勝負は一瞬だった。
俺の槍とソウエイの刀が交差し、鍔ぜり合う体勢になった瞬間。
俺は刀を巻き込むように槍を投げ捨て―――――――――
ソウエイの不意をつき、渾身のボディブローをぶちこんだ。
「くっ!?」
触っちゃった♡なんて余韻に浸れるような状況ではない。
地面を削るように後退していったソウエイに追い打ちをかけるために、空中に舞っていた槍を掴んで特攻する。
地を這うように姿勢を低くし、身体を疾駆させるのにもっとも適した走りでソウエイに近づく。
その際も、俺の目はソウエイから離れていない。
彼が武器として扱う“糸”は僅かな指のモーションだけで敵を惨殺できるほどに凶悪なものだ。
だが、言ってしまえば指に最大限の注意を払えばいいのだ。
「死ね―――――――操糸妖斬陣!」
体勢を整えたソウエイが出してきたのは、俺が想定していた技だった。
操糸妖斬陣は、初見殺しの技だ。
大抵の場合、忍び寄る無数の糸に気付かずにいつのまにか身体がサイコロステーキになってしまうだろう。
しかし悲しいかな。
転生者である俺からすればその技は熟知しているし、魔素を浄化する結界によって大幅に弱体化している攻撃は、俺の槍で無惨にも引き千切られる。
「―――――――ッ!」
「逃がさねぇ、よ!」
「ぐあっ!?」
攻撃がくる、と思ったのだろう。
弱体化を悟らせないほど素早く後ろに跳んだ彼の判断は正しかった。
ただし、俺の武器が槍ではなく剣だったのなら、の話だが。
身体をしならせ、槍を一気に振り抜く。
勢いを乗せて投げられた槍は、いとも簡単にソウエイの肩を射抜くことに成功する。
FGOの兄貴から着想を得た、この一連の動き。
ゲイ・ボルグには到底敵わない威力なのだが、スピードはそこそこに速い。
ソウエイが避けられなかったように、相手が身動きできない状態であるほど被弾率は上がるのだ。
肩を射抜かれたソウエイは、力尽きるように膝を地につける。
―――――――頃合いかな。
そう判断した俺は、精霊の力を借りて槍を手元に戻す。
それを見たソウエイはとどめを刺されると思ったのだろう。
なけなしの力を振り絞り、せめて
「ちょっと待ちな、アンタ」
俺はそれを止める。
別に俺は、ソウエイを殺したいとは露ほど思っていない。
ただ、
まあ、このソウエイが分身体であることも知ってるし、それでも殺す気で戦ってけどね。
「俺はこう見えて騎士なんでね。魔物とはいえ、正々堂々倒さねぇってのは、なんかこう、その……くるものがあんだよ」
嘘である。
ぶっちゃけ、魔物退治に行くときは部下を十人ぐらい連れて行くし、なんなら罠にはめて「ヒャッハー!かかりやがったぜぇー!」とか言ってる毎日である。
だがしかし、彼を見逃す……もとい好感度を稼ぐには、こうでもしなきゃやってられないのだ。
かっこよく締めようと思ったけど、最後らへんは良いのが思いつかなくて文法的におかしくなったけど、ソウエイには伝わったみたい。
「……見逃す、ということか?」
ほらね。
信じられないような者を見る目で俺を窺うソウエイは、言葉を噛み砕いて理解してくれたようだ。
「ああ。見逃すといっても、どうせ殺るなら正々堂々、本人と殺り合いたいしな」
「……バレていたか」
「へっ、そんな薄っぺらい魔素量でよく言うぜ。ほら、行くならさっさと行きな。団長もまだアンタのとこの主様には会っていないようだしな」
「……感謝する。が、今度会ったときは容赦しない」
「へいへい、そんときは楽しみにしてますよ」
ま、たぶんだけどリムル様の魔王化で
「……では、さらばだ」
そう言って影に潜ったソウエイは、主であるリムル様の元へ行ったのだろう。
聖騎士である俺にはどうすることもできない。
ただただ、彼らの無事を祈るばかりだ。
俺に会わないで死ぬとか許されないからな、リムル様。
雲一つない青空を見上げながら、そう思いをはせて。
俺は愛用の槍を背にし、ルべリオスへの帰還魔術の詠唱を始めた―――――――