神婚の発表から時間は風の様に過ぎ、とうとう決行日が訪れた。
四国を囲む壁の上には大社の神官、巫女と奈津雄達勇者と麗しい花嫁装束に身を包んだ若葉がいた。
「ごめんなさい、若葉ちゃん。力になれなくてこんな役に…」
「ひなた…、皆もそんな顔するな!これで此処に残った人々は救われる。いいんだ、これで。」
若葉は何処か遠くを見るような目で言った。
杏と球子は泣きそうで、友奈は何処か悔しそうで、千景は不服そうな顔をしていた。
「そうだひなた、お前にこれを預けていく」
そう言って若葉は長年の戦いを共にした相棒とも言える生大刀を手渡した。
「これはお前が持っていてくれ。嫁入り道具にしては些か物騒だろう?」
「…はい。」
「ねぇ乃木さん、あなた本当にこれで良いの?」
「千景...」
もう黙っていられなかったという感じで千景が口を開いた
「抵抗もしないで、ただ黙って受け入れて、本当にそれで良いのかって聞いてるのよ」
「...。」
「どうして?なんで何も答えないのよ!?」
「ぐ、ぐんちゃん...」
激昂する千景に友奈が寄り添う。
「私もね、今回の事には納得していないわ。多分、上里さんと同じくらい」
「認めない」
「こんなの絶対...認めない...。認めないんだから...」
千景の声は怒りから悲しみへと変わりそして嗚咽へと変る。
若葉は、そんな千景にかける言葉が見付からなかった。
程なくして千景は友奈と球子、杏、声を聞き付けて駆け付けた美佳に付き添われその場を離れていった。
「すまないな、奈津雄」
一人残った奈津雄に若葉は申し訳なさそうに言う。
「いいさ。千景も色々貯め込んでたんだ。」
「ああ...。その、後の事を皆を頼む。」
「おう、任された。」
「なあ若葉」
「うん?」
「お前さ、最後まで本音を聞かせてくれなかったな」
「...え?」
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やがて儀式が始まった。
神官と巫女たちが祈りを捧げる中、若葉が巨大な根に乗せられて運ばれて行く。
『私達は何としてでも生き残らねばならない』
『その為に、この身を捧げなければならないのはわかっている...』
『けど』
『ダメだな私は。』
「お前さ、最後まで本音を聞かせてくれなかったな」
『ああ、お前の言う通りだ。』
『もっと、ちゃんと、皆と話すべきだった。自分の本音を、言うべきだった。』
若葉は遠く離れてく皆の方へ振り返る。
「けど」
「もう遅い。進むしかないんだ」
その時だった。
明るかった空が赤黒く染まり出し雲間から巨大な何かが現れた。
「何だ!?」
「樹海化は!?結界を...超えてきてるのか...?
儀式の乱入者に若葉は驚愕する。
壁上の儀式場からもそれは見えていた。
「うわわ、何だあれ!?」
「大きな...鏡?」
「結嶋」
「ええ、解ってますよ先生。まさか本当に来るなんて。」
「結嶋君、烏丸先生、何か知ってるんですか?」
「まぁ、な...さて、皆。」
意を決した奈津雄はひなた、友奈、千景、球子、杏子へ問う。
「今出てきたあれを倒して若葉を連れ戻すって言ったら手伝ってくれるか?」
怨敵討伐と花嫁奪取。二つの目的に向けた戦いが今、始まろうとしていた。