刻渡りの勇者   作:嶽山

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神世紀編 第6話 四人の連携

「動きが遅いわ!もう一度!!」

 

「は、はい!!」

 

砂浜に安芸の声が響く。

 

奈津雄達四人は大赦が管理する浜辺の訓練場に来ていた。

 

四人揃った勇者で連携を高めると言うのだ。

 

『貴方達は1+1+1を3ではなく、10にするのよ』

 

『先生~それ奈津雄が入って無いですよ』

 

『マジかよ先生』

 

『あはは~ゆいじー忘れられてる~』

 

『もう!三人共、大事なお話なんだから茶化さないの!』

 

自分が忘れられてるのはアレだが中々高いハードルを設けられてしまった。

 

暑い日差しがジリジリと肌を焼く。

 

現在奈津雄達がやっている訓練は無数に打ち出されるボールを防ぎつつ対象へ銀を到達させ撃破させるという訓練だ。

 

須美は後方から弓矢で支援、奈津雄と園子は銀を守りつつ前進する。

 

訓練が始まってかれこれ三時間近くは経っていたが未だ到達数はゼロ、全員に疲労が見える。

 

訓練用のマシンが起動しボールが打ち出され始めた。

 

「いっくよ~!」

 

「おー!!」

 

「...よし」

 

銀を守る様に園子と三人でフォーメーションを組んで走り出す。

 

「後ろは任せて!」

 

須美が弓を構える。

 

「それ~!」

 

園子が変化させた槍の盾がボールを防ぐ。

 

「...ッ!!」

 

奈津雄の長刀がボールを打ち返し、切り裂いていく。そして二人がカバーしきれない部分を須美の矢が打ち抜いて行った。

 

ここまでは順調だ。対象まであと少し、三人がボール射出マシンを通過しようとした時、

 

「あっ!!奈津雄君、避けて!!!!」

 

須美が撃った矢が奈津雄目掛けて飛んで来る。頭部への直撃コースしかし奈津雄は矢をギリギリまで引き寄せてこれを躱した。

 

矢は奈津雄に飛んできたボールを打ち抜いて落ちる。

 

「あっ...私、私...」

 

「大丈夫だー!!このまま続けるぞ!!」

 

戦意喪失しかかった須美に奈津雄が声をかける。

 

「っつ!!はい!」

 

須美が持ち直し前衛の三人は再び進み始め、とうとう射出マシンの群を抜けた。

 

「銀!」

 

「ミノさん!」

 

「任せろぉっっ!!!!!」

 

銀が大きく跳躍し速度に乗せて振りかぶった大斧が対象の廃バスを粉々に打ち砕いた。

 

「よし、成功よ!訓練はここまで、今の感じを忘れないで!」

 

安芸が訓練終了の号令をかける。

 

「やったぁ!!」

 

「凄いよミノさん~」

 

「疲れた。飯食って寝たい」

 

「あの...奈津雄君」

 

喜ぶ二人を尻目に須美がおずおずと話しかけて来る。

 

「おぉ、須美。お疲れ様。やっと終わったな...。」

 

「ごめんなさい!!」

 

「ん?」

 

「私外しちゃって、奈津雄君にケガさせそうになって...」

 

「大丈夫だよ。須美が撃って来た弾道は何となく予想出来てたし、俺に飛んできた球も落とせただろ?」

 

「結果オーライだ。それに...」

 

「それに?」

 

「須美の事ちゃんと信じてるから。」

 

「奈津雄君...うん、ありがとう」

 

「おーい、お二人さんそろそろ飯にしようぜ」

 

銀が声をかけて来る

 

「ほら、行こうぜ須美。」

 

「そうね。」

 

二人して歩き出した所で異変が起こる。世界が止まった。

 

「これって!」

 

「うわぁこのタイミングで...」

 

「お腹空いてたのになあ~」

 

「アタシも...」

 

「文句言わない!さぁ、私達の連携を見せてあげましょう!!」

 

休む間もなくバーテックスの襲来が訪れたのだった。

 

--------

 

四人の眼下に広がる樹海。そこに今回の襲撃者である四つ足のバーテックス、カプリコーンがいた。

 

「さっきの陣形で行きましょう!」

 

「おぉ!」

 

須美の号令の元、銀を先頭に四人は配置に着く。

 

「須美ー!いつでも行けるぞ!」

 

「よーし…それじゃ始め」

 

その時だった。

 

悠然と進んでいたカプリコーンが突如降下し四つ足を地面に突き刺した。そこから樹海全体に猛烈な振動が走る。

 

「わあぁぁぁぁッ!?」

 

「な、何これ~!」

 

「この揺れ、あいつがやってるのか…」

 

『これじゃあ狙いが定まらない…!』

 

『せっかく訓練したのに!!』

 

須美は弓を握り締める。

 

焦りで考えが上手く纏まらない。この状況、どう打破すれば…

 

「ん?」

 

「あれ~?」

 

気付けば揺れは収まっていた。

 

「よくわからんけど今のうちじゃないか?」

 

「須美!」「わっしー!」

 

「行きます!」

 

四人は再度陣形を取り直して走り出す。だがカプリコーンも黙ってはいない、再び浮上すると足の一本を高速で射出して来た。

 

「させないよ~!」

 

園子の槍が変化した盾で足を弾き返す。

 

「奈津雄!」

 

「きっちり仕留めてやる!須美、フォロー頼んだ!!」

 

「任せて!」

 

「あっ!皆待って…」

 

園子が制止に入ろうとした矢先、再度カプリコーンが動き出した。

 

弾き返された足を戻し今度は本体ごと高速回転させて銀と奈津雄の頭上に落ちて来たのだ。

 

「わわわッ!!!!」

 

「…ったく!今日の相手は随分器用じゃないか!?」

 

回転しながら落ちて来たカプリコーンの爪先を銀と奈津雄は武器で防ぐ。

 

「銀…どれくらい持つ?」

 

「い、一分は…」

 

「よし須美、園子!!俺達が堪えてる間に撃て!」

 

 

「わっしー行こう!」

 

「う、うん!」

 

銀と奈津雄が敵の注意を惹き、須美の援護で園子が敵を撃つ。

 

「えぇい!」

 

須美が矢を放つが飛距離が足りず届かない。このまま園子だけを行かせても危険だ。

 

状況は不利になる一方だった。

 

『このままじゃ…!』

 

此方もそろそろ限界だった

 

『何か手を!あ…』

 

奈津雄はどうにか防ぎながら片手を二人に向ける。届かないのならば、届くとこまで。

 

 

奈津雄の手から伸びた流体霊力が二人に巻き付く。

 

「えっ!奈津雄君!?」「ゆいじー!?」

 

そのまま二人は上空高く放り投げられる。

 

「飛んで行けぇーッ!!!!」

 

「きゃあああああっ!?」

 

狙い通り二人は攻撃可能高度まで飛んで行く。

 

「その高さならやれる筈だ!二人共!!」

 

「「はあぁぁぁぁっ!!!!」」

 

須美の連続射撃が今度こそカプリコーンを捉え体制を崩させる。そこに園子が槍の一閃が決まる。

 

カプリコーンの胴が泣き別れになった所で鎮花の儀が始まった。

 

神樹も連携に参加してくれたのだろうか。防御から解放された奈津雄はそんな事をぼんやりと考えながら光に包まれた。

 

-------

 

気が付くと四人は大橋公園内の芝生の上に倒れていた。

 

「銀、銀…生きてるか?」

 

「おー…。奈津雄…生きてる…よ。」

 

「須美と園子は…?」

 

「だ、大丈夫…」「私も~…」

 

「ヤバかったな、今回。」

 

「私達、まだまだだった…!」

 

「わっしー…。」

 

「あんなに…、練習したのに!上手く行ったのに!!」

 

須美の頬に涙が伝う。

 

「す、須美!?おい泣くなよ…」

 

突然泣き出した須美に銀は疲れも忘れて大慌てだ。

 

「だって、だって…!!」

 

「…確かに、今回は辛勝だった。」

 

「でも須美は経験を積めただろ?須美だけじゃない、銀も園子も勿論俺もだ。」

 

「奈津雄君…」

 

「この経験は次に活かせる。」

 

「活かす為に、また訓練しようぜ。もう泣くなよ」

 

「…。」

 

「…うん、わかった。」

 

「先生に訓練お願いしないとだね~。」

 

「あー…またあの厳しいやつ?」

 

「もう銀?しっかりやるのよ!」

 

「須美さんや…泣き止むの早くない?」

 

「奈津雄君のおかげでふっきれたわ!次こそやってみせる!!」

 

「お~!」「は~い…」

 

四人の連携戦法はこれからだ。より連度を高めれば安芸先生が言っていた事も実現できるかもしれない。

 

『1+1+1+1を4ではなく10に、か。』

 

 

「やってみるさ」

 

 

 

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