「ゆいじーは一体、何処からやって来たの?」
どこまでも澄んだブラウンの瞳が奈津雄を見つめている。嘘はつけそうに無いと本能で悟る。
「それ、は」
「うん。」
言葉に詰まりながら答える。自分の素性を明かしたとして、果たして彼女は信じてくれるのだろうか?
自分が何で、何処から来たのか、端から聞いたら荒唐無稽が過ぎる、この自分の素性を。
「ゆいじー?」
「言いたくない事なの?それとも私じゃお話したくないとか?」
園子は言う。苦笑混じりに、だがその表情は何処か寂しげだった。
自分が言い淀んでるのを見て勘違いをさせてしまったようだ。これはマズい!
「ち、違う!そうじゃないんだ…。えーとその、園子が信用出来ないとかそういうのじゃなくて」
奈津雄は慌てて返す。別に園子を傷付ける気は無いのだ。
「何て言ったら良いんだろうな。正直、自分でもどうやって説明したら良いのか解らないんだよ。」
「園子は何でそんな事知りたいんだ?」
「ゆいじーと一緒に過ごしててどんどん気になったって言うのが理由の一つなんだけど、うーん…なんだろう、なんか、こう胸の辺りがモヤモヤしたの?」
「モヤモヤ?」
どういう事だろうか。園子は続ける。
「私ね、周りから変わってる子だと思われてるみたいであんまり仲良くしてくれる、友達って呼べる人がいなかったんだ。」
以前、須美達から聞いた事があった。勇者に選ばれる前の園子はクラスの中でどことなく浮いていたと。
「だけど、勇者に選ばれてそんな私にもわっしーとミノさんって大切な友達になってくれて凄く嬉しかった。」
「二人の事もよく知ることができてね、そしたらそこにゆいじーが来てくれて、ゆいじーも私の事二人と同じ様に接してくれてすっごく嬉しかった。幸せだったんだよ。」
「けどね」
「この御記を家で見付けて読んで、そこに私の知らないゆいじーがいて、これを書いた人達が何だか幸せそうで…そうしたら胸の辺りがモヤモヤして来ちゃって」
「…ああそうか、何か判ったかも。」
どこか府に落ちた表情で園子は続ける。
「私、嫉妬しちゃってるんだろうね。」
「変、かな?」
怖がる様な、不安な様な表情で園子は奈津雄に問い掛ける。
「いや、」
「人として自然な感情だと思う、それは。」
「本当?」
「本当さ。」
「…。」
大きく息を吸い込む。話そう。ここまで想ってくれているのに何もしないのはよくない、園子をこのまま不安がらせるのも、またよくない。
「ゆいじー?」
「話すよ園子。俺が何処から来たのか、ちゃんと話す。」
「…!うん!!」
「それじゃあ…」
そこのベンチにでも座って話すか。と続け様とした矢先、世界が静止した。
「ゆいじー、これって。」
「間が悪いよな…、これからって時なのに。」
奈津雄は園子に向かって手を差し伸べる。
「行こう園子。俺の話は帰ったらゆっくり話す。」
「約束だよ?」
園子が奈津雄の手をとりながら言う。
「解った、その時は必ず。」
樹海化が始まる。2人は広がる光へと包まれて行った。