異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第99話「孤児院パーティーの凱旋と伝説のむにゃむにゃ ~その2~」

 

 木造二階建ての孤児院の建物は古そうで、修繕された箇所がいくつもあります。お金を掛けた修繕ではありませんが、それでもちゃんと職人が直したもので、冬に隙間風が入るようなことはなさそうです。苦しい経営と聞いていたので心配してましたが、少し安心しました。

 中は掃除がよく行き届いていて清潔そうです。

 

 食堂だというところに案内されました。食堂というか、何にでも使われれる、一番大きな部屋のようです。

 

「それでは出しますね」

 

 私は空中に四角を描いてストレージを開けました。こちらには保冷用にマヤさんの青い氷が入れてあるので、冷気と白いモヤが流れ出てきます。

 

「雲が出てきた!」

「涼しいよ!」

 

 小さい子達はモヤを手で掴もうと大喜びです。

 

「パーティー全体を率いたSランクのレオ様が孤児院にと、ラトロ・アトレイタ、タイガー・スパイダーの脚、それぞれ1匹分を売らずに残してくれました」

「まあなんて慈悲深き方。Sランクともなると人格も違うのですね」

 

 そうでしょうか。大きなイレムさんという形容が一番しっくりするのですが。

 

「ちなみにレオ兄様というのは、ワリナ王国の王子様だわね」

 

 ニーシャさんの一言に、再び雷に撃たれたような表情をされる院長先生と職員の方々。

 

「ななななんですってぇ!?」

「し、失礼なことを……」

 

 しなかったろうねと言う前に、皆がばらします。

 

「イレムはレオ兄ちゃんにずっと怒られっぱなしだったよな」

「うん。怒られちゃあしょっちゅうアイアンクローくらってた」

 

 当のイレムさんは「俺はずっといい子にしてたぞ」などとしらを切りました。

 このガキ、いけしゃあしゃあと。

 再び死相を浮かべた院長先生が、死をもってお詫びをとか言うので、慌てて止めます。

 

 さてクモの脚ですが、イレムさんが1本を持っているので、残り15本をストレージから出すと、ニーシャさん達がテーブルに並べました。

 

「「「ええええー!?」」」

「「「こんなにー!?」」」

「ラトロ・アトレイタなんて高級な物、どうやって食べたらいいの……?」

 

 職員の女性の当惑ぶりが声で分かります。

 

「焼けばいいんだよ」

「タイガー・スパイダーと同じでよかったよね」

「焼きすぎるとダメなんだぞ。タイガー・スパイダーは焦げるくらい焼いても平気だけど、ラトロ・アトレイタは固くなっちゃうんだ」

 

 高級食材を何度も食べてきた孤児が職員にアドバイスするという、らしからぬ光景が繰り広げられます。

 さあ次です。これも驚かれるに違いありません。

 

「これはラースさんとニコさんが獲ったジャイアント・エルクラビットです」

 

 巨大ウサギは解体済みなので、部位ごとに切り分けられた肉の塊を出します。大型の鹿くらいの大きさがあるので、テーブルの上がいっぱいになりました。

 

「こ、こんなにたくさん! 保冷庫の空きはあるかい!? ああでも氷がないよ。たくさん頂いてもこのままじゃ腐らせてしまう」

 

 キッチンの床下には、地面を掘って大きな食糧保存庫が作ってありました。地中なので温度変化が少なく、そのままでも低温で保存ができるのです。さらに氷を入れるところがあり、生のものも保存期間を伸ばせるようになってます。

 

「ちょうど良い物があります」

 

 私は凍ったヤム・ラナトゥースを出しました。好評だったため、マヤさんが全部凍らせてしまったのです。そうしないと傷んでしまうというのもあったのですが、おかけで助かりました。

 野営地で皆に配ったので、大きなお芋も随分小さくなりましたが、それでもまだ一抱えはあります。

 

「これあたしが見つけたの!」

「レイヤが? 立派! 凄いじゃないか」

「そのヤム・ラナトゥースを凍らせてしまったのかい!?」

「こうやって食べるとすごく美味しいの。食べてみて」

 

 マヤさんのマイナス200度とかいう氷でガチガチに凍らせているので、包丁などでは切れません。なので金槌で叩いて砕きます。かけらとなったヤムを口に入れたとたん、女性職員は「何これ!?」と叫びました。分かります。私ももう普通に切っただけのものでは満足できない体になってしまいました。

 

「おいしいよ~」

「こんなの食べたことな~い」

 

 年少組の子達も手が止まりません。

 この孤児院の子達はヤバイのではないでしょうか。もう貧しい生活には耐えられないのではないかと心配です。

 

 さて、保冷剤はひとまず解決ですが、食糧保存庫はラビットのお肉で一杯になってしまいました。ヤム・ラナトゥースだっていつまでも凍ってはいません。

 

「この量のラビットのお肉をすぐには食べ切れないでしょうから、保存できるよう加工した方が良いでしょう」

「それは分かるのですが、干し肉にするくらいしか……」

「それでね、フィリア姉様がハムの作り方を教えてくれるんだって」

「はい。後日改めて参ります」

「そ、そんなことまでしてくださるのですか?」

「はい。ミリヤ流の香辛料を使ったレシピとなりますが、それで良ければお教えします」

「ああ……」

 

 院長先生は再び涙ぐみ、胸の前で手を組んで感謝の言葉を囁きます。

 ふふふふ、ミリヤの宣伝はバッチリです。

 

「それでは最後に、旅行で余った食材を処分させてください」

「処分? 捨てるのですか?」

「いいえ。お夕食のスープにしてしまえばいいと思います」

「そ、そんなことまでしていただかなくでも!」

「ああ、私はいらなくなった食材を置いていくだけ。作るのはニーシャさん達です」

「うふふ。院長先生、楽しみにしててだわね」

 

 ニーシャさんはそう言って腕まくりをしました。

 

 ニーシャさん達は旅行中私の料理を手伝うことによって、随分と料理の腕を上げました。その料理知識を使って、うさぎ肉のポトフを作ったのです。

 男の子も野菜を切ったり、お肉をさばいたりで活躍してもらいました。

 これまで孤児院で作ってた料理と違うのは、きちんとしたベーススープを作ることです。

 まず野菜の皮や切れ端を使ってブイヨンを作ります。そこにうさぎの骨、セロリ、ネギを入れて煮出し、アクを丁寧に取って旨みたっぷりのベーススープが出来上がります。これを塩で味を整えるだけでも十分美味しいのですが、お野菜と主役のお肉が入らねば完成とは言えません。

 お野菜は大きいままの方が、煮るのに時間は掛かりますが野菜の甘味、旨みが楽しめます。

 うさぎ肉は、ガーリック、塩、そして胡椒をまぶして、軽く焼いてからベーススープに入れ、ベイリーフを加えて煮込んでいきます。

 ニーシャさん達はこのレシピで覚えてしまいましたが、おそらく普段は高価な胡椒など入れられないでしょう。今ある分だけとなりますが、胡椒だけは私の、ミリヤの贈り物となります。

 早くいつでも胡椒を買えるくらい稼げるようになるといいですね。

 

 あとは肉がホロホロになるまでじっくり煮るだけとなったところで、マリエラ様が私を迎えにやってきました。

 

 

 

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