「…以上が今回の顛末になります。」
「ありがとうひなた。いきなりの無茶振りで申し訳なかったが…」
奈津雄は病室でひなたから今後の大社内の動きに関する報告を聞いていた。
先日の千景との様子を大社側へリアルタイム映像で流しながらひなたの解説を元に上層部の意識の甘さを思い知らさせる作戦…手応えはかなりあったようだ。
切り札の研究には杏の考察を取り入れた研究が進み、ケアの一環としてこれまで接触が禁じられていた巫女と勇者の交流を解禁する流れとなった。
「…全く!本当に無茶をしたな!!」
「そうだぞー!奈津雄!!タマ達今回完全に傘の外じゃないかー!」
「タマっち先輩、それを言うなら蚊帳の外だよ…」
病室にはひなた以外に若葉と球子、杏も来ていた。
奈津雄はあの戦いで命に別状は無かったものの、千景の武器である大葉狩が腹に突き刺さってしまっていた。
その治療はまだ終わってないのだ。
「いや悪かったって…何分緊急を要する事態だったからして…」
「でも友奈のやつには声かけたんだろー?」
「う…ま、まぁそこは適材適所…というか…って止めろタマ!!頭をグリグリするな!!!!」
「球子…もうそれぐらいにしとけ。それで、千景の方はどうなんだひなた。」
「落ち着いてますよ。御家族の問題は一先ず解決、カウンセリングを受けながら友奈さんと花本さんが付きっきりで看病してますから」
「そうか…なら安心だな。今の所バーテックスの襲撃は?」
「神託は特に降りていません。ですが大社側で勇者に結界外にいる敵の討伐作戦が打ち上がってると聞いてます。」
「こっちから仕掛けるってのか。今までとは違うのな」
タマのグリグリから解放された奈津雄が言う。
「大社の方針に何か変化があっのですかね…」
神妙な表情で杏が言う。
「とにかく今は千景と奈津雄の治療が最優先だ。先の事を考えるのはその後だ。」
「奈津雄、色々言いたい事はあるが今はゆっくり休んでくれ。それと千景の事ありがとうな」
「いや…あいつは俺達以上に色々抱え込んでた。それを今回で全部吐き出せたから結果オーライよ。」
「それと、最大の活躍は友奈だよ。あいつが間に合わなかったら本当にヤバかった」
「…良かったよ本当に。」
奈津雄はベッドの背もたれに身体を預け深く溜め息を着く。
「それでも」
「それでも最初に千景の為に動いたのは奈津雄だ。」
「だから…ありがとう。仲間を助けてくれて。」
「おぅ…。」
若葉は真摯な礼を告げるとひなた達を連れて病室を出て行った。
少し気恥ずかしい気持ちはしたが、勝ち取った未来に安堵し奈津雄は一人目を閉じたのだった。
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千景さんの件も含めて私達は大きく一歩を踏み出せたと思います
しかしこれで一安心…とは行きませんでした
大社が下した次の作戦、大きな困難がまた私達に襲い掛かろうとしてたとはその時は知るよしもなかったんです