目の前に広がる光景は正に地獄その物だった。
結界の外にあった青い空と海、破壊された街は消え去りどこまでも業火が渦巻いている。
「お、おいこれ!どうなってるんだよ!」
「こんな事って…」
球子が叫び杏は膝を付いてしまう。
「どうなっちゃうの…私達の世界って…」
「高嶋さん…」
打ちひしがれる友奈に千景が寄り添い辛うじて支えている。
「若葉、ひなた、これはもう…」
「…ッ!!あぁ…。」
「はい…戻って大社にこの事を伝えましょう。」
冷静さをギリギリで保ったひなたが答える。
「けど、けどさ!何か出来ないのかよ!?タマ達は勇者だろ!なぁ奈津雄!!」
その判断に待ったをかける様に球子が叫ぶ。
「タマ…。俺達の今回のお役目は調査だ。」
「う…。」
「悔しいけどこれは勇者全員の力でもどうにも出来ない。」
世界が書き換えられているのだ。神でもない限り、これを覆す事は出来ないだろう。
「今は帰るんだ。此処も安全じゃない。」
「うぅ…!クソぉッ!!こんなの…こんなのタマは認めない!認めないからな!!」
球子の悲痛な叫びが業火の世界に響き渡った。
あの光景からどうやって結界内に戻ったのか、若葉は今でもよく思い出す事が出来ない。
ひなたは丸亀城に戻って直ぐに大社本部へと報告に向かいここ数日間ずっと不在、勇者達は待機状態である。
「はぁ…」
「どうした球子。鍛練を続けるぞ」
「いやもう今日は無理だって。朝からずっとだし…なぁ若葉、タマ達いつまでこうしてりゃいいんだ?」
「ひなたさん、大丈夫でしょうか…」
「2人共…今回は事が事だからな、大社本部で色々あるんだろう。ひなたの事はひなたに任せよう。私達は、今やれる事をするだけだ。」
不安気な球子と杏をよそに若葉は木刀を握り直すと再び鍛練を始めた。
バーテックスの驚異は今の所一応の形で無いとは言えいつ何が起こるか解らない。
それに若葉自身身体を動かしてないと落ち着かなかった。
「…高嶋さん、大丈夫?」
「あ、ぐんちゃん。私なら平気だよ。」
丸亀城内の教室、一人外を眺める友奈に千景は心配そうに声をかける。
「そんな事ないでしょう…高嶋さん、結界の調査から帰ってからずっと元気が無いわ。」
「あはは…ぐんちゃんには隠せないね。」
「判るわ、ずっと一緒に戦った仲でしょう。無理をしないで…私なら傍にいるわ。」
「…ありがとうぐんちゃん。」
「私ね、バーテックスを全部やっつけて、そうしたらまた若葉ちゃん達と結界の外に行くのかなってそう思ってたの。」
「まだ私達以外にも生きてる人がきっといる…助けなきゃ、って。」
「…。」
「でも外があんな事になっちゃって、わからないけど私達のいる四国もいつかああなっちゃうのかなって。」
「凄くね、凄く不安なんだ。」
「高嶋さん…。」
あの結界外の業火にまみれた光景はポジティブの塊の様な友奈でも流石に堪えたようだ。
千景は瞳に暗い影を落とす友奈を優しく抱き締めた。
「…!ぐんちゃん?」
「高嶋さん…大丈夫よ。外の事は今は何も出来なくてもこれからきっと解決の道があるはずだと思うの。」
「うん…。」
「上里さんが帰って来たら皆で話を聞きましょう。きっと何か新しい情報があるわ。」
我ながら強くなったな、と友奈を抱き締めながら千景は内心驚いていた。千景自身、以前の自分から見てもこんな事が言えるとは思わなかったのだから。
『彼のおかげかしらね…きっと。』
『大変な事になった。』
奈津雄は自室で考え込んでいた。
勇者達の戦列に加わり彼女達の危機を回避する、課せられた仕事は無事に終えた。
だが世界は四国を除いて変貌してしまった。
自分を送り込んだ神樹はここまでなる事を予期していたのだろうか?
そして現状バーテックスを退け、守りが十全の今勇者の役目がおそらく終る事になるだろうという事態の中、自分がどうなって行くのかも予想が付かない。
「なんとかしてあの神様と話せないもんかな…」
どうします?仕事終わったんスけど。そう伝えたかった。
そんな事を考えてると部屋のドアがノックされた
「奈津雄、いるか?」
来たのは若葉だった。
「おお、どうした?」
「ひなたが帰って来た。話があるから集まってくれ」
「了解。今行くよ」
考えてても仕方無い。今は一番大きな情報を持って来たであろう、ひなたの話を聞くのが先決だ。
奈津雄は部屋を出て皆が集まる教室へ出向く。
教室には既に全員が揃っていた。
教壇には久々に姿を見るひなたが。緊張した面持ちでどこか窶れている様にも見えた。
本部で何があったのだろうか。
「皆さん集まりましたね。では話を始めたいと思います。」
次にひなたが語り始めた内容。
それは一同に更なる衝撃を与える物だった。
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それは苦渋の決断でした。
勇者達の力で優勢を勝ち取れたのも束の間、しかし有様では最早...
大社で幾度となく交わされた協議とその決断にも従わざるを得なかったんです