刻渡りの勇者   作:嶽山

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神世紀編 第2話 勇者は小学生

「以上が現在我々の置かれてる状況です。」

 

「はぁ…。」

 

奈津雄は連れて来られた大社、この時代では大赦と組織名を変えた本部施設で簡単な身体チェックの後に安芸を中心とした神官達から説明を受けていた。

 

西暦は2019年、奉火祭のあった年で終わりを迎え、元号は「神世紀」となっていた。

 

そして上里ひなたを中心に大社は大赦と名前を変え、大規模な組織改革と来るべき再度の戦いに向けた準備を進めていた。

 

そして神託でバーテックスの最襲来が知らされ、この時代の勇者が御役目に就いた、との事だった。

 

新たな勇者システムはまだ開発途上だそうだ。

 

選ばれた勇者は三人、そして全員が小学六年生だという。

 

『成る程…それが理由で俺の身体はこんなになったと…』

 

奈津雄の身体は西暦時代から更に若返えってしまっていた。体型的にその勇者達と同じ年齢だ。

 

推測するに今回一緒に戦う勇者達と接触し易いよう神樹が時間移動の最中に身体を弄ったのだろう。

 

「結嶋君にはこれから新樹館小学校へ編入してもらいます」

 

「え、学校行くんですか?本部待機で敵が来たら動くとかじゃ…」

 

今更小学校に通うのは何だか抵抗を感じた。

 

「それは許可出来ません。結嶋君はこれから彼女達と学業を共にして結束を固め御役目に着いて貰います。」

 

「彼女達とクラスも同じにしました。準備が整い次第通ってもらいますよ」

 

安芸の考えは固い様だった。これ以上食い下がるのは無理そうだ

 

「…わかりました。」

 

「今日は色々あって疲れたでしょう?部屋を用意したからゆっくり休みなさい。」

 

安芸に連れられ奈津雄は本部内の宿直室へ通された。

 

部屋に入り、窓から外を眺めながら思う

 

『小学校か…』

 

前の時代、西暦の丸亀城には教室があったがあれは中学校の教室に近かった。

 

「周りと上手くやって行けるのかな…俺。」

 

刻を渡り、環境も人間関係もリセットされた

変わらないのは自分が勇者であるという事だけだ。

 

「ん、あれ…?」

 

不安だけが募る中妙な違和感を感じる。

 

窓の外、風景が静止していた。

 

「樹海化!?早速お出ましか!」

 

即座に気持ちを切り替え奈津雄は本部を飛び出す

 

この時代に来てから初の戦闘が始まろうとしていた。

 

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「もっもごごっ!?」

 

「三ノ輪さん!」

 

「ミノさん!」

 

樹海内の戦闘地では鷲尾須美、三ノ輪銀、乃木園子達三人の勇者が液体技を使うバーテックス、アクエリアスとの戦闘をしており

 

大ピンチに陥っていた。

 

攻撃が通らず放心状態の須美を庇う形で銀が頭部にアクエリアスが飛ばした液体を受けてしまったのだ。

 

液体は滴り落ちる事無く銀の頭部を丸々被ったまま取れなくなっている

 

当然中で銀は呼吸が出来ないバーテックスの対処と方法が浮かばない銀の救出…

 

須美は焦りを募らせるばかりだった。

 

と、そこに。

 

「こんにちは、やってる?」

 

見知らぬ少年が現れた。

 

「えっ…?」

 

「だ、誰~?」

 

「ごぼぼっ!?」

 

三者三様の答えが帰って来る。

 

須美は驚きを隠せなかった。

 

樹海には私達しか入ってこれないはず。では目の前の彼は一体…。

 

そこで御役目に就く際に聞かされた話を思い出す。

 

まさか彼は…

 

「あ、あなたもしかして安芸先生が言ってた…」

 

「援軍さんだね~!」

 

「ごぼっ!ごぼぼっ!」

 

「あれ、聞いてたんだ。うん、そう自分が援軍だ。話が早くて助かるよ」

 

彼女達三人ががこの時代で降り掛かる危機を回避し一緒に戦う勇者で間違い無い様だ。

 

「とりあえず、目の前のバーテックスの方は自分に任せて。君達はそちらの娘に引っ付いてる…水?をどうにかしてあげて」

 

「わ、解りました!」

 

「了解~!」

 

これで液体が引っ付いてる娘は彼女達に任せて大丈夫だろう。

 

なら自分は…

 

「さて、と。」

 

奈津雄はポケットから小型パッド型端末を取り出しボタンを押す。

 

パシャっと言う音と共に開いた画面の下に取り出したもう1つの道具、桜を象ったメダルを嵌め込んだ。

 

途端に画面から青黒い力の奔流が身体を包み込み視界を被う。

 

そしてそれが晴れたそこには、長刀を肩に固定し黒いタキシードの様な勇者服に身を包んだ奈津雄が現れた。

 

やはりと言うか、勇者服も武器のサイズも今の身体にフィットする様調整がされている。

 

これも神樹の取り計らいなのだろう

 

「な、何と言うか…」

 

「地味、だね~」

 

「ごぼ…」

 

1人何を言ってるのかよく解らないが後ろ三人から発せられた言葉。

 

それは久々に聞く、どこか懐かしいものだった。

 

 

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