刻渡りの勇者   作:嶽山

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西暦編 4.与えられた力は

「うわ、出やがった!!」

 

球子が叫ぶ。

 

奈津雄達7人の周りには無数のバーテックスが包囲網を形成しようとしていた。

 

「奈津雄!済まないがひなたを頼む!」

 

刀を持った若葉が叫ぶ。

 

「頼むって…え、あれと戦う気か?生身で!?」

 

「いいえ、奈津雄さん違います。よく見ていて下さい」

 

慌てる奈津雄にひなたが静かに言う。

 

何故か若葉達はスマホを取り出していた。何かのアプリを立ち上げタップする。

 

「あれが…」

 

次の瞬間、スマホの画面から光の花びら吹き出し六人の少女を包み込む

 

「あれこそが…!」

 

光が収まって行く。

 

「バーテックスから人類を守る…!」

 

そこには華を象った和装の装束を身に付けた六人の姿があった。

 

「勇者の!」

 

「姿です!!!!」

 

「なんだありゃ…」

 

困惑しかなかった。

各々武器を持っていたのもそうだが、スマホで変身…?

 

「え、あれが話してた勇者なのか?」

 

「はい!」

 

「…美少女戦士じゃなくて?」

 

「よく解りませんがその言葉、若葉ちゃんにはピッタリですね!」

 

「はぁ…」

 

 

 

「行くぞ!!」

 

若葉の一声と共に全員がバーテックスに躍りかかる。

 

千景の鎌が

 

若葉の刀が

 

球子の回転する盾が

 

杏のボウガンが

 

そして籠手を嵌めた友奈の拳が

 

取り囲むバーテックスを粉砕していく。

 

奈津雄のいた世界の人類が一切敵わなかったバーテックス。

 

これが目の前で紙細工の様に倒されてく様は圧巻だった。

 

こんな力を持った者達がいてくれたら奈津雄の世界は、奈津雄自身は、もう少し長生きできたのではないだろうか。

 

目の前の光景を見ながら奈津雄は何処か複雑な感情を覚えていた。

 

「…ッ!しまった!!」

 

若葉の声、見ると勇者の攻撃を掻い潜った一体のバーテックスがひなたと奈津雄に迫って来る。

 

「う、おぁぁぁぁぁっ!!!?」

 

「きゃあっ!?」

 

奈津雄は咄嗟にひなたを抱えて飛び退さる。

 

またあれに喰われるのはゴメンだ。

 

「このっ!」

 

大きな瓦礫の影に飛び込んでやり過ごす。

 

「数がどんどん増えてやがる…」

 

「はい、どうやら私達をここで仕止めたい様に思えますね。あ、あの…それより…」

 

「え?」

 

「下ろして、頂けませんか…?」

 

咄嗟の行動で気付いて無かったが奈津雄はひなたをお姫様抱っこする形で退避していたのだ。

 

「すいません」

 

「いえ…」

 

地面に下ろしたひなたの頬は少し赤みを帯びてる様に見えた。

 

「これ、どうすりゃいいんだ」

 

勇者六人がかりでも増えるバーテックスの殲滅は難しそうだ

 

「一つだけ、打開できる方法があるかもしれません」

 

「方法って?」

 

「奈津雄さん、あなたの事を神託で受けた際に新たな戦力になると伝えられました」

 

「あなたにも、若葉ちゃん達と同じ力があるはずです」

 

「いやそうは言うけど、俺はあんな…武器とか持ってないぞ?」

 

変身?に使っていた変なスマホも当然無い。

 

だがしかし…と、思い返す。あの時確かに神樹は言った。

 

戦う力を与える。確かに言っていた。

 

「―…」

 

何かの予感がして上着のポケットを探る。

 

固い感触が2つある。

 

「これって…」

 

ポケットから出てきたのは若葉達のスマホとは違う、

 

蓋を開閉させて使用する手帳大のパッド型端末と花を模した桜色のメダルだった。

 

「若葉ちゃん達のと随分違いますね」

 

「これを使えばあいつらと戦えるのか?」

 

「解りません…ですが試してみる価値はあるかと」

 

「そっか、なら…」

 

ここで迷ってる暇もない。

 

今はこれに賭けるしかないのだ。

 

奈津雄は瓦礫の影から飛び出しながら端末の横にあるスイッチを押す。

 

蓋が開くと同時に端末の画面が電灯、大樹のマークが映し出された。

 

そしてその画面の下、何かを填める窪みがある。

 

「これを填めろって事か…」

 

端末と一緒に出て来た花のメダルを填め込んだ。

 

瞬間、画面から眩い光と共に光の花びらが吹き出して奈津雄を包み込んだ

 

これで正解だったようだ。

 

光が収束したそこには、蒼黒いボディースーツに両袖に銀色の籠手、黒いタキシードの様な上着を羽織った奈津雄の姿があった。

 

左肩の後ろには長刀が固定されている。

 

「なんか地味ですね…」

 

ぽつりとひなたが言う。

 

「…踊りながら歌って出て来た方が良かったか?」

 

「い、いえ…奈津雄さん、とにかく今は…」

 

「解ってる。周りのを倒すぞ」

 

「お願いします!」

 

左肩から長刀を抜き放つ。不思議と力が沸き上がるのを感じる。

 

目の前のに迫るバーテックスに向かって、奈津雄は刀を振り下ろす。

 

二度と戻らない家族を、幸せな時を、無慈悲に奪った敵へ借りを返す時が漸く訪れたのだった。

 

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あの時は本当に驚いたんですよ

 

だって勇者は神樹様に選ばれた無垢な少女にしかなれないはずなのに

 

彼は若葉ちゃん達みたいに変身してしまったんです

 

そうでうすね…

 

彼には失礼かもしれませんけど、勇者に変身した彼の姿は

 

どこか地味でした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




奈津雄の勇者への変身アイテムですが、若葉達が大社が開発した物に対してこちらは彼を呼び出した土地神及び神樹の用意した物となっています。

同じ力を与えるアイテムでも開発系統の違いからこの様な形になっています。

端末と一緒に出て来たメダルはゆゆゆいお馴染みの勇者メダルと同じ形になります。
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