「っツ!!!!」
奈津雄はアクエリアスバーテックスへ向けて一気に跳躍しながら長刀を抜き放つ。
それに対してバーテックスは奈津雄の進撃を遮るよう、無数の液玉を放って来た。
『あれに捕まるとマズいんだったよな…』
先程別れた少女達、赤い勇者服の娘を思い出す。
「それならっ!」
奈津雄は手を液玉の方向へ掲げ流体霊力を球体上にして無数に放出、バーテックスの液玉にぶつけ全て相殺した。
「ぶっつけ本番だったけど、何とかなるもんだな…っとと、いけない。」
次の液玉を放出する間を与えずバーテックスの懐に飛び込んで一刀を浴びせる。
液玉と違いバーテックス本体に実体刃による攻撃は通る様だ。
「よし!このままここを持たせて…あの娘達は!?」
振り向く奈津雄が見たのは未だ液玉が取れない赤い勇者服の少女とそれをどうにかしようと焦る二人の少女だった。
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「と、取れない…!」
須美は焦っていた。
あの少年にこの場は任されはしたが銀に貼り付いた液玉は取れる気配が無い。
弾力がありすぎて素手で引き剥がせないのだ。
「わ、鷲尾さん~!、このままじゃミノさんが…」
「解ってるわ!でも…これ、本当にどうしたら…。」
「ごぼ…、ごッ!ごぼぼ!」
「三ノ輪さん!?」「ミノさん!?」
液玉が取れない銀が何か閃いたようだ。
次の瞬間、
ゴッゴッゴ!と音を立てて三ノ輪銀は頭に貼り付いた液玉を飲み始めた。
「え、ちょ、三ノ輪さん一体何を...」
「おぉ~!!」
銀の突然の行動に面食らう須美が言い終わる内に彼女は液球を飲み干した。
「ふい~。助かった。」
「助かった、じゃないわよ!?平気なの三ノ輪さん!」
「ミノさんよかった~良い飲みっぷりだったぜ!」
「だ、大丈夫だよ!...味も案外悪くなかったし」
「全く…」
「と、とにかく!今は先に行ったあの子に合流しよう!アタシのせいで任せっきりになっちゃってるし…」
「…はっ!?そうだったわ!」
「よ~し急ごう!」
三人はバーテックスに向かって駆け出した。
それは戦闘を継続していた奈津雄からも確認できた。
『あの赤い娘…無事助けられたみたいだな』
次の瞬間、奈津雄が安堵する隙を狙ったかの様にアクエリアスバーテックスが無数の液玉を吐き出す。
「…ッ!しまった!?」
しかしそれらは全て奈津雄を通り過ぎ三人へ向かう
飛んで来た液玉、それに対して三人は迅速に園子を先頭に一列に並ぶ
回避しない?何をする気だ?
「いっくよ~!」
園子の掛け声と共に彼女の槍が番傘の様な楯に変化した。
そこへ液玉が雨あられと降り注ぐ
「うっ…!」
「まだ…!まだッ!!」
液玉の連射の中、園子を共に支える須美と銀が歯を食い縛る。
「まだだッ!勇者は…根性ッー!!!!」
銀が叫ぶと同時に液玉の連射が途切れた。
三人はその隙を見逃さない
「今ッ!!」「突撃~!」「おぅッ!!」
「うわッ!」
奈津雄は巻き込まれまいと突っ込んで来た三人を避ける。
須美の射撃が、園子の突きが、そして銀の斬激がアクエリアスバーテックスに大きなダメージを与えて行く。
見事な連携に奈津雄は見入ってしまっていた。
変化が起きたのは銀の斬激が決まり切った時だった。
ダメージを負ったアクエリアスバーテックスが消え始め、そこへ花弁が舞う。
「な、なぁこれどうなってんだ?」
奈津雄は攻撃を終えた三人に駆け寄って尋ねる。
西暦時代の戦いとは明らかに違うのだ
「これはね、鎮花の儀なんよ~」
「神樹様の力で魂を鎮めて敵を押し返すそうなんですが…」
「なんか出来る様になるまである程度攻撃を加えなきゃならないんだよね」
「そう…か。」
「ん?どうかした?」
「あ…いや、何でもないよ。ありがとう教えてくれて」
奈津雄がいた西暦時代、バーテックスとの戦いでは相手をどうにかではあるものの、完全に消滅させていた。
しかしこの神世紀、300年後の世界では撃退に留まっている。
『色々と変わったんだな…』
敵を撃退した事で樹海化が解け始めた
「あ、あの!」
須美が声を掛けて来た。
「また、会えますか?」
「会えるよ、近い内に必ずね。その時にはちゃんと挨拶するからさ」
奈津雄が言い終わると同時に視界が白に包まれ、元の世界へと戻されて行く。
神世紀298年、こうして奈津雄は飛ばされた未来で最初の戦いを終えるのだった。