皆遠慮せずに話しかけてくれてもいいのに」

 

「いや短期間に三回も死にかけては何事もなかったように修行してるキ◯ガイを見る目やで、あれ」

 

「さもあらん……ちょっとゆかりさんと一緒に修行するのやめようかな……巻き込まれたくないんですが……」

 

「そんな……。逃さん……お前だけは……」

 

「なんでですか!? 私に一体なんの恨みが!?」

 

「旅は道連れ、世は情け。一人で死出の旅には旅立ちませんよ?」

 

「私を道連れにする気満々すぎる!?」

 

「ゆかりさんが言うと洒落にならん。きりたん虐めるんはやめーや」

 

「はい、この話辞め辞め! きりたん、何か話題変えて話題!」

 

「えっ、そうですねぇ……あ、そうだ。ゆかりさん、ソシャゲやってるって言ってたじゃないですか。同じゲームを私もやってるんですけど……水着イベントのキャラ、引けました?」

 

「もちろんです。天井叩けば実質配布なんですよ」

 

「えっ、天井……? あの、ゆかりさんってお金持ちなんですか?」

 

「いえ、賠償で頂いたガイアポイントで課金を……」

 

「無駄遣いがすぎる!?」

 

「ていうかまた天井に頭打ったんだ……」

 

「相変わらず徳を貯める女やな……」

 

んん! ときりたんが話の流れを改める。

 

「えーっと、ゆかりさんは他人のガチャを引くのが得意だと聞いたので……」

 

スッと差し出されたスマホにはガチャ画面。

ふむ、石の数は丁度10連分ですか。

 

「爆死しまして、ログボ貯めた最後のチャンスなんですよ。よかったら回してほしいな~って」

 

「なるほど? よろしい。ではリアルに三度死にかけたこの霊地で、見事爆死してみせようじゃありませんか」

 

「またフラグ建っとるで? ちょうど良く徳も貯めてきたみたいやし」

 

「いやいや、よしんば徳を貯めたとしても臨死体験で使い果たしたでしょう。いい加減ここらで『他人のガチャだけは得意な女』という不名誉な称号を返上しておきませんと」

 

「どうせ死ぬなら命じゃなくてガチャにしておいてほしい。というわけで、爆死を見届けたら今日は帰ろっか」

 

「では私は死出の旅の道連れの代わりにガチャの爆死を差し出したということで。どうぞどうぞ、そういうことなら盛大に外してください」

 

「言ったな? 見てろよこの野郎。ポチッとな」

 

というわけで、四人でスマホの小さな画面を覗き込んだ。

 

 

…………

………

……

 

 

「幽霊かな。いや、違うな。幽霊はもっと、バァッて動くもんな……」

 

ああ、時が見える……。

 

「あかん、ゆかりさんが放心しとる」

 

「まさかのSSR三枚抜きよ……」

 

「しかもすり抜け無し、かぶり無し、新規実装水着全部抜いたとか……」

 

「自分は天井に頭をぶつけたのに……哀れな……」

 

「大丈夫? 【ディア】する?」

 

「なんだろう、ゆかりさんの運が本当にわからなくなってきました。一度ガイア連合に依頼してお祓いしてもらったほうがいいのでは……?」

 

「霊能者目指しとんのに、自分がお祓いしてもらうんかーい」

 

くそっ、人のガチャ運を肴に楽しそうにしやがって……。

ああ、茜さんと葵さんの肩の上に、小さくて可愛いゆるキャラみたいなぬいぐるみの幻覚まで見える……。

 

『なになに?』

 

『ワッ……!』

 

「ん? どないしたん?」

 

「あれ、おーい。ゆかりさーん」

 

といって葵さんが人差し指を立てると、ゆるキャラが示す方向へぷかぷかと動いていく。

ハイライトの消えた目線でそれを追う私……。

 

「どうしたんですか、三人共。ガチャは終わりましたし今日は帰りましょうよ」

 

いそいそと帰る準備をするきりたん。

ぷかぷかと動き回るゆるキャラ。

死んだ目で追いかける私。

 

「……ゆかりさん、ひょっとしてアガシオンが見えてへん?」

 

「ま、まさか。今のショックで覚醒した……!?」

 

「ちょっと待ってください。今は色々脱力してて面白い反応する余裕ないです。ほんと待って……」

 

「きりたーん! 帰るのストップ! ゆかりさんのチェックが先やー!!」

 

 

…………

………

……

 

 

「嘘だといってよバーニィー……」

 

まぁ、あのハイ。

無事? 覚醒してました。

スキルとかいうのも、はい。

 

「時が見えたと思ったらスキルが生えていた。何を言ってるかわからないかも知れないが、私も何を言ってるかわからない」

 

「微妙に改変してきたな……」

 

「ねぇ、そんな事よりどんなスキル覚えたのか興味あります!」

 

「ガチャを引いて覚醒とは……うごごごご」

 

三者三様の反応を示す中、『あれ、でも覚醒の修行に来てたんだから、賠償金のごく一部で覚醒出来たと思えば実質儲けでは?』という考えに思い至り、ようやく私は復活した。

 

「ふむ……では今日の帰宅前にスキルだけお披露目といきましょうか。もう暗いですし、これで本当に帰るということで」

 

「「「いえーい!」」」

 

パチパチパチと手を叩く三人と二匹(?)。

私は立ち上がって皆との距離を少し開け、息を整える。

 

「では行きます……はぁっ!!」

 

固唾を呑んで見守る三人。

しかし【何も起きなかった】。

 

「…………何か起きた?」

 

「いや、私には見えなかったけど……」

 

「あ、よかった。私だけ覚醒してないから見えなかったとかじゃないんですね」

 

「あれぇ~? おかしいですね……」

 

魔力? 霊力? がごっそり減る感じはあったんですが……。

 

「緊張して失敗したんちゃう? ほら、ゆかりさん、こういうのは技名叫ぶのが作法やで!」

 

「あ~、わかるわかる。自分の中のイメージを形にする感じで!」

 

「あっ、失敗だったんですか? ではもう一度行きましょう!」

 

「ふむり。そういうことなら……」

 

もう一回位ならいけるか?

 

「改めまして、行きますよ…………【カ ム カ ム ミ ラ ク ル】!!」

 

【DOWN!】

 

瞬間、全員が頭からずっこけた。

 

 

…………

………

……

 

 

結局、茜さんと葵さんも聞いたこともないスキルだということで、検証は後日にということに。

この日は全員が痛む後頭部を抑えつつ言葉少なに帰路についたのであった。

 

おかしい、こう、修行が成功した後ってパーッと祝うもののはずでは。

釈然とせぬ思いを抱えたまま、私は霊地を後にしたのであった……。




臨死体験でむしろ徳を積む女、結月ゆかり

P4Gより
【カムカムミラクル】:敵味方に様々な効果を及ぼす

※カムカムミラクルの効果
・味方全体or敵味方全体or敵全体のHPとSPを全回復する
・味方全体or敵味方全体or敵全体をダウン状態にする
・敵味方全体or敵全体を戦闘不能以外の状態異常にする
・何も起きない

修行編を長々描写してもあれなので一話でまとめたかった。
後悔はしていない。
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