異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
第101話「マヤちゃん、またまたいらぬ箔を付ける」
草原を歩いていた4人の
「お、おい。あれってまさか!」
「な、なぜこんなところに! ここは領都のそばだぞ。魔境じゃないんだぞ!」
「でもあれは、間違いなく……」
あり得ないものはパーティーに向かって降下してきた。
「「「ワイバーン!」」」
それは飛龍種の一つ。大きな羽を持ち、空を飛ぶことができるドラゴン系統の魔物だった。
「足に何かぶら下がってないか!? 人のような何か……」
鷹のように鋭い爪を生やした太い指が、何かを掴んでぶら下げていた。そして地上近くでホバリングすると、それを放した。
ドドッと音を立ててそれが地上に落ちると、むくりと起き上がった。それは人型をしていた。だが人ではなかった。身長は2mを超える。上半身は人間とは大きく異なり、分厚く大きい。それに反し下半身は短く、体長の三分の一程しかないが、丸く太い。
「オ、オークだ!」
「いや、単なるオークじゃねえ」
「鎧を着て、武器を持ってるぞ!」
「オーク・ソルジャー!」
「逃げろ! こっちを向いたぞ!」
「退避! 林の方へ!」
一番後ろから今にもコケそうに足をもつれさせて追うメンバーの一人は、半べそをかきながら愚痴をこぼした。
「珍しく仕事する気になってメンバー募集に応募してみりゃあ、こ、こんな運の悪い依頼になっちまうなんて、俺はなんて不幸なんだ!」
見上げればオークを運んだワイバーンが、
と、その時。空があちこちでキラキラと光り出した。
「なんだ!? 空が光ってるぞ?」
「何か、降ってきてないか?」
空が光る度に、何かがパラパラと降り落ちる。
「砂? いや、これは……魔石の結晶?」
「おい、光があっちの林の方に集まってるぞ!」
まるで吸い寄せられるように、空の光は林の方へ向かって瞬く。それだけじゃない。集まってる方に雲のようなものができていった。雲は密度を増し、その色をだんだんと濃くしていく。薄紫から紫、そして雨雲のように黒くなり、どんどん縮んで地上近くに降りてくる。
雲が草原と林の境の辺りで小さな塊となった時、眩しいほどの閃光を発した。
「な、何が起こってるんだ!」
「うおっ、やべえ! 上を見ろ!」
その声に皆は一斉に上を見上げた。
そこには、上空で旋回していたはずのワイバーンが、羽の生えた背中を下にして落下してきていた。
「逃げろ!」
震えながら起き上がったワイバーンは、なぜこうなったのか驚いたような表情をしている。わなわなと起き上がって再び上空へ舞い上がろうと翼を羽ばたかせるが、体は浮かない。怒りの表情に変わると、首を回して険しい目で辺りを探リ始めた。その目が
「「「ひいいーっ!」」」
睨まれて悲鳴を上げる。半べそをかいていた
視線だけで射殺されそうな程に圧倒的な力の差。体中から冷や汗と言ってよいものかというような液体が吹き出す。
が、ワイバーンはすぐ目を逸し、別のものを探す。そして先ほど紫の雲が集まっていった方で止まり、睨み付けた。ぐるるると唸ると重々しく立ち上がり、そちらに向かって駆け出した。
「た、助かった」
「あそこに何かあるのか?」
ワイバーンが駆けていく先へ目をやると。
「あ、人影が見える! 子供? 女の子供ようだ!」
林と草原の境に、少女らしき人間が立っていた。
「逃げろーっ! ワイバーンが向かっているぞ!」
「林の中に逃げるんだー!」
ワイバーンは飛べないでいるが、小刻みに地を蹴ってそれを補い、あっという間に少女の前に到達する。そして長い首を一度持ち上げると、裂けた大口を開けて一気に噛みつきにいった。
「まずい!」
「食われるぞ!」
少女は成す術もなく鋭い牙に引き裂かれ、強靭な顎に砕かれる……
……
……ものと思われた
……
……が、
いきなりワイバーンの体が、首から上だけを残して、水色の四角いものに覆われた。
水色の四角いものは白い湯気を立てて、ワイバーンをその場に固定している。
一瞬何が起こったか分からぬワイバーン。
自身の体が水色の何かに覆われているのを驚愕の目で見つめ、急に苦悶の表情に変わって悲鳴を上げる。
体を強烈に締め上げられているかのように苦しそうなうめき声を出し、首を左右に激しく振る。が、ワイバーンの体は水色の四角いものに固められていて動かない。わなわなと地上に立つ少女を見下ろす。
その少女は身体からワイバーンを覆っているものと同じような水色のモヤを纏っていた。と思ったら、そのモヤは霧散するように消えた。
あの少女が青い四角いものを出したのか?
ワイバーンは少女を少しでも害しようと首のまだ動く部分を下へ向けた。
だが途端にその首は不自然な形で少女の目の前に落ちた。首の途中からスパッと切れて、落下したのだ。
「なっ!!」
「ええ!?」
オーク・ソルジャーもまた、それを見て足を止めた。何があったのか戸惑っていたが、ワイバーンの首が落ちてピクリとも動かなくなった事からようやく理解が及び、急に慌てだし、悲鳴と思しき吠え声を上げて林の奥へ逃げていった。
少女は腰が引けながらも、落ちたワイバーンの首を恐る恐る覗き込んでいる。ワイバーンの体を覆っていた水色の四角いものは、急にふっと消えて無くなり、今はワイバーンの体から白い煙だか湯気だかが出ている。周りの空気はひんやりと冷たい。
近付いた
その体は半分凍っていた。
一体どういうことだと訝しげに首をひねるが、とにかく横を通り抜けて少女の下へ駆け寄った。
「キミ、大丈夫か!」
声を掛けられた少女は、この辺には珍しい黒髪をしていた。顔を持ち上げると、少々、いやけっこう慌てた表情で声の主の方を見上げてきた。見つめる瞳の色も黒く、顔立ちもこの周辺の国の人とは全く違う。年齢的にはまだ子供の域にあると思われるが、よく見ればエキゾチックな顔立ちは不思議と蠱惑的で、彼ら民族の感覚でも心揺さぶられる少女であると言えた。
見ればその少女は
大きなポケットがたくさんついてる丈夫な上着に、太ももの辺りに大きなポケットの付いたズボン。現代の日本人であれば、労働者の味方『レイバーマン』のような店で売ってる服にそっくりだと思うだろう。
新しいデザインの格好。そしてこの辺にはない黒い髪と黒い瞳、凹凸の少ない幼い顔立ち。
さっき半べそをかいていた
「お前、マヤとかいう女
少女はあわあわした顔を少し落ち着かせて、記憶をたどるように自分の名を言った人を見る。
「あ、あなたはギルドのサロンで、いつも暇そうに食べたり飲んだりしているだけで、嫌味なことばっか言ってる
「うわああ、いいんだよそんなこたぁ! せっかく怪我してねーか心配して見に来てやったのに!」
「け、怪我? ぜんぜん大丈夫だけど。そ、そんなことより!」
ボブカットの黒髪をぶわっと広げて体を翻した少女は、再び血相を変えて聞いてきた。
「こ、こいつなに!?」
「こ、こいつか? ワイバーンだよ。飛行系龍種の」
「名前なんかいいから、ランク何!?」
「ランク? ワイバーンは龍種の中では下の方だが、それでもドラゴンの仲間だから、確かAランクだったと思うが」
「え、え、エ、Aー!?」
少女はニ、三歩後ずさると、雷に打たれたようになって膝を崩した。
「おい、この子供を知ってるのか?」
他の
「知ってるも何も、最近の領都周辺の大きなクエストじゃ、なにかと物議を醸すニューカマー
「17!? どう見ても12、3なんだが……」
「しーっ、しばかれるぞ!」
自分の悪口を言っているなと勘ぐって、じとっとこっちを見ている少女ことマヤ。嫌味な
「そ、それにしても流石はアンリミテッド・パーティーの資格保持者だ。まさかワイバーンまで瞬殺するとは。今日はどこのパーティーと来ているんだ?」
「アンリミテッド・パーティー!? そんなの持ってる奴、初めて聞いたぞ! この小さいのが!?」
「17歳というのは本当ってことか? 見かけによらずベテランなのだな」
周りの
マヤは涙目になって呟いた。
「ベテランなんかじゃないです。まだ
「1ヶ月!? 新人!?」
「それよりわたし、き、今日は一人、なんですけど……」
「おい、それじゃああんた、いまランクってもしかして……」
マヤは口元を引き攣らせながら答えた。
「エ、F……ランク」
「F!? FランクがAランク殺っちまっただと!?」
マヤを知っていた
「た、単独行動中? ヤ、ヤベェじゃん」
マヤと
「いやあああああああああーーーーーー!」
「「「えええええええええええーーーー!?」」」
大変ご無沙汰しております。
続きはずっと書いて消してとやっていたのですが、やっと纏まってきたので4章として出すことにしました。
これまでの章は見なくても支障ないくらいに書いてますので、もしよろしければここからでもお立ち寄りくださればと思います。