「ねえ、俺は誰に見える?」
長いこと鍵のぶっ壊れた俺の部屋に一人称が俺の痛い女が現れたのは5分前のことだ。
「ちょっとまで、落ち着け俺。これはきっと冬の幻覚だ。寒すぎて身体が震えて前髪とかを見間違ったんだ、うんそうだよな」
おーい! お──い!!
うるせぇ!
ドアを閉めて玄関に逃げ込んだ俺はこのバカみたいな状況に何とか理由付けをしようと必死に頭を捻った。
「あー! まずお前が何者か名乗れ、話はそれからにしてくれ!」
「お前だよ! お前!! 目玉入ってないのか? 俺の見た目はまんまお前だろ!!」
その聞き捨てならない謎発言に思わずドアを開けた。
「んなわけねぇだろ、そもそも俺はお前が女に見えてんの! 俺は男なんだよ!」
すると、その女は突然暴れるのをやめてペタり。
座り込んでしまった。
おいおい、マジかよ。
流石に馬鹿らしくなってきた俺はその女がいる部屋へ入った。
「なぁあんた、なんの目的があって入ってきたんだ?」
「……、恥ずかしい話なんだけどな? 俺はドッペルゲンガーって奴なんだよ」
「は。はぁ……」
バカだ、こいつ。
ただこんな深夜に真剣な顔で顔が全然違うってのに俺のドッペルゲンガーだと自分の事を名乗るこいつのことが少し面白くなってきた。
「んじゃあんた本来なら俺の顔して俺の前に出てくるはずだったんだな?」
「おう、そのはずだったんだがなぁ」
「ならその明らか様な女顔、どこで拾ってきたんだよ」
「そうそう、本当なら俺はお前の言う通り適当なやつの顔を見て拾うものなんだ。予想なら大当たりだ。ただあんたの顔を俺は確かに見たのに」
そこで俺が貸してやった鏡を覗いた自称ドッペルゲンガーは首を傾げる。
「てんで似てない、本当に、兄妹とかにも見えやしない 」
「なら、どうするんだよ。そもそもドッペルゲンガーが顔を拾う理由ってなんだよ」
「もうすぐ死ぬやつと入れ替わるため」
は?
「いやちょっと待てよ、俺がもうすぐ死ぬって言いたいのか?」
「そのはずだったんだけど、俺の顔はお前のとは違う。だから大丈夫なんじゃないか?」
「随分とまた適当な事を……」
すると、一丁前にこのドッペルゲンガー。
腹の虫を鳴らしてきた。
「飯、買いに行くか? 俺も行くところだったし」
「いこう!!」
食い気味に顔を寄せてきた自称ドッペルゲンガーは、地味美人風の顔を筋肉が張り裂ける程の笑みを浮かべて立ち上がった。
「ほら! いこう」
「わーったよ、鍵壊れてるから適当に出ろ」
「ドッペルゲンガーが言うのもなんだけど、俺から見てもそれは無用心過ぎないか?」
「全財産ポッケなら大丈夫だ」
「まあ、なんでもいいか。なに食べよっかなぁ」
こいつ、金あるのか?