刻渡りの勇者   作:嶽山

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西暦編 15.蒼い流星となって

千景と奈津雄、両名は無事に退院の日を迎えた。

 

丸亀城に戻り数日のリハビリ訓練期間を挟んで鈍っていた身体を元に戻す。妙に甲斐甲斐しい彼女達の様子に奈津雄は違和感を覚えながら作戦の決行日がやって来た。

 

作戦は結界の、壁外瀬戸内海上にいるバーテックスの討伐だ。

 

「さーてやって来たのはいいけど何がいるんだ?」

 

球子が言う。

 

「今回は敵の動きがいつもと違う。全員、気を引き締めて行くぞ!」

 

「はい!」「ええ!」「おー!!」

 

若葉の号令に杏、千景、友奈が続く。

 

「…。」

 

「ん?、どうした奈津雄。」

 

「タマ…いやなに、今までに無い戦いだからさ。」

 

「心配しなくてもタマが付いてる!大丈夫だ!!」

 

「…うん、そうだな!」

 

全員は結界を潜った。

 

そこには

 

以前戦った蝎型を越える大きさのバーテックスが今まさに形成されている最中だった。

 

「…帰るか」

 

「おい!!!!」

 

回れ右をした奈津雄の襟首を若葉が掴む。

 

「冗談だよ!…はぁしっかしこんなデカく育っちゃってまぁ…。」

 

「どうしましょうか…。」

 

「どうもこうもあるか!若葉、切り札で一気に畳み掛けよう!」

 

「私も賛成!」

 

「そうね…今はそうするしか手は無さそう。」

 

「仕方無い…完成する前に叩く!」

 

勇者五人は切り札を発動する。

 

「先ずは私が凍らせてみます!」

 

杏が雪女郎の猛吹雪を叩き付ける…が形成しつつある小型のバーテックスにダメージが行くのみで肝心の本体には蝎型の時と同様効果が無い。

 

「ならば!!」

 

若葉・千景・友奈の近接攻撃、そして球子の旋刃盤が大型バーテックス本体を駆け巡る。

 

やはり全員の攻撃を持ってしても大型バーテックスには傷らしい傷は付けられない。

 

奈津雄は杏の隣で戦況を見守るしかなかった。

 

ここは海上、足場も無く通常の勇者状態の奈津雄では跳躍してもバーテックスまでは届かない。

 

加えて彼の武器は杏の様な射撃型でなく長刀という近接型。

 

為す術がない状態だった。

 

『出番無しか...』

 

せっかくリハビリも終わったのに申し訳なさだけが心にのし掛かる。

 

その時だった

 

「ぐんちゃん避けて!危ない!!」

 

されるがままだった大型バーテックスから巨大な火球が発射される。

 

寸前で千景は避けたが七人御先は六人が全滅しそのまま本州の沿岸部に着弾、大爆発が起きた。

 

「こんなのどうやって戦えば…」

 

千景は火球の威力に呆然としている。他の皆も同様だった。

 

『おいヤバいだろ』

 

『なんとか…あの蝎を殺った時の力が使えれば』

 

長刀を強く握り締める

 

『考えろ』『考えろ』『考えろ』

 

若葉達の切り札

 

神樹の中の概念データ

 

違う

 

あの力は、あの時の力…

 

ダメだ。奈津雄は考える事を放棄した。目を閉じて無意識に長刀を構える

 

此方に来る生前…困難な時、難しく考えてロクな事が無かった。

 

長刀を構え心を無に…身体の内側に宿る神樹の力に集中。

 

それを全身に行き渡らせるイメージを描く

 

「え、奈津雄さん!?」

 

杏が隣で叫んでいる。

 

目を開けたそこには全身に青く光るラインが走っていた。

 

「これだぁっ!!!!」

 

「解った!!そうだ…やっぱり難しく考えるからダメだったんだ!」

 

「そうか、そういう事か!」

 

「でもな…でもまだ足りない!!!!」

 

奈津雄は更に内側から力を引き出す。

 

長刀にも青いラインが、そして彼の身体を蒼の光が包み込んでいた。

 

『今だッ!!』

 

奈津雄は壁上から巨大バーテックス目掛けて跳躍する。

 

若葉達のおかげで表面にいくら攻撃を加えても無駄だと解った。

 

なら狙うは…

 

奈津雄は形成しかかっているバーテックスの部分まで跳躍し、そのまま勢いを付けて中に飛び込んだ。

 

思った通り、形成された内側は脆い。

 

大型バーテックスの 内側、結合した小型バーテックス達は蒼い光に触れて霧散していく

 

『このまま掘り進んでやる!』

 

―――――――――――――――――――――――

 

「お、おい杏!今のは何だ!?」

 

壁上に帰って来た若葉達は杏に問い掛ける。

 

「わ、解りません…奈津雄さんが光だしたと思ったらバーテックス目掛けて飛んでちゃって」

 

「なにそれ…」

 

「結嶋君、どうするつも…」

 

千景が言いかけたその時だった。

 

ボコボコボコッ!!!!

 

巨大バーテックスの身体が無数に膨れ上がる。衝撃でその巨体がよろけ始めた。

 

「な、何だ…」

 

「奈津雄だ…バーテックスの中に入って暴れてるんだよ…」

 

「凄い…。」

 

「あ!見て!!」

 

表面の膨れが全身に回った時、幾筋もの蒼い光が放出され、巨大バーテックスは内側から弾け飛んだ。

 

巨体を構成していた小型バーテックスが散らばる。

 

「杏ー!!」

 

「もう一度雪女郎で!今なら行けるはずだーっ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

弾けたバーテックスの中から一緒に出て来た奈津雄が杏に叫び直ぐ様雪女郎の猛吹雪が散らばるバーテックス達を凍り漬けにする。

 

「よーし!これなら!」

 

「二度と再生出来ない様にしてやるー!!」

 

勇者達が凍り漬けを免れた小型バーテックスに攻撃を仕掛ける。

 

程無くして小型バーテックスは全滅。戦闘は終わり告げた。

 

「ぶはぁっ!!」

 

壁上に奈津雄が降り立つ。同時に蒼い光と全身のラインも消えて行く。

 

「奈津雄さん!大丈夫ですか!?」

 

駆け寄って来た杏が心配そうに叫ぶ。

 

「お、おぉ…なんとかな…。」

 

「やりましたね!作戦成功ですよ!!」

 

「そうだな…でもそれより今は…」

 

「?」

 

「腹減った。うどん食べたい」

 

「あはは…。」

 

こうして結界外の巨大バーテックス討伐作戦は幕を閉じた。

 

土壇場の土壇場ではあったが、奈津雄は自身の力の引き出し方を会得したのであった

 

----------------

 

壁外調査、まさか外にあんな大型のバーテックスが待ち構えてたなんて思いも寄りませんでした

 

あれが完成し結界内に入られてたかと思うと今でもゾッとします。

 

そして奈津雄さんの見せたと言う力...神樹様は彼にどれだけの物を与えたのでしょうね

 

 

 

 

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