【カオ転三次】ゆかりさん奮闘記   作:ぼてぼて

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新年なので初投稿です
年末年始なんだかんだやることあって投稿できなかったけど、許せサスケ
書きたい事はあるけど、書きたいように書くととっちらかるのをどうにかしたい


ゆかりさん、霊能者として働く

ずんだカフェで霊能者として登録して以来、私は琴葉姉妹の二人と定期的に依頼を受け本格的に霊能者業をスタートした。

今の所終末に備えるという目的はブレては居ないので、直近の目標は一人でもやっていけるよう仲魔を得ることだ。

そのために確実な方法はデビオク機能の開放であり、その為には連続ログイン、レベルアップ、クエスト達成などによるハンターランクの上昇が必要なわけで、霊能者業はその中でレベルアップの手段と言ったところか。

一応霊能者業の最中に契約できる野良悪魔との遭遇もちょっと期待している。

 

そんな話を、何度目かになる依頼結果の報告に三人で訪れた閉店後のずんだカフェで、特別に用意してもらったずんだ餅をお茶請けにきりたんと話していた。

 

「なるほど、ゆかりさん達は順調なようで何よりです。もう霊地での修行は完全に卒業ですか?」

 

「う~ん、今のところ除霊術や結界術なんかは茜さんや葵さん任せなんですよね。私もこう魔法少女的に興味あるんですが、そもそものオカルト知識が数ヶ月の修行中の座学だけでは流石に全く足りず。その辺は最近本当に基礎から履修中です」

 

「まずは貸した古事記と日本書紀を読破してもらうで。実技の方は、霊障が見える、触れるんやからうちらの手伝いをやって覚えていけばええかなって」

 

「とりあえずゆかりさんは基礎的な事を覚えよう! って言っても私達も駆け出しで大した事はできないけど!」

 

「なるほど、本当に業界素人ですもんね、ゆかりさん。霊障に遭って覚醒して誰かに拾われたとか、元々そういう家の出とかじゃなく、友人に誘われてこの業界に入ってくる人なんてかなり珍しいのでは? 覚醒できる保証もないですし」

 

「まぁ、政治家とかお金持ちとか、社会の上のほうの人は見えんでも悪魔の存在は知っとるらしいけどな」

 

「一般人はきっかけがないとねー」

 

「まぁ、そうでしょうね。私もネットでオカルトが盛り上がってるのは、最近の世情のせいだと思ってむしろ悪ノリしてたくらいですし。ただのネットミームやトレンドでなく本当に悪魔が海外で暴れまくってるとか、想像もしてませんでしたよ」

 

「国内でも暴れまくってますよ。地方じゃあちこちで悪魔被害が出続けてるんですから。おかげでちょっとした依頼は、駆け出しの皆さんにも回ってくるレベルで人手不足です」

 

と、一息入れて皆でずんだ餅をぱくり。

 

「それで、皆さんどんな依頼を今まで受けて来られたんです? ちょっと聞かせてくださいよ」

 

「ほう、お聞きになりますか……。美少女退魔師ゆかりさんの活躍の日々を……」

 

「う~ん、この隙あらば自分語り。ていうか、前から思ててんけど、自分で美少女っていうの恥ずかしない? いや、確かにゆかりさんの顔立ちは美人やとは思うねんで?」

 

「お姉ちゃん、顔の話は触れちゃ駄目! どうせ皆自分の顔が一番可愛いって思ってるんだから!」

 

「そうだよ」

 

「当たり前だよなぁ? はい、この話題は早くも終了ですね、辞め辞め。うちの店で戦争が起きそうな話題は謹んでください」

 

「すまんて。ていうか葵? うちら双子で同じ顔しとるんやけど……」

 

「では話題を変えまして、駆け出し美少女退魔チームの活躍の日々、お願いします」

 

「それでは僭越ながら私からお話しましょう。あれはそう、最初の依頼の事です……」

 

 

…………

………

……

 

 

『人類の三大欲求にも数えられる悪魔討伐欲、貴方もオカルトパワーを使ってデビルバスターデビューしたい。そうですよね?』

 

『うちらはもうデビューしとるけどな』

 

『ゆかりさんのデビュー戦だね~。ご安全に!』

 

『というわけで、本日の依頼をご紹介していきましょう。それでは解説の茜さん?』

 

『はいはーい、解説の琴葉茜です。今回の依頼はオーソドックスな除霊依頼やね。とある女子校で生徒が急に体調不良者が続出しとるそうです。不気味に思った学校側が近所のお寺さんに相談したところ霊障であることが発覚。手に負えずに霊能者に依頼が回されてきたって経緯らしい』

 

『ふむ、女子校。うら若き乙女の私達なら無理なく侵入できそうですね。他校の生徒なのがばれると面倒なので、現地の制服に着替えて行きたいところですが』

 

『こちら実況の琴葉葵です。そう言うだろうと思って、こちらに人数分の制服をお借りしておきました。今日はこれに着替えて現地へ行こうね~』

 

『準備がいいですね。他校生のコスプレいいぞ~これ。……あの、ところで女子校でオカルトって言われると、【水子】とか【虐めを苦に】とかがぱっと浮かんでくるんですけど、これ結構闇深案件の可能性……』

 

『あ、うん……ちょっと気合を入れていこか。悪魔案件に限らず、大抵のオカルト事件はR18G耐性必須や。今回は今んとこそこまで行ってないみたいやけどな』

 

『大丈夫だよゆかりさん。そのうちバラバラ殺人事件の現場写真見ながら焼き肉だって食べられるようになるから』

 

『(そもそもバラバラ殺人事件の現場写真を見たく)ないです。やはり後ろ暗い事情がオカルトには付いて回る物、悪魔も怖いんですが、いつだって一番怖いのは人間なんですね』

 

『女は度胸! なんでもやってみるもんや! 今のゆかりさんなら、その辺のしょっぱい幽霊ならワンパン除霊も夢ちゃうで!』

 

『ふむり。ゆかりさんの秘められていた才能についに脚光が当たる日が来たということですね。では、アイテムも持ったし、着替えを済ませて依頼のあった女子校へゆくぞー!』

 

『『おー!』』

 

 

…………

………

……

 

 

『はい、こちら無事目標の女子校への潜入に成功しました。本日は日曜日。また、体調不良者が多いという理由で部活動も休みとなっており、生徒は学校に来ないように言い渡されているそうです。もちろん除霊のお仕事が行われる為、生徒を近づかせない理由作りです。いやぁありがたいですね。では、早速除霊対象の索敵に入りたいと思います。索敵担当の茜さん?』

 

『は~い、索敵担当の琴葉茜です。本来ならここは学校内に結界を張った簡易拠点を構築、索敵術式を使って悪霊を探し、対象の除霊に入るんですね~。で・す・が~、今のうちらにはこれがあります! じゃじゃ~ん、ガイア連合製アガシオーン!』

 

『わー、ぱちぱちぱち……。これは、アガシオンが索敵してくれるということでしょうか?』

 

『アガシオンは優秀ですので、周囲の【探知】が可能なんですね。探知範囲にはもちろん限界がありますが、アガシオンを連れて校内を歩き回れば霊障の原因となっているスポットを特定できるはずです。なお、アガシオンは自律行動も可能なので術者からある程度離れて行動も可能なんですね~。索敵はうちのアガシオンを先行させて、術者の安全を確保した状態で行います』

 

『こちら周辺警戒担当の琴葉葵です。なお、私達のガードには私のアガシオンを手元に残します。私のアガシオンも【探知】持ちなので、万が一悪霊に襲われた際の奇襲対策兼盾として活用する予定です』

 

『なるほど、"見てこいカルロ"作戦ですね……。アガシオン、便利すぎませんか? これ一体でも今の私達三人がかりで負けますよね?』

 

『アガシオンに置いていかれへんように歩きながら話そか。【悪魔召喚プログラム】で悪魔と契約できれば、ゆかりさんも似たようなことできるようになるで~』

 

『周囲への警戒も怠らずにね。お金のある組織とかガイア連合に参加してる地方霊能組織だと、最近はアガシオン持ってたり、ガイア連合製の装備品を持ってたり、【悪魔召喚プログラム】で仲魔を連れてたり、下手すれば全部ってのがもう普通みたいなんだよね……』

 

『了解です。いつか私達も金満装備でがっぽり稼ぎたいですね。初期投資が凄まじそうですが……。あの、ところで私達みたいな金もコネもない一般霊能者は……?』

 

『お察しの通り、体力と霊力だけが資本の味噌っかすやで』

 

『ずんだカフェで聞いたんだけど、装備とか整ってる霊能者とは受けられる依頼のレベルが違いすぎるっぽいんだよね。仲魔や装備が整ってる優秀な霊能者の中には地方に沸いた異界の攻略に参加してる人とか居るらしいよ? 異界だとマッカやMAGが稼げてドロップアイテムはガイア連合が買取してくれるし、月の稼ぎも凄いんだって』

 

『霊能者の世界にも深刻な格差の波が……! この依頼だって無事やり遂げれば一人五万円ですよ? ゆかりさん、日給五万とか霊能者すげーって感動してたのに!』

 

『いや、霊能者の世界こそ生まれついての霊的素質が全てって感じのマジモンの格差社会やけどな。ちなみに、この依頼の報酬はしょっぱいで』

 

『ゆかりさんは結構あっさり覚醒したり、不思議な異能があったり、才能あるんじゃないかな? ちなみに、そんなしょっぱい依頼なので駆け出しの私達の実績積みに回してもらえました! 女子校って場所柄のせいもあります』

 

『ふふふ、まぁそれほどでもあるかもしれません、ゆかりさんですから。しかし私、何か異能とかありましたっけ? スキルのお話で? というか、これで報酬しょっぱいんですか……』

 

『何言うてんねん、徳を積んで他人のガチャを当てるやんか』

 

『ガチャの確率の偏りを異能扱いするのはヤメロ。しかし、お二人はアガシオンも居るわけですし、その、異界? を紹介してもらってがっぽり稼ぎに行かないんですか? いえ、新人なので付き合ってもらって助かるんですが』

 

『死にます』

 

『えっ』

 

『ゆかりさん……異界を舐めちゃ駄目だよ? 異界っていうのは要するに地上に出現した小さな魔界なんだから……。中には悪魔がわんさか居て、人間を見たら餌だと思って襲いかかってくるんだよ?』

 

『アガシオンがおったら、そらきっとある程度は戦えるで? 最下級の悪魔相手なら多少は無双も出来るかも知らん。でも、アガシオンの手がおっつかん数出てきたり万が一アガシオンがやられたらもうアウトや』

 

『結局私達が駆け出し霊能者なのは変わりないからね~。最下級悪魔だろうとタイマンとか無理です。けど終末に備えるっていうなら、どこかで異界に挑んでレベルを上げる必要があるんだよ。強くなければ生き残れない!』

 

『異界を探すか、中に入ってもええ異界を教えてもらう所からになるけどな……。正直、上手いこと異界で仲魔が作れて、上手いこと数で押してレベル上げできる異界があるならそれに越したことはないんやけど……』

 

『ゆかりさんが地方霊能組織に所属する人だとして、そんな場所他人に教える?』

 

『独占しますねぇ……手に負えないなら外に救援を頼みますが……』

 

『それで地方を救済して回ったのがガイア連合です』

 

『そして今やガイア連合の供給するあれやこれやで地方霊能組織は自前である程度の異界を解決!』

 

『私達の出る幕ないじゃん? つまり他所じゃ手に負えない仕事をガイア連合が解決して、地元でも解決できる仕事を地方霊能組織が解決して、私達に回ってくるお仕事は……』

 

『地元密着の地方霊能組織ですら"割りに合わない、手が足りない、ろくに今まで付き合いもない"って外に回した依頼やね』

 

『なん……だと……』

 

『そらこういう依頼ばっかり受けてても、ゆかりさんの言う通り表の仕事に比べたら不自由なく生活できる程度には稼げるんちゃうか? けど、終末君が【もうじき着くわw】って連絡入れてきてる状況やん?』

 

『異界に、異界に挑むのです。異界でレベル上げをしないとピンチなのです。外国って要するに今、国まるごと異界になってるようなものらしいからね。外人ニキ達が命がけで集めてくれた情報を信じろ』

 

『まぁ、外人ニキ達と掲示板で接してると本当にレベル上げないとやばいって危機感は感じます。むしろ安全な事と霊能組織の秘密主義が働いてて国内の情報のほうが集まりにくい点には首をかしげますが……。ところで話がループしてますよ。異界の場所はわからないし、異界に挑むのは危険だったんじゃないんですか?』

 

『これでもガイア連合が外部に知識公開してくれたおかげで、以前に比べたら霊能者の基礎知識レベルで雲泥の差らしいんやけどね。まぁ異界に関しては、そこで出てくるんがずんだカフェと【デビオク】や』

 

『依頼所の人と仲良くして新しい異界の情報が入ったらお金を払ってでも教えてもらおう! 【デビオク】があれば異界で危険な野良悪魔と交渉せずに仲魔が!』

 

『あー、なるほど。だから依頼所でしょっぱい依頼を回されても黙って働き、裏でハンターランク上げを頑張ると。【デビオク】で仲魔を増やして、私達三人で一緒に行けば異界でも手数で押せる?』

 

『それを期待してるんやで』

 

『ぶっちゃけアガシオンは維持するMAGが重たいけど、指輪にしまってる間はMAGをほとんど消費しない上に【悪魔召喚プログラム】の召喚枠とは別で使役できるので本当にありがたいのです』

 

『しかも二体とも貴重な回復魔法【ディア】持ち! ちなみに、うちのアガシオンは他に【突撃】と【アギ】を、葵のアガシオンは【突撃】と【ブフ】を覚えてるで。そんで後は【探知】や【念動力(弱)】みたいな汎用スキルと二属性耐性の二属性弱点持ちやな』

 

『今明かされるアガシオンのスキルの数々。警戒出来て物理攻撃・魔法攻撃・回復魔法が使えるつよつよ使い魔ですか。くっそ、私も欲しいぞアガシオン』

 

『ゆかりさんは、素直にお金溜めてどこかで買おう……?』

 

『どうして憐れむような目をした! 言え!』

 

『今まで打った天井の数を数えたことはあるか?』

 

『今まで食ったパンの枚数よりは少ないですよ』

 

『何の自慢にもなってないからね? その分お礼と言いますか、こうしてパーティー組んでやっていこうという話になってるわけで、そうしたらゆかりさんにも恩恵があるからね』

 

『正直助かりますね。ゆかりさん、何も知らずに【悪魔召喚プログラム】手に入れてたら覚醒したてで異界探して突っ込んでたと思います』

 

『ハンターランクも順調に上がってるし、クエストもこなして頑張ってデビオク開放しような』

 

『そして空いた時間で修行したり依頼をこなしてお金を稼いだりですね。がんばりましょう』

 

『……と、くっちゃべってる間にうちのアガシオンが見つけたで。どうも霊障の原因になってる場所は』

 

『場所は?』

 

『更衣室やな』

 

『『更衣室ぅ?』』

 

 

…………

………

……

 

 

というわけで、無事霊障の原因となっている場所を特定した私達は、問題の更衣室の前に陣取っていた。

 

『……中に悪魔が?』

 

『多分? アガシオンはここから気配がする言うてるし。ちなみに反応は一体だけやね』

 

『一般人に死人が出てないから、悪魔未満の悪霊もどきだと思うけど、注意してね』

 

『了解』

 

『……でてけぇへんな。うちらに気付いとらんのか? しゃーない、踏み込むで』

 

『更衣室、狭い閉所ですが大丈夫ですか?』

 

『アガシオンのサイズなら二体並んでも行けるはず』

 

『万が一アガシオンが抑えきれんようなら盾にしてダッシュで逃げるから、指示は聞き逃さんといてな』

 

『わかってます。取り敢えずお二人は私の後ろに。一番力があって足が早いのゆかりさんみたいなんで』

 

『ゆかりさんは力速型みたいやもんなぁ。うちら二人共魔速型やから……』

 

『危険な所で悪いんだけど、中衛はお願いね。前衛はアガシオンがやってくれるから』

 

『打ち合わせ通りですね。では開けますよ』

 

ガチャリと私がドアを開け放つと、間髪入れずにアガシオンが中に飛び込む。

刺股を持って真剣な顔で戦いに臨むアガシオンはファンシーな見た目のせいで滑稽に見えるが、これがとても頼りになる使い魔なのだから霊能者の世界とは不思議なものだ。

追いかけて中に踏み込み私はこう言った。

 

『霊能者です! 女子高生を狙う悪霊め! 神妙にお縄に付け!』

 

『ゆかりさーん! お縄ちゃう、除霊、除霊!』

 

『御用改である!』

 

『葵!?』

 

初仕事なんでテンパったんです。ほんとだよ?

そして更衣室の奥には、二体のアガシオンに刺股を突きつけられて震える幽霊が存在した。

 

『……これですか? 倒さないんですか?』

 

『……あわてんでもええ。このレベルの霊なら問題ないで。というか、アガシオンがなんか言うとるな。……えっ、この幽霊がなんか言ってる? ちょっと待って、【悪魔翻訳プログラム】出すわ』

 

以下、この幽霊から聞き出した(なんと本当に会話ができた)話をまとめると……。

 

『ふむ、つまりあなたは不慮の事故で亡くなった男子学生の幽霊で、ここにはお腹が減って気がついたら住み着いていたと……。ご飯を食べたいけれども今までのような食事ができなくて、お腹が減りすぎてたまに意識を失うことがある』

 

『で、気がついたら周りで学生が倒れとるんやな? MAGが欠乏して存在が消える前に本能で人間を襲って捕食しとるな。元人間の幽霊やから、途中で正気を取り戻してまだMAGを吸い尽くして殺すところまで行ってへんけど、このままじゃいずれ人を食い殺して本物の悪霊になるで』

 

『事故で幽霊になっちゃったのは可愛そうだけど……素直に成仏しよう? 下手に現世で罪を重ねると、閻魔様の裁きが怖いことになるよ?』

 

『力ずくで除霊する準備を中心にしてきましたが、穏便に成仏してもらう方法も用意してありますよ。どうです? ここは一つ、幽霊とは言え人間らしくいられる内に死後の世界へ行くというのは……』

 

悪魔らしい悪魔でなく、元人間の幽霊、それも事故被害者ということで自然私達の対応も同情的なものとなる。

人に被害が出ているということで戦闘を覚悟して準備してきていたが、地縛霊を鎮める為の用意なんかも持ってきてあるのだ。

送り出す儀式は琴葉姉妹にお任せすることになるが、彼も女子高生巫女さんに見送ってもらえれば本望だろう……。

と思いきや、幽霊が成仏を渋っている。

 

『何か未練が? ……ああ、ご家族やご友人への伝言くらいでしたら承りますよ。どの程度信じていただけるかわかりませんが……』

 

水を向けると、しばしじっと考える素振り。

これが最後になるのだからと、私達もゆっくり待つ。

ちなみに、仲魔に勧誘するのは諦めた。

流石に事故の被害者を死後現世に無理矢理留めてこき使うのは憚られるし、レベルも0ということで戦力として全く期待できないらしい。

やはり仲魔はデビオク待ちだろう。

 

しばらくすると、幽霊君は意を決したように何かを話し始めた。

茜さんが【悪魔翻訳プログラム】を見て真顔で固まっている……?

よほどのことなのだろうか。

そう思って葵さんと二人で端末を覗き込む。

 

【……せめて一回くらい 女 の 子 の お っ ぱ い 揉 み た か っ た !!】

 

全員で真顔になる。

童貞か? いや、童貞だな。

三人で心底呆れ果てた目で見つめると、恥ずかしいのか震える幽霊がそこにいた。

 

『……まぁ、更衣室での着替えなんてブラ取りませんよね。つけ忘れでもしてきてない限り』

 

『ていうか君、女子校の更衣室に居座ってるんってひょっとしてそういう……?』

 

『男の人っていつもそうですね…! 私たちのことなんだと思ってるんですか!?』

 

葵さんのネタが通じたのか一瞬顔を上げるが、私達の真顔を見てすぐに顔を伏せる。

 

『……茜さん、葵さん、ちょっとこちらへ』

 

というわけで相談タイム。

あ、君、逃げ出さないように。

お二人のアガシオンは今も君を狙ってますよ。

 

『……んん! まぁ、あれです。叶えてあげるかどうかって話なんですが』

 

『いや、普通に嫌やけど。ていうかそこまで体張る必要、ある?』

 

『でもお姉ちゃん。あの幽霊、未練から幽霊になったタイプじゃない?』

 

『そんなにおっぱい触りたかったのか……触るまであの世に行けないと幽霊になるくらい……』

 

『内容が内容だけに感心はできへんねんけど、正直見上げた、いや、見下げ果てたスケベ根性やな』

 

『まぁね、でもほら、彼があんな事言い出した事にちょっーと私達にもね、責任があるかもしれないなとゆかりさんは思うわけですよ』

 

『……その心は?』

 

『いや、だって考えてみてくださいよ。女子校なら女の子はいっぱいとは言えレベルは玉石混交。しかも見えない聞こえないで相手してもらえない。そこに自分を除霊にやってきた美少女退魔師三人組ですよ。うち二人は現役の女子高生巫女さんですよ? お話してコミュニケーションも取れる! これが最後と思えばカッコつけずカミングアウトした勇気は認めてあげてもいいかなって』

 

『……まぁうちらが美人やから? 最後に未練無く逝けそうで言い出したっていうんなら……』

 

『……未練ある? って私達が水を向けたのもあるよねぇ』

 

『正直幽霊で全体がぼやーっとしてて顔とかわからないから、生理的に無理って感じもしないんですよね……。いや、幽霊って意味では普通に腰が引けるんですが』

 

喧々諤々と話をし、まとまる。

未だに正座でうつむいたままの幽霊の前に腕を組んで立ち、神妙な顔で結論を告げる。

 

『えー、厳正にして公平な話し合いの結果、未練を叶えてあげようという話になりました』

 

がばっと顔を上げる幽霊。

いや、現金すぎる。

そういう所が死ぬまでに触らせてもらえる相手ができなかった原因だぞ。

 

『というわけでですね、誰か一人選んで良いので……』

 

という私の声にかぶせるように何事か言う幽霊。

茜さんを見る私達。

ハイライトの消えた目でスマホを見る茜さん。

スマホを覗き込む私達。

 

【ほんとですかやったー! あっ、Eカップ以上の巨乳で可愛い子が良いですw 紹介お願いしますw】

 

瞬間、体の奥底から力が湧き出る。

振り向きざま、腰を落とし回転を威力に変える。

左手の脇を締め、右手は肩と拳が直線になるように真っ直ぐに射抜く。

足の踏み込みと拳の衝突はほぼ同時、霊力の乗った一撃が完全に顔面を射抜いた。

 

『破ァッ!』

 

そして邪悪な霊は雲散霧消した。

アガシオンが一瞬ビクッとしたような気がするが、気の所為だろう。

 

私達は無言のままに残作業である現場のお祓いを終え、帰路に着いた。

 

 

…………

………

……

 

 

「以上が私の初仕事です」

 

「よくやった。褒めて使わす」

 

「ありがたき幸せ」

 

けっ! と四人でやさぐれる。

と、そこに話が一段落したのを察したのか、ずん子さんが厨房から現れる。

 

「あの~。食べ終えられたのでしたらお皿のほう片付けてしまってよろしいでしょうか?」

 

「ああ、ずん子さん。精算待ちとは言え、長居して申し訳ないです。ついついきりたんと話し込んでしまって」

 

「いえいえ、私達は修行こそしますが霊能者が務まる才はありませんから。良ければきりたんに色々聞かせてあげてください。これも経験ですので」

 

といってずん子さんがずんだ餅を食べ終えた皿を回収し、お茶のおかわりも出してくれる。

その間、私達四人の目線は自然、ずん子さんの胸元に……。

 

「あの……? 私がなにか?」

 

「いやいや、こっちの話やから」

 

「そうそう、ずん子さんはお気になさらず」

 

「はぁ……?」

 

ずん子さんが厨房に戻っていく。

話し込んで喉が乾いたので、気分を変える為にもお茶をすする。

 

「東北家の皆さんはあまり霊力は強くないんですか?」

 

「うちはそうですね。業界の人ではあっても専門の人ではないので。むかーしは縁のある霊能者の家でたまに生まれる霊力が低くて霊能者が務まらない人なんかを、お嫁さんとかお婿さんにもらったりしてたそうですよ。コネの大事な世界ですからね。なのでまぁ、霊能者として第一線でやっていこうって家ではないです。覚醒修行するのは、霊能者の皆さんとの縁繋ぎも含めてですね。それに悪魔が見えない仲介人から仕事、受けたいです?」

 

「なるほど、霊地に修行に行くのは覚醒の修行と家業の修行のダブルミーニングでしたか……」

 

「でも、イタコさんといいずん子さんといい、東北家は別の才能があるんちゃう?」

 

「主に胸部装甲に関する才能が……」

 

「言われてみれば……きりたんも将来有望なのでは……? 裏切ったか貴様」

 

「えっ、なんでガチトーン? いや、確かにその才能はあってほしいんですけどどうですかね……」

 

穏やかならぬ空気がテーブルに流れそうになったところで、今度はイタコさんが二階から現れた。

 

「皆さん、お待たせしました。こちらが報酬になりますの。ご確認くださいな」

 

「おっ、待ってました!」

 

「今回の依頼は大変だったもんね。無事報酬が貰えると感無量だよね~」

 

「今回はこちらとしても申し訳ない結果になってしまいましたわ。この補填はどこかで行わせていただきますわね?」

 

「おっ、本当ですか? ではありがたく期待しておきます」

 

いや、今回は本当に大変だったと三人で語り合う。

 

「そんなに大変だったんですか? 今回はどんな依頼だったんです?」

 

「いやぁ、全部話すと長くなるんですが……」

 

「最初は物探しの依頼だったんよ。大陸から日本に避難してきた霊能者が手違いで手放した品で、元々は魔術結社所有の本物やから一般人に間違って流れたら危ないんで、回収してくれって話でな」

 

「こっちのほうに手にした人が行ったのは解ってるから、居場所を探して教えてくれるだけでもいくらか報酬を出すって話で」

 

「ほーん。まぁ、ないことはないですね。そういう依頼も」

 

「まさか持ち主がその魔術結社から逃げ出したお嬢様だとは思いませんでしたね……魔術結社の幹部陣が疎開派と徹底抗戦派に分かれて内部抗争してたとは」

 

「えっ」

 

「徹底抗戦派のクーデターみたいなもんらしいからなぁ。で、疎開派が状況を収めるまでお嬢様は結社の切り札を抱えて逃亡と」

 

「中国戦線は地獄らしいからね……地元を守りたい人たちの意見も理解はできるなぁ。ただそれが女の子を脅かす理由にはならないけど」

 

「拳での語り合いで生まれる友情! ……からの、お嬢様から話聞いてる時に徹底抗戦派に襲われたんですよね……」

 

「ええっ?」

 

「アガシオンがなければ即死だったね……。というか大陸から来た人たちのレベルものすごく高くない?」

 

「あれでも中華戦線じゃざらにおるらしいで……やっぱり鍛えんとあかんわ」

 

「途中で助けに来てくれた疎開派の幹部のお兄さん、かっこよかったですよね」

 

「イケメンやったなぁ~」

 

「お嬢様のほうもね、あの様子は絶対恋だよ、恋!」

 

「ちょっと! 詳しく!」

 

「田舎だから騒ぎにならずに済みましたが、正直ハリウッドもかくやの逃亡劇でしたねぇ……。対人間なら、使い方次第で念動力があんなに活躍するとは」

 

「そこも、ほんと詳しく!」

 

「そこは頭の使いようってな? いうて地元や、正面からの殴り合いちゃうかったら簡単には負けへんで?」

 

「よっ! 名軍師!」

 

「よく知らない土地で地元民敵に回しちゃ駄目ですね……。工事現場でお嬢様引いてましたよあれ」

 

「何やったんですか!?」

 

「そんなに褒めても何にも出ぇへんで? まぁ今回は向こうも焦ってたからね。流石に肝が冷えたわ」

 

「結局、疎開派の重鎮が大勢連れてきて囲んで終わるまで逃げ回ってただけですからね……」

 

「でも、可愛そうだったね。徹底抗戦派の人も……。まさか助けたかった故郷に残してきた仲間からの最後の連絡があんな……」

 

「男の人が地に伏して、人目憚らず泣き崩れるのを見たんは初めてやな……最後はおとなしゅう言うこと聞いとったけど、後味の悪い仕事になってしもた。あんなん見せられたら恨まれへんやん……」

 

「待って……ねぇ待って……三人だけでしんみりしないでくださいよ……」

 

「最後にお嬢様にお礼言われたけど、うちら結局の所はなんもできへんかったからなぁ……」

 

「お嬢様も苦悩してたよね……。日本は安全で恵まれてるんだなって体感で理解したよ……」

 

「命がけで海を渡って密入国してきた人達でしたもんね。結局、世界がこんな風になったのも、あんな人達が出てしまったのも、メシア教過激派が悪いんでしょうね……」

 

「「間違いない」」

 

「おっと、報酬もいただいたことですし。遅くなりましたから今日はそろそろお暇しましょうか。遅くまで付き合わせてすみませんね、きりたん」

 

「ちょっと。本当にこの流れで帰るつもりですか? 私は夜ふかしして話を聞く準備はできてますよ」

 

「何言うてんねん。きりたん明日も修行やろ?」

 

「寝る子は育つっていうじゃない。夜ふかしは美容にも健康にも悪いよ?」

 

「まぁちょっとこの話をすると気分はヘビーになるので、聞きたいならまた日を改めてということで」

 

「絶対ですからね? 約束しましたからね!」

 

「わかりましたよもう……。ゆかりさんの大活躍がそんなに聞きたいんですか? まぁ聞きたいと言われれば吝かではないんですけどね? 仕方ないなぁ」

 

 

 

 

 

「セクハラ幽霊の話なんかより、格好いい霊能者の話が聞きたかったんですよ!!」

 

「「「すまんて」」」

 

そして、私達は各自報酬を手に帰路に着く。

あのお嬢様、どうやら迷惑をかけたと報酬に色をつけてくれたらしい。

自分たちも楽じゃないだろうに……。

今回の依頼を振り返ると、結局依頼としては騙された形になるので補填をしてもらうのは正しいのだろう。

しかし事の顛末を思うと彼らの気持ちも理解できて、なんだかちょっと申し訳ない気分になる。

 

しかし今回の依頼ではっきりしたことがある。

やはり終末を乗り越えるにはレベルを上げて強くなる必要がある。

日々の積み重ねの甲斐もあり、もうじき中位へと届くハンターランクを思いながら、初の異界デビュー目指して準備をする必要があると、私はそう思うのだった。




ゆかりさん達の大活躍回でしたね!
報酬も詫び賃込みでしっかり貰えましたよ!
ハンターランクも無事上昇中!
デビオク解禁も近い!

……え? セクハラ幽霊?
破ァッ! されました
破魔ではありません破ァッ!です
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