奈津雄さん、私のお買い物に付き合って貰っても良いですか?」
杏から声をかけられたのは奈津雄が食堂で朝食を済ませた直後だった。
「ん?いいぞ街には行った事なかったし…」
「なんだぁ~杏!タマに内緒で奈津雄と出掛けるのか!?」
「…。」
並ぶ二人に昨晩の夢がダブる。
胸を貫かれ、手を取り合って息を引き取る姿だ
息が苦しい。これはマズいな…
「あれ、大丈夫か奈津雄?奈津雄~?」
「…奈津雄さん?」
「ん!?いや何でも無いよ。」
慌て取り繕う。
「何を話してるんだ?」
「どうしたの?」
若葉に友奈、千景もやって来る。
彼女達に昨日の夢の光景が重なる。
「ちょっと昨日の疲れが残ってるだけ。大丈夫だよ」
「そうか…何かあったらちゃんと話すんだぞ?」
「解ってる。じゃあ出掛ける時になったら言ってくれよ」
「はい!」
奈津雄は食堂を出た。どうにか耐えたが胸の苦しさは消えていない。
「…。」
そんな奈津雄の様子を、ひなただけは静かに見ていた。
――――――
数時間後、奈津雄達は市内の大型ショッピングモールに来ていた。
奈津雄自身、これと言って買い物も無いので杏の本の買い出しを手伝う。
若葉はひなたと、球子はアウトドアショップに、友奈と千景はゲームセンターにそれぞれ別れて行った。
「すいません…こんなになっちゃって」
「気にしないで。これくらい…わっと、平気だから。
」
杏が申し無さげに言う。結構な量の書籍を買い込んだのだ。
「これで買い物は全部?」
「はい。奈津雄さんは何か用事とか無いんですか?」
「いんや。自分はこれといって無いよ。俺は皆と一緒に遊びに行きたかっただけだしな。」
「ふふ…そうなんですね。荷物も多いですし集合場所のフードコートに行きましょうか。」
まだ集合時間には大分時間があったが二人はフードコートへ向かった。
席に着いて荷物を下ろすと杏は「私はタマっち先輩のとこに行ってきますね。」と言って離れて行った。
さて時間が余ってしまったがどうするか…千景達とゲームをしたいが杏の荷物を見てなきゃだしな。
「奈津雄さん」
考え込む奈津雄の後ろから声がかかる。ひなただった。
「あれ、若葉と一緒じゃないのか?」
「はい、若葉ちゃんはちょっと別行動で後から合流しますよ」
「そうか….。」
「杏さんたら、こんなに本を買ったんですね。運ぶの大変だったでしょう?」
「まぁね。杏が読者家なのは知ってたけどまさかこんな買うとは…。」
二人して苦笑する。
「なぁ…ひなた、もしかして何か話があるんじゃないのか?」
単刀直入に奈津雄から切り出す。
いつも若葉とワンセットの様なひなただけが一人でここに来た時から妙な違和感を覚えていたのだ。
「察しが良いですね…。奈津雄さん、何か隠してませんか?」
「隠す?」
「今朝の食堂での様子、変でしたよ。若葉ちゃん達を見て顔が真っ青でした。」
「…。」
「大社の本部で奈津雄さんが話された内容、私も把握しています。」
「奈津雄さんはここに来る前に神樹様とお話になられたんですよね?」
「話した、というよりもイメージが頭に流れ込んだ感じだったけど…。」
「私達巫女が受ける神託に近いですね。確か、新しい身体と戦う力を与えるから勇者の戦列に加わるって内容でしたか」
「そうだな。…そうだ」
「…まだ、何か隠してませんか?」
「…。」
上手い答えが見付からない。
「奈津雄さん、悩んだら相談。ですよ?ここは私を信じて、話してみませんか」
大社の聴取で話さなかった内容、勇者の直面する危機を救う事、そしてその起こりうる危機を鮮明に見せた夢。
正直一人でなんとかするには無理がある様に思えてた。
ひなたを信じて、頼ってみよう。
「…大社の聴取で話さなかった事が一つある」
「…!それは?」
「勇者、若葉達がこの先直面する危機を救う事だ」
「危機って…その具体的にはどのような…」
「昨晩それを見せられたよ…神託ってやつなのかな。」
そこから奈津雄は夢で見せられた全てを話した。悲しくて、苦しい内容を。
「成る程…朝様子が変だったのはそれが原因だったんですね。」
「信じて、くれるのか…?」
「勿論!奈津雄さんは最初に来た時神樹様とお話になられたんですからきっとその夢も神樹様からのメッセージの様なもののはず。」
「乗り越えましょう。私も出来る限りの力を貸しますよ!」
「…!あぁ…!!」
胸の苦しみが収まって行く。立ち向かって行けそうな、そんな気がした。
この先はまだまだ未知数だ。でもやるんだ。
ここからは一人じゃないのだから。
あんな未来、起こってたまるか
「なぁなぁ、タマ達いつになったら出て良いんだ?」
「タマっち先輩落ち着いて」
「何話しててるんだろうね?」
「…さぁ」
「何、ひなたの事だ。心配はいらんさ」
奈津雄とひなたの会話にすっかり出て行きそびれた五人は柱の影から出られず困っているのであった
-----------------
その日の彼は様子が変でした。
それで、皆で出かけた時に話を聞いて彼の抱えるお役目の内容を知る事となったんです
あの時は少し強引だったかもしれませんね
でもあの日に彼から聞き出せたから、今の私達があるのかもしれません。