刻渡りの勇者   作:嶽山

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この物語はゆゆゆシリーズを原作とした2次創作です。
時系列はのわゆ上巻の諏訪遠征の終り頃からのスタートとなります。
物書きが初めてなのでお見苦しいかもしれませんがどうかご容赦下さい。


西暦編 1.世から世へ

その日は結嶋奈津雄の大事な家族、妹の結婚式。

 

そのはずだった。

 

しかし今、目の前に広がる式場は突如として空から現れた白い化物によって阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。

 

参列者達が次々と化物にバリバリと喰われる音が響く。

 

『何で、何でこんな事…』

 

全く意味がわからない。奈津雄は焦りながら辺りを見回す。混乱の中、妹の姿を見失っていた。

 

「…っあ!あいつは!どこに!?」

 

白い化物を躱しながら奈津雄は会場を走る。

 

いた!奈津雄の数メートル先、花嫁衣裳に身を包んだ妹がいた。

 

「お、おい!」

 

「…あ!兄さん…」

 

「…あいつは、義弟は一緒じゃないのか?」

 

「彼なら、…もういないわ。」

 

「私を庇って、あの白いのに」

 

「…そう、か。」

 

一瞬の沈黙。義弟は妻となる彼女だけでもと逃がしたのだ。

 

奈津雄は妹の手を掴んで支え起こす。

 

「行こう、母さん達ならきっと逃げられてる。とにかく合流して…「嫌よ!!」

 

「逃げて…逃げてどうなるのよ?助かりっこないわ!」

 

「それでも!立つんだ!!」

 

「離して!離してよぉっ!!」

 

妹が手を振りほどこうと暴れる。

 

「生きるんだよ!今は!!」

 

そう叫んだ時、大口を開けた白い化物が妹の背後から迫っているのが見えた。

 

いけない!奈津雄は咄嗟に自分の方へ妹を引き寄せるとそのまま自分の後ろへ突飛ばした。

 

「に、兄さん!?」

 

「逃げろ…早く!」

 

「俺がここを引き付けてる。ちゃんと逃げるんだぞ。」

 

「で、でも…。」

 

「いいから、お前だけでも生きてくれ。」

 

「うん…。」

 

妹がゆっくりと立ち上がる。

 

「遠くまで走るんだ!!」

 

「うん!…兄さん、ごめんね」

 

「ああ」

 

気にしてない、と続けようとした直後だった。角から現れたもう一匹の化物に妹は喰われてしまう。

 

悲鳴を上げる隙も無く、あっさりと。

 

「っ…あ…!」

 

上手く声が出ない。

 

何故、どうしてだ。

 

こいつらは何だ。自分達が何をした?

 

解らない、何も、何も解らない。

 

今日は妹の幸せな結婚式で、自分は笑顔でそれを見送るはずだったのに。

 

奈津雄はゆっくりと振り返る。

 

目の前に、大口を開けた白い化物がいた。

 

「なぁ」

 

「何なんだよ、お前等は」

 

ぽつりと呟いた次の瞬間

 

バリ ゴキン

 

奈津雄は頭からかぶりつかれた。

 

 

(う、ぁ…)

 

頭蓋が噛み砕かれ化物の歯から血渋きが吹き出る

 

(終わる…んだな…)

 

 

奈津雄の意識は深く、暗い闇へと落ちて行った。

 

 

西暦2015 7.30、度重なる天変地異の果てに空からやって来た異形の化物。

 

人間のみに攻撃性を持つこの化物に現代兵器は一切通用しなかった。

 

人類は然したる対策も得られないままこの化け物達に蹂躙し尽くされ、ここに終焉を迎えた

 

この世界は終わったのだ。

 

 

 

―――――――――――

一体何れくらい経っただろうか、奈津雄は淡い光の中で目を覚ました。

 

そこは神秘的な雰囲気を放つ巨木の根元だった。

 

(…何処だここ)

 

身体を起こして違和感に気付つく。

 

「え、あれ…?」

 

頭から化物の胃袋に収まってた自分の身体が綺麗に元通りになっている。

 

「…。」

 

ああ、これ。天国ってとこなんだろうな。

 

まだ頭が上手く回らない。 

 

ぼんやり考える奈津雄。その時だった、脳へ何かが語りかけて来る。

 

いいや、それは言語ではない。イメージに近い物だ。

 

だが何となく内容は理解が出来る。

 

ここは自分がいた世界とは違う、平行世界の地球である事。

 

この世界も自分のいた世界と同じ化け物がいる事。そしてその背後にいる天の神と呼ばれる存在。

 

この巨木は神樹、四国の土地神の集合体である事。

 

その神樹を構成する土地神が死んだ自分の魂を呼び寄せ、神の持つ力により新しい肉体、御姿をあたえられた事。

 

 

この化物に神樹によって見出だされた勇者と呼ばれる存在が立ち向かっている事。

 

これから自分がその戦列に加えられる運びとなってると言う事

 

そして、一緒に戦う勇者が直面する危機を救うと言う頼みだった。

 

「情報量が多い。」

 

「今起こってる事態に手を貸せって言ったな?悪いが断るよ。あいつらには…確かに恨みがあるけど俺には無理だ。ここまでしてもらってアレだけど…」

 

伝えられたイメージの中に自分の故郷の末路も見えた。現代兵器が一切通用しない様も。

 

人類は連中に勝てないのだ。

 

すると神樹からの返答が流れ込んで来た。

 

その化物と渡り合える戦う力を与えてくれるらしい。

 

「…はいそうですかって信用出来るか。…とにかく、あれだ。この身体は返す。だから成仏させてくれ。」

 

神樹は答えない。

 

「あ、おい、黙るなよ…。なぁ…まさかその力っての、本当にくれるのか?」

 

「いいや、違う。」

 

「お前、無理矢理寄越す気だろ?」

 

「答えてみろ」

 

突然奈津雄の身体は光に包まれて上昇を始めた。

 

「!?!?!?!?」

 

「な、おい!俺はまだやるなんて一言も…!」

 

奈津雄はどんどん空へと昇って行く。

 

どうやら、神樹は最初から奈津雄に選択権など求めていなかったようだ。

 

はいかイエス

 

拒否権は無かった。

 

所詮人の心など、事情など、神に解りはしないのだ。

 

 

――――――――――――――

冷たい地面の感触で目が覚める。

 

今度の場所は神樹のいた場所ではない。

 

「神社…?」

 

そこは草木が覆いかけた神社だった。

 

随分と人の手が入ってないようである。

 

周囲をもっとよく見ようと身体を起こして立ち上がった。

 

「うぐっ…!?」

 

強烈な目眩が襲いその場に倒れかかる。

 

なんだか身体と精神が噛み合って無いような、そんな感じだ。

 

座り込み、呼吸を整える。

 

「あぁ…クソっ!あの神様、一体何したんだよ…」

 

あの場で与えられた情報を一つづつ整理してく。

 

「新しい身体と戦える力を与えられて…勇者の戦列に加われとか言ってたよな。そいつらの危機を救えとも」

 

だが、どうもここにはその勇者ってのはいないようだ。

 

段々と目眩から来る痛みも収まって来た。

 

「仕方ない、動くか…」

 

自分のいたとことは状況の違う地球。何が待ってるんだろうか。

 

拒否は受け入れられず後戻りも出来ない。

 

未だはっきりしない頭で考えながら、奈津雄は立ち上がると覚束ない足取りで歩き出した。

 

目の前には廃墟の町が広がっている。一体なにがあるというのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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