その晩、奈津雄は夢を見ていた。
この時代に来て初めて来た神樹からの業務連絡…もとい御役目の知らせだ。
「またね!」
地に伏して動けない2人の少女に赤い服姿の傷だらけの少女が笑顔で手を振る。
『銀と…倒れてるのは須美と園子か。』
後方には巨大なバーテックスが3体。
少女は二振りの大斧を手に1人で立ち向かって行った。
そこで場面が切り替わる。戦いの結果は解らず終いだった。
広いホール、喪服を着た大人や子供が集まっている。
『葬儀、一体誰…の!?』
棺の中を覗き込んだ奈津雄は戦慄する。中に横たわっていたのは…
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「がっ!はぁっ…はぁっ…!!」
棺の中にいた人物、それを見た奈津雄は飛び起きていた。
神樹からのメッセージは嫌と言う程理解出来た。次に起こる勇者の危機、その対象は。
「銀…!」
冷たい汗が奈津雄の頬を伝う。
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「私の夢はね、歴史学者さんになる事なのよ」
翌日の昼休み、黒板にやたらと上手く描かれた旧日本軍所属空母のイラストを前に須美は語っていた。
「園っちと銀は?」
「私は小説家さんかな~。サイトに投稿してるし…ミノさんは?」
「アタシ?えっと、えへへ…」
「なあに銀、教えなさいよ。」
「アタシはさ…お嫁さん、かな。なんて」
「…ッ!?」
側で聞いていた奈津雄はビクリとする。
お嫁さん
無数の星屑に襲われた式場
喰われる参列者
お嫁さんとして幸せな人生を送るはずだった妹
それを遂げられなかった最期
助けられなかった無力な自分
西暦時代、若葉達と過ごした時には思い出す事もほぼ無かった記憶が強く、鮮明に蘇る。
「ゆいじ~?」
「奈津雄君、どうしたの?顔が真っ青よ」
「奈津雄…まさかお前、アタシにお嫁さんは似合わないとか思ったんじゃないだろうな…」
銀が迫って来る。
「ち、違う!そうじゃない!!」
「じゃあ今の反応は何なのさ!ビクッ!って。」
「…いたんだよ」
「え?」
「昔いたんだ。お嫁さんになりたくてもなれなかった娘がさ。」
「銀の夢は素敵だと思う。」
「叶うと、いいな。」
これ以上気取られたくなくて、無理矢理笑顔を作って言う。
「お、おぅ…?」
言い終ると奈津雄は教室から出て行った。
「あぁっ!クソッ!!」
誰もいない廊下の隅で奈津雄は頭を壁に打ち付ける。
憎しみと怒りが収まらない。
『銀…お嫁さんになりたいのか…』
彼女と妹の姿がダブる。
神樹からのメッセージで次の危機に直面する勇者は銀。
その結末は、彼女の死。
お嫁さんは最高に幸せでならなければいけない。
生前それを果たせないまま終わった妹を見たからこそ
「今度は、必ず…!」
奈津雄は戦う意思を強く持つのだった。
「ゆいじ~今度のお休み空いてる~?」
放課後、帰ろうとした奈津雄に話し掛けて来たのはサンチョを抱いた園子だった。
銀は下級生の子達に引き連れれて校庭へ、須美は委員会の仕事に駆り出され教室にいるのは二人だけだった。
「いいぞ。じゃあ須美や銀も…」
「二人だけでだよ」
奈津雄の声を遮る様に彼女は言った。
奈津雄は訝しむ。4人ではなく2人だけで?
「やだな~そんな顔しないでよ~。」
「あ、あぁ…悪い。それで、二人でどうするんだ?」
「あのね~私の家に来て欲しいな~って。」
「園子の?」
「うん。確かめたい事があるんよ~。」
「確かめたいって「おー!奈津雄、園子も!まだ残ってたのか!」
「一緒に帰りましょう。」
各々の用事を済ませた銀と須美が教室に帰って来た。
「…行こうかゆいじー。約束、忘れないでね~」
「解った…。」
遮られる形になったが次の休みは乃木家に行く事になってしまった。
園子の「確かめたい事」、これは何を意味するのだろうか。