なあ、これなんなんだよ……。
「お前、なんか買いに行く金あるの?」
「んー、ない! せっかくだからドッペルゲンガーの小技みたいなの見せてあげるよ」
「はぁ? 何言ってんだよ」
「まあ俺がいいもの見せてやるって!」
すると、奴は店の路肩にある小石を拾って来た、それで何するっていうんだよ。
「おい、釘のスープみたいな古典的な方法で奢ったりしないぞ」
「俺がどうやってこの服を手に入れたと思う?」
「んー、あー! よく考えたら服は今着てる俺のやつじゃねぇか! なんか恥ずかしいな!」
「本当なら顔も同じだったんだよ!!!」
ごほん、ひとつ咳込んで奴は得意げに俺に説明を始めた。
「俺はこの石を別の物に変えられるんだよ!」
「は、はぁ……?」
もうなんでもあり? いやそんなわけない。落ち着け俺。
「まあ見てろって!」
鼻息混じりで意気揚々と入店していく、そのがぱっと開いた自動ドアへ俺は後ろを項垂れたように負いながら入っていった。
「な〜に食べよっかなぁ」
「焦んなくていいぞ」
いつも通りの売れ残り弁当を手に持って俺は、奴が何を食べるのか見ていた。冷えた弁当ひとつで楽しそうに笑うその女はどこか幼げで、先程までの胡散臭いやり取りがどこか頭から抜けていた。
「これだ!」
シャケ弁……、渋いな。
「マジじゃん」
セルフレジを使いさっさと会計を済ませた俺は、店外に出て奴の手の中にシャケ弁があるのをまじまじと見ていた。
いや、そんなわけない。シンプル窃盗に違いない。
「バカお前! 俺も謝ってやるから、早く戻しに行くぞ!!」
「あー! 待って待って! 見てて!」
すると、その弁当が一気に小石に戻った。
「1回戻すとやり直しなんだから! 待っててくれ」
どこか惚けた顔をした俺は、その後ろ姿を見送った、あいつ本当にドッペルゲンガーだったんだな。全くもって信じていなかった訳じゃない、それでもここまで物理法則を外れた奴だったとは。
「うっし、それじゃあ帰るか」
「……お前、本当に人間じゃなかったんだな」
「当たり前だろ? 俺はれっきとしたドッペルゲンガーなんだから」
一息ついて声が漏れる。
「ありえねぇ〜」
「ありえないってなんだ!」
俺はフラフラと歩く浮世離れしたこの不審極まる女の不服そうな態度に思わず吹き出した。年齢は多分高校生くらいにも見えるしOLのようにも見える。だが、俺の量販店のステテコとどこで買ったかも忘れた無地のTシャツを着ているのを見るとやはり不審なのであった。
「暗いんだから、コケると痛いぞ」
「……はーい!」