刻渡りの勇者   作:嶽山

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西暦編 6.丸亀城での訓練

浜名湖付近で若葉達に合流した奈津雄が四国入りをして数日が経っていた。

 

食堂に置かれた携帯テレビからは諏訪の無事と他の地域で勇者達が保護した生存者の報告が流れている。

 

「前半のアレ、嘘じゃないか。諏訪は壊滅したって言ってたろ?」

 

「人々の士気を下げない為に情報操作してるんですね…戦争なんかではよくある事なんでしょうけど…」

 

「あぁ…やり方としては、間違ってはないのだろうがな…」

 

奈津雄の質問に杏と若葉は苦々しげに答えた。

 

「…。」

 

何時の時代も逼迫した状況下で取る行動は変わらないと言う事か。

 

奈津雄はうどんをすすりながら思う。

 

今は全員揃っての食事中。

 

奈津雄はフライの盛り合わせを頼んだのだが全員にその場で叱られてしまい、強制的にうどんを食べさせられていた。

 

―――――――

 

ここ数日は実に慌ただしかった。

 

香川に到着した奈津雄は先ずひなたと共に大社に連れて行かれ管轄の勇者に登録された。

 

 

次に神官達との質疑応答、自身に起こった全てを話した。

 

正直内容があまりにも荒唐無稽で信用に足らないと感じていたが当の神官達は、「神樹様のなさった事ならば」

 

と、あっさり信用されてしまった。

 

事情聴取には烏丸久美子と名乗る巫女が参加しこの人が一番多く質問をして来ていた。

 

奈津雄の事情が「面白いから」と言う理由らしい。

 

 

「聞きそびれてましたけど平行世界…。神樹様も勇者も現れないなんて事が本当にあるんですね」

 

大社からの帰り道、同行したひなたは未だ驚きを押さえられない様だった。

 

「まぁ…な。…おかげで大変な目にあった。」

 

「一度死んで、また生き返らせられて」

 

「神様ってさ、本当に解らないよ」

 

「けどそのおかげで私達は出会う事が出来ました。これからの戦い、きっと奈津雄さんが来る前よりも良くなるはずです」

 

「だと良いけどな…」

 

とにかく諸々の事情は明かせた。

 

奈津雄の件は説明が困難な為、新たな勇者登場との一般大衆へ向けた公開は無しと言う事に決定した。

 

 

そして奈津雄の持つ勇者システム。

 

これに関しては若葉達の持つ大社製の物と造りが違う事以外に解析は出来なかったそうだ。

 

ただ勇者システムに関して解析班との会話から確証を得る事が出来た事がある。

 

それは、勇者システムの適合者が10代の人間である事。

 

ずっと気になっていた奈津雄の御姿の設定年齢の正体、これはシステムへの適合可能にする為を意味していたのだ。

 

 

大社への報告が完了し、奈津雄もその日から丸亀城暮らしとなった。

 

――――――――

 

「ご馳走さま」

 

食事を終え、席を立つ。今からは勇者としての訓練の時間だ。

 

奈津雄は先日の力任せな奈津雄の戦いを見た若葉の提案で彼女達による徹底的な戦闘訓練を受ける事となった。

 

所持する武器の関係から剣術と居合いを若葉が

 

格闘訓練には友奈が

 

集団戦の訓練には千景・球子・杏が

 

それぞれ割り当てられ訓練を行った。

 

前の地球からここまで録なスポーツをした事がなかった為に訓練は過酷を極めた。

 

その中でも特に友奈との訓練における彼女の説明の大半が擬音で解らない。

 

「ズカーン」とか「ズバババッ」とか言われても無茶がある。

 

ただこういう場合は話を理解するより身体に覚えさせた方が早い。

 

ボロボロになりながら奈津雄はとにかく訓練に挑むのだった。

 

「つ、疲れた…」

 

寄宿舎に帰って来た奈津雄はベッドに倒れ込む。

 

「訓練であれって事はこの先の実戦はもっとヤバいって事だよな…」

 

これから本当に付いて行けるだろうか。

 

不安に苛まれながら、いつしか奈津雄は深い眠りに落ちていた。

 

 

 

やけに鮮明な夢を見た。

 

目の前で繰り広げられる光景…

 

ボロボロの杏を自らの盾で庇う球子だ。

 

盾には鋭い針が幾度もなく突き付けられる。

 

やがて盾が破壊され鋭い針が球子と杏の身体を突き抜ける

 

二人は倒れ、手を取り合う様に息絶えた。

 

 

そこで場面が切り替わる。

 

友奈だ。血塗れになりながら球子と杏を倒したバーテックスと思われる敵を殴り付けている。

やがて敵が砕け散り、血塗れで地に倒れる友奈。

 

 

更に場面は切り替わる。

 

憎しみに染まった形相で鎌を振るう千景とそれを防ぐ若葉の姿だった。

 

理由は解らない、千景は若葉を殺そうとしているようだった。

 

そこでまた場面が切り替わる

 

千景は何故か勇者システムが解除されていた。それを若葉が守りながら戦っている。

 

だが多勢に無勢、若葉の背後から迫る星屑、だがそれを守られていた千景が庇い片腕を喰われる

 

―鮮血が迸る。

 

 

もういい、なんだこれは。何の理由があってこんな…

 

 

苦痛に耐えられない中、更に場面は切り替わった。

 

若葉だ。若葉がたった一人、炎を身に纏いバーテックスに突撃していく。

 

 

 

「…ッッ!!」

 

目が覚めた。寝汗が酷いし身体もダルい。

 

「…。」

 

今の夢に何か意味があるのかと考え込んで1つの答えに行き当たる。

 

神樹が奈津雄に課した二つの使命だ。

 

1つ、勇者達の戦列に加わる事

 

1つ、勇者達が直面する危機を救う

 

勇者達が直面する危機、今見た夢が全て当て嵌まってしまう。

 

「…じゃあ今のは…」

 

「これから若葉達に起こる危機…」

 

あれが実際に起ころうとしている。それを奈津雄は防がないといけない。

 

「そうか、そうかよ…。これを、どうにかしろって事、ね…」

 

あぁ、神様の頼み事も楽じゃないな。

 

------------------

 

あの時は驚きの連続だったと今でも覚えています

 

平衡世界とか、神樹様が魂を呼び寄せたとか

 

彼の素性は信じられない事ばかりでしたから

 

 

 

 

 

 

 

 




年内の投稿はこれで最後です。
次回スコーピオン戦。奈津雄、初の樹海入りになります…が各キャラ毎との絡みが何も書けてないので先ずは其方からに。
絆は深めなきゃいけませんね
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