刻渡りの勇者   作:嶽山

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西暦編 10.花見と調査

「乾杯~!!!!」

 

丸亀城の敷地内、満開の桜の下で花見が始まった。

 

奈津雄、杏、球子は無事に退院、他の勇者メンバーとひなたに加え、今日は大社から巫女の娘達も呼んでの大所帯だ。

 

球子が釣って来た魚を振る舞い、ひなたと杏が作ったご馳走を皆で食す。一時の平和。

 

そんな楽しむ彼女達を奈津雄は一人離れた所から眺めていた。

夢で見た光景は一先ずの所解決した(余りにも現実味が有り過ぎたのでもう夢と言うより神託と大差無いのだろうが)。

 

球子、杏、友奈の危機は回避出来た。だが彼処で見た光景はまだ終わりではない。

 

神託で見た光景の順序的に次に危機に直面するのは…千景だ。

 

奈津雄は思い返す。病室で去り際の彼女の焦るような表情と強い言葉。

 

『でも次は私が、あんなバーテックス私が倒してみせる…!』

 

「あれに何か原因があるんかな…」

 

「原因?何だ聞かせてみろ」

 

「…あまり驚かせないで下さいよ、烏丸先生。」

 

いつの間に来たのか、奈津雄の隣には大社の巫女の一人、烏丸久美子が座っていた。

 

「上里から大体の事は聞いてる。大活躍だったそうじゃないか、欠番勇者。」

 

「別に…無我夢中でやっただけですよ。ってか何なんですその呼び名?」

 

「今私が考えたのさ。お前は世間には公表されてない非公式な存在だからな。」

 

「…。」

 

「話してみろ。お前の受けた神託の様な物、まだ終わってないんだろう。」

 

何やら面白げな、期待する様な感じで彼女が問いかける。

 

「えぇ、まぁ…。自分が次に見たのが…」

 

奈津雄は神託で見た内容と病室で千景が見せた様子を話した。

 

「ふむ…。」

 

久美子は花見を続ける一同を見ながら何か考え込んでいた。

 

「パっと見た感じ郡に不安な兆候は見えんがな…」

 

「…しかし念の為だ、アイツに話を聞こう。花本!」

 

「はい、何でしょうか烏丸先生…結嶋様も。」

 

久美子が呼んだのは同じく大社の巫女であり千景を勇者として見出だした花本美佳だった。

 

「上里からこいつの受けた神託の事情は聞いてるな?」

 

「ええ、大体の事は。」

 

「では単刀直入に言う。次に危機に直面するのは郡だ。」

 

「…ッ!?郡様が!!それは確かなんですか結嶋様!」

 

美佳は奈津雄に詰め寄る。彼女は千景へ崇拝に近い情を抱いている。尋常じゃない雰囲気だった

 

「花元さん落ち着いて。うん…。自分が見た限りだと次は千景だ。今はそうは見えないけどこないだの戦いの後から千景の様子がちょっと変でね。」

 

「何か君の方で解る事があれば教えて欲しいんだ。どんな些細な事でもいい、頼む。」

 

「結嶋様…解りました。」

 

そこから美佳は千景について自身の実家の寺の従業員を通じて得たありとあらゆる情報を語り出した。

 

内容は正直、耳を塞ぎたくなる事しか無かった。これが事実なら千景は勇者になるまで生地獄にいた事になる。

 

そして美佳は最後に大社が千景を高知の実家に帰省させようとしている案が上がっていると語った。

 

切り札を使った戦闘による精神の磨耗、これを家族の元に帰って癒そうと言うのだ。

 

美佳は神官達に抗議したが聞き入れられる事は無かったそうだ。

 

「これはさっさと動いた方が良さそうだな。」

 

「はい…郡様が間違った舵取りの犠牲にならない為にも、お願いします。」

 

とりあえず明朝現地に行こう。

 

考えを纏めた奈津雄は皆の所に戻る。

 

「あ、奈津雄君。久美子さんと何話してたの?」

 

戻って来た奈津雄に友奈が話かけて来た。

 

「ん?まぁ…最初の聴取の時から久々にあったからさ、色々と、な。」

 

「そうなんだ…。ねぇ奈津雄君」

 

「うん?」

 

「何かは解らないけど困ってる時は話してね?私じゃ力になれるかは解らないけど…」

 

「…ありがとう友奈。その時は必ず頼るよ。」

 

「うん!!任せて!」

 

屈託の無い笑顔で彼女は笑うのだった。

 

――――――――

 

奈津雄は千景の危機回避に関して考案した2つのプランをひなたに話し、高知にある千景の故郷へ向かった。

 

到着した過疎化しつつある村、その中にある千景の実家、奈津雄はその異常さに恐怖を覚えていた。

 

家の外壁の至る所に下劣を通り越した罵詈雑言の落書きと貼り紙がしてあるのだ。

 

これは…来る家を間違えてるな。表札はきっと範馬と書かれてるはずだ。

 

そう願いながら表札に貼られた悪口の書かれた貼り紙をバリバリと剥がす。

 

「マジかよ…」

 

そこには紛れもなく「郡」と書かれた表札が顔を出した。

 

ダメだ、これはマズい。今の千景をここに帰したら取り返しの付かない事になる。

 

奈津雄は足早にその場を後にすると美佳の取り計らいで現地に来ていた彼女の寺の従業員と落ち合い、情報をより詳しく整理し香川へと帰還した。

 

村で得た情報、これを報告書に纏めて大社に提出するのだ。

そしてそこに加えるもう一つの情報、切り札の連続使用にによる影響に関する事だ。

 

これは杏が独自に研究してた事で、入院中に聞かされた。人が触れない領域に入った際に起こる精神的なダメージ、強烈なマイナスイメージや疑心暗鬼を起こす等という内容だ。

 

そしてこれを恐らく大社は把握しておらず、改良の余地がある事。

 

上を動かせる十分な材料は揃った

 

巫女の美佳が抗議をしてもダメだったが勇者である自分なら…。

 

翌日、報告書を纏めた奈津雄はひなたに付き添って貰い大社へ向かった本部で美佳と落ち合い、提出を済ませる。

 

神官は報告書を受け取りながら怪訝そうな顔で言った。

 

「あの…郡様なら先程我々からご実家へ帰省なされるよう通達したのですが…もう向かわれてるかと」

 

事態は、最悪な方向へと動き始めていた。

 

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精霊の力の行使...これによるデメリットは私も把握していました

 

その力を使った千景さんの様子が妙な事に最初に気づいたのが彼で、直ぐに行動に移したのも彼でしたね

 

私は、私達はもっと早く知るべきだったんです

 

千景さんのこれまでと、そこに纏わる陰惨な出来事を

 

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