「ヘーイ!ゆいじー!!」
「…。」
園子と約束した休日、奈津雄の家の前にはとんでもなくデカい高級車が停車していた。
後部座席の窓からは私服姿にサングラスをかけた園子がこちらにサムズアップしている。
今回の約束に関して奈津雄の方から乃木家に出向くつもりだったのだが、園子から迎えを寄越すと言われたのだ。
「派手な出迎えだな」
乗車した奈津雄は言う。
「驚いたでしょ~?」
「…それで、今日は何処へ行くつもりなんだ?」
「あ~それはね~」
一呼吸置いて彼女は言った。
「内緒!」
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「ほらほらゆいじー!こっちー!!」
「や、ちょっと、そんな引っ張っるなって…!!」
奈津雄が園子に連れて来られたのは市内の山に作られた自然公園だった。
ここは太古の遺跡が発掘された場所であり、園内には出土した調度品の形を模した遊具が置いてある。
「次はあれやろう~!」
園子は大はしゃぎで園内のアスレチックに挑戦して行く。
普段ぽやぽやした感じのとこしか見たことが無かった彼女が、こんなはつらつに走り回る面もあったのかと驚いていた。
奈津雄と園子は一通りアスレチックを遊び通して園内のバーベキューが出来る場所に来ていた。
調理台を見ると既に食材と調理器具が運びこまれている。おそらく乃木家の使用人達が持って来たのだろう。
「今日は私がゆいじーに料理を振る舞っちゃうぞ~!」
「え、園子料理出来るの?」
「勿論!こないだわっしーとミノさんに習ったんだ~」
えっへんと園子は自信気に胸を張る。
「何か手伝おうか?」
「ん~?大丈夫だよ、ゆいじーは座ってて~。今日は私がゆいじーに作ってあげたいの。」
「そう、か。」
奈津雄は調理場から離れてベンチに腰掛ける。
調理場を柔らかい風が吹き抜けて行く。
「…。」
また生前の自分の最期を思い出しかけて頭を振る。
良くないな。園子がせっかく誘ってくれたのに、自分がこんな暗い雰囲気を出してしまっては。
気持ちを切り替えないと…と考えてるとこに鼻をつくいい匂いがして来た。
「ゆいじー、できたよ~!」
園子が料理を運んで来た。作ってくれたのは焼きそばだった。
「さぁ食べよっか!」
「頂きます!」
「どうぞ~!」
焼きそばを口に運ぶ
「…こりゃ美味い。凄いじゃないか」
「本当!?えへへ~…」
園子は照れながら笑う。
「本当だよ。何かさ、久々だな人の手料理食べるのって」
「そうなの?」
「ああ、俺って家に独りだけだからさ。こんな風に料理作って貰った事無かった」
「…そうなんだ。」
「なぁ園子」
「なあに?」
「よかったらさ、また作ってくれないか?俺、園子の料理気に入った。」
「…!、うん!!」
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「わぁ~!、綺麗だね~!」
「本当だな…」
食事を終えた二人は園内の展望台に来ていた。
目の前には晴れ渡った空の下、街と綺麗な海が広がりその遥か遠くには白い植物の根が張り巡らされた壁が見える。
そうして二人、暫くゆっくりと景色を眺めていた。
静かな、穏やかな時間が過ぎて行く。
少しだが自分の心の蟠りが解けた様な気がした。
「ねぇ、ゆいじー。」
「ん?」
「今日楽しかった?」
「ああ、勿論。園子の料理も美味かったしな」
「ありがとう。あのね、今日ゆいじーを誘ったのはもう1つ理由があるの。」
園子の口調からいつもの感じが消えている。
何だ?もう1つの理由って…
「これ、読んでみて」
園子は鞄から一冊の古びた本を渡して来た。
受け取った奈津雄は本の表紙を見て固まる
「これ、って…」
『勇者御記 結嶋奈津雄』
表紙にはそう書かれていた。
「この本ね、私の家の倉から見付けたんだ。私の御先祖様の持ち物なんだけど。」
奈津雄は表紙を捲る。
最初のページには古い写真が貼り付けられていた。
覚えている。西暦の戦いを終らせた後に丸亀城の桜の下で花見をした時に皆で撮った物だ。
「そこに写ってるの、ゆいじーだよね?、本に書かれてるのも、ゆいじーの事だよね?」
「…。」
「ねぇ、ゆいじー。」
「ゆいじーは一体、何処からやって来たの?」