四国を襲う未曾有の厄災は終わった。
目標であった四国を守る結界の強化は果たされ人々の間に一時の安寧が訪れていた。
大社は樹海から帰還した勇者達の作戦成功を高らかに報告し人々はそれを喝采を持って迎えた。
「…とまぁ、世間じゃこの有り様だ。」
「ありがとうございます。あ、ここ禁煙ですよ?」
煙草を取り出そうとした久美子を奈津雄が止める
樹海での決戦から早数日、切り札を使用した事もあり勇者は全員病院で入院生活を送っていた。
現在奈津雄は自分の病室で烏丸久美子から報告を聞いていたのだ。
「しかし流体霊力の応用?つくづくお前は規格外だな。」
「俺の力の運用は大社が編み出した物とは違いますからね。自分自身も驚いてますよ。」
「身体の方は?」
「幸い大した事は無いようです。若葉達の切り札みたいな事にはならないようで。」
「…そうか。これは後から上里から聞かされるかもしれないが先に伝えておく。」
「お前達勇者は退院後、結界の外へ調査に行ってもらう」
神妙な面持ちで久美子は言った。
何だ?調査と言ったか。しかし何の為に…?敵は倒したはずなんだが…
「え、何でまたそんな事?」
「私のとこまで詳しい話は下りて無い。ただ上は何か感付いてる様でな。」
「とにかく伝えたぞ。とりあえず今は、ゆっくり休めよ。」
そう言うと久美子は病室を出て行った。
「結界外調査…」
久美子が去った病室で奈津雄は考えを巡らす。
もう平和と言っても過言ではない状況で何故それをやるのか。
「あれ?」
奈津雄はある疑問に行き着いた。
「俺達敵の本体を倒したっけ?」
あれが只の尖兵部隊だとしたらこの戦いはまだ…。
更に数日後
奈津雄達六人は無事に退院を迎え、ひなたから伝えられた結界外調査に向かう為に壁上にいる。
「大社も人使い荒いよなー!タマ達退院したばっかなのにさ!!」
「まぁまぁタマっち先輩、これも大事なお役目だし…」
「タマは思いっきり食って遊びたいぞー!!」
「土居さんうるさいわよ…」
「あはは、タマちゃんてばすっかり元気だね!」
「全く…久々のお役目なのだし、もう少し緊張感を持って貰いたいんだかな」
若葉が苦笑しながら言う。全員十全なケアのおかげで体調はすこぶる万全の様だ。
「今回はひなたも一緒なのか。いくら巫女でも壁外は危険だぞ?」
「安心して下さい。覚悟なら出来ています」
「それに…」
「うん?」
「皆さんが一緒ですから…!」
太陽の様な笑顔でひなたは答えた。
「全員準備は良いな、敵いないとは限らない。慎重に行くぞ!」
若葉の号令と共に結界を潜る。
そこには青く広がる海と破壊された街が…
なくなっていた。
目の前に広がるのはどこまでも一面の業火、そして無数の星屑が群がる光景だった。
「はは…」
奈津雄の口から乾いた笑いが出る。
大社の上層部はこれを予期していたのだろう。
自分達の敵は、どこまでも攻めの手を緩める気は無い様だ。
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悪い夢だと思えたらどんなに楽だったか
結界外は天の神によって原型を無くしていました
私達は何も出来ず、ただ目の前の光景に立ち尽くすばかりで...