「まさかこんなに早くしずくに会えるとはな。驚いたよ」
「わたしも」
二人して通学路を歩く
「結嶋は」
「ん?」
「御役目に就いてるの?」
「連れて行かれてたから。大赦の人達に」
「そうだな。うん、立ち位置はちょっと違うけど。そうだよ」
「大変?」
「それなりには、な。同じ御役目就いてる連中ともまだ会ったばかりだから少し不安だけど」
少し苦笑気味に奈津雄は返した。
「…ん。頑張って」
グッと拳を握りながらしずくが応援してくれる。
「ありがとうよ」
そうこうしてる間に学校へと着いた。残念ながらしずくは隣のクラス、知り合いがいれば有り難かったのだが仕方無い。
「結嶋君、おはよう」
「…どうも」
教室の前まで来ると眼鏡をかけた女性教師が声を掛けてきた。
「私は安芸。今日からあなたの担任になるわ宜しくね。」
「はい…。」
「ほら、シャキッとなさい!クラスの皆にあなたを紹介するわ」
安芸に連れられ教室に入る。
『安芸…か。まさかとは思うが』
西暦時代、自分達を助けてくれた巫女の姿が頭を過る
彼女とこの教師は何か関係があるのだろうか?
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「はい、皆さん。今日から一緒にこのクラスで学ぶ事になりました結嶋奈津雄君です。」
「さぁ結嶋君、皆に挨拶して」
「結嶋…奈津雄です。今日から宜しくお願いします。」
担任の安芸に促され挨拶をする。教団の前には奈津雄の他に三ノ輪銀、鷲尾須美、乃木園子の姿があった。
「昨日お話した通り鷲尾さん、三ノ輪さん乃木さん達三人には神樹様の大切な御役目があります。」
「結嶋君もまた同じ御役目に着いています。だから三人と同じく昨日の様に突然教室からいなくなる事もありますが、慌てたり騒いだりせず心の中で四人を応援して下さい」
「皆さんには日々の勉強に励むという務めがありますからね。」
奈津雄にとって死後2度目となる小学生生活が始まった。
-放課後-
「なぁなぁ!結嶋も御役目やってるんだろ!?」
「どんな感じ?痛い?怖かったりするの?」
「あー…いや、あはは…」
その日の最後の授業が終わり、あっという間に集まって来た同級生達に奈津雄は質問責めに会っていた。
『参ったな…確かこの事は口外するなとかだったよな』
「えぇと…悪いな、俺達がやってる事は言っちゃいけない決まりなんだよ。」
「ちぇー」
同級生達はそれ以上追及する事は無かった。
流石にこの時代で国の実権を握る大赦絡みの案件だ、子供でも事の重大さを理解しているのか。
「はぁ…」
解放されて一息付く。
『子供ってのは元気だよな…元気さじゃ球子のやつも負けてなかったが』
奈津雄は鞄を手に取り帰り支度を始める。
『今日はさっさと帰るか。家に荷物が届くんだったか。』
奈津雄は大赦本部住みにはならず郊外に用意された一軒家に住む様言い渡されていた。
今日は家財道具が届くのだ。
奈津雄が席を立ったその時だった
「あ、あの!乃木さん、三ノ輪さん!結嶋君も!」
須美が緊張気味に声をかけて来た。
「すみすけ~」
「どうしたの?鷲尾さん」
「~♪」
「こ、これから四人で祝勝会をしようと思うんだけど…どう?」
「お、いいねぇ!」
「うん~!」
「じゃあまた明日な。」
「「「待てぃ!!!」」」
足早に去ろうとした奈津雄は呆気なく三人に確保、連行されてしまうのだった。
「き、今日という日を無事に迎えられた事を…!」
奈津雄達が連れて来られたのはイネスという市内のショッピングモールにあるフードコート。
今は祝勝会を提案した須美が何やら堅苦しい挨拶をしていた。
「本日はお日柄もよく…」
挨拶はまだ長くなりそうだ。
『それにしても』
奈津雄は同じ席の三人を見渡す。
今度の時代は勇者が小学生、西暦の時代より更に年下だ。
『こんな幼い子達を出さなきゃならないくらい逼迫した状況なのか』
自分がこの時代に呼ばれたという事はこの娘達にも何れ何かしらの大きな危機が訪れる。
神樹からの連絡はまだ来ない。警戒しておいた方が良さそうだ。
『それと』
奈津雄は隣に座る少女を見やる。
『乃木園子』
若葉の面影を感じる彼女だがもしや…
「どうしたの~。ゆいじー」
「ゆ、ゆいじー?」
「うん~。結嶋だからゆいじー。ダメだった?」
「いや、その、良いんじゃないかな」
「そっかぁ~!良かった~!」
妙なあだ名を付けられてしまった。
「なんだぁ~結嶋君、さっきから園子の事見つめてたけどまさか…」
「うぅ…誰も聞いて無い…って何、どうしたの三ノ輪さん?」
「ん?いやさ、結嶋君が園子の事ジーっと見てたからもしかしたらーって」
「えぇ!?まさかそんな…」
「ん~?ゆいじー、私がどうかした?」
「あ、えっとさ、乃木さんって親戚に若葉って名前の人いる?」
「若葉?う~ん…あぁ!それ私のご先祖様だよ~。300年位前の人だけどね」
「…!」
予想が確信へと変わる。乃木園子、彼女は乃木若葉の子孫だ。
「そう、か。」
若葉の魂は約300年後の未来へと受け継がれ、受け継がれている。ようだが大丈夫なんだろうか…
各自ジェラートを注文しての祝勝会は過ぎて行く。
「はぁ~食べた、食べた!」
「もう、三ノ輪さんはしたないわよ」
「えぇ~。鷲尾さんは固いなあ。」
「ねぇ~皆~。」
須美と銀がじゃれあう中、園子が言う。
「どした?」
「あのね~、これから一緒に戦っていくわけだしお互いの事あだ名で呼び合いたいな~って。」
「お、良いね!じゃあアタシは銀で。」
「あ...えっと私h「わっしーとミノさんで!」
「わっしー!?」
「あはは、まあいいんじゃない?」
「鷲尾だからね~。」
「あ、嫌だった?じゃあワッシーナとか...」
「わ、わっしーでいいわ。」
「じゃあアタシは須美、園子って呼ぶよ」
「須美はアタシ達の事は何て呼ぶんだ?」
「...えと、その...ぎ、銀、そのっちで」
照れくさそうに須美は言う。
「わぁ!」「うん!!」
『どうやら上手く結束できたみたいだな。』
「さて結嶋君や」
「...ん?」
「あなたはどうするの?」
「これと言って希望は無いさ。好きに読んでくれていいよ。」
「「「それじゃあ」」」
「ゆいじー!」「奈津雄!」「...な、奈津雄君」
「...あぁ、わかった。」
「宜しくな。園子、銀、須美」
戦って行こう、この三人と。
この時代に来てから奈津雄の抱いていた不安はいつしか消えていたのだった。