異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第107話「姫と護衛次女」

 

 わたしが低ランクの変態探検者(エクスプローラー)達をやっとのこと追いやって、受付近くの壁の下にうずくまって、永久Fランク、永久Fランクとブツブツ言って落ち込んでると、わたしの肩に、ポンと手が置かれた。

 

「おはよう、マヤさん。どうしたの?」

 

 顔を上げると、そこにはふわっとした栗色の髪を首の後ろで一つにまとめた、はっとするような美人の探検者(エクスプローラー)の女の人が覗き込んでいた。横にメイド服を着た女性を侍らせている。

 

「リエラさん、それにフィリアさん!」

 

 美人探検者(エクスプローラー)のリエラさんは誰もを惹きつける笑顔を、フィリアさんはメイドさんのきれいなお辞儀を返してきた。

 

「えっ。、リエラさん、まさかもしかして、討伐に参加するんですか?」

「もちろん! マヤさんが来るの待ってたんだから!」

 

 ほどよく熟れた胸を張って、闊達な雰囲気そのままに元気に答えるリエラさん。

 

「い、いいんですか?」

 

 と、ちらりとフィリアさんの方を見る。フィリアさんは口をプルプル震わせながら首を何度も横に振った。

 そりゃそうでしょうね。

 だってリエラさんの正体は、あのミリヤ皇国第一皇女のマリエラ姫だったりするのだから。

 

「よくミリヤ大使が許しましたねえ」

 

 リエラさんに小声で聞くと、

 

「大使館のわたしの部屋のベッドでは、身代わりの人形がすやすやと寝てるわ」

 

 何も悪びれることなく、お姫様は答えられた。

 

「ああ、帰ったらまた護衛侍女長(メイド長)に絞られる~」

 

 フィリアさんは頭を抱えている。どうやらまた黙って出てきたらしい。

 

 フィリアさんは護衛侍女(エスコートメイド)という特別な職業の人で、その名の通り重要人物の身の回りのお世話をしながら護衛をする人だ。名誉なお仕事に就いてると言いたいところだけど、自由闊達なマリエラ姫にぶんぶん振り回される役という方が適切かな。なぜマリエラ様を止めなかったのかと、帰ったら上の人に怒られるんでしょうね。

 

 一般民衆に知れ渡っている、清楚でお淑やかというマリエラ姫のイメージは、お姫様モードの時のものなのだ。置いておくだけで絵になるというのに、各国要人の前では、お飾りのお姫様ではないのよとしっかりした自分の意見を持ち、一本芯の通った強い意思、聡明な知性を見せる。

 それが一歩野山に出るとカチリとモードが切り替わって、魔物をばっさばさと切り倒し、毒ヘビに腕を差し出して噛ませるくらいの無茶も平気なぶっ飛びお転婆探検者(エクスプローラー)になる。探検者(エクスプローラー)のランクは最近昇格してBだ。

 

 ちなみにリエラさんの法力は、この近辺ではミリヤの人にしかない、ミリヤの特徴とも言える『解毒』というもの。そしてこれは公にされてないそうなのだけど、リエラさんの場合は『瞬間解毒』という、文字通りの完全なる毒無効化体質なのだ。『瞬間解毒』は皇室の人にしか現れてないのだとか。

 

 実際、毒ヘビに噛まれてもなんともなかった。毒には平気だけど、腕に穴が開いて血をダラダラ流して凄い痛そうだったけど。

 一国のお姫様が血をダラダラ。

 ぶっ飛び具合、分かってもらえるかしら。

 

「魔族がヘキサリネに入って何を企んでるのか、とっ捕まえて聞き出してやるわ」

 

 一応周りに聞こえないよう声を小さくして、片手で頑張るポーズをとったリエラさん。

 このスタンピードが、魔族が裏で手を引いてるせいだというのは一部の人しか知らない。リエラさんは探検者(エクスプローラー)としてではなく、ミリヤ皇国第一皇女様の立場で情報を得ていたのだろう。

 だとしてもだよ。

 

「それはリエラさんのような立場の人がやる事じゃないと思うんですけど?」

「そ、そうです。マヤさんの言う通りです。ここは専門部署に命令して任せましょうよ~。いえ、そもそもヘキサリネに任せましょう~」

 

 マリエラ姫専任護衛侍女(エスコートメイド)は情報に接する立場も高いようで、諸々はフィリアさんも把握されてるようだ。

 涙目になって訴えるフィリアさんだけど、このお姫様は現場主義者だ。

 

「椅子に座って報告聞かされても、現場に流れてる鮮烈な緊張感とか危機感が感じ取れないのよねぇ。私は肌で感じたいのよ」

「それなら調べる人を鍛えて質を上げましょうよー」

「やってるじゃない」

 

 とリエラさんは目の前にいるメイドさんを指差した。

 

「ええ!? 私は護衛侍女で、諜報員じゃないですぅ!」

「出先ではどんな事が起こるか分からないのよ? 隣の部屋の人が怪しいから、貴女ちょっと誘惑してお持ち帰りされて、部屋の中調べてきて、とか頼むことだってあるかもしれないのよ?」

「それもう護衛侍女の仕事じゃありませんから! それにその、お下品なおじさんのような発想はお止めください! 私よりお若いのに!」

「あははは。まあ冗談は三分の一くらいにしておいて」

 

 三分のニは冗談じゃないんだ。

 フィリアさんは18歳。

 リエラさん=マリエラ姫はフィリアさんの2こ下で、わたしの1こ下の16歳。日本だと高校一年生だね。そんな歳の人が色仕掛けの情報戦を求めてくるとは、異世界は倫理観が違う。

 でもフィリアさんって、マリエラ姫の情報入手手段にもなるくらい、情報に接する位は高いんだな。

 

「最近フィリアは限界を2回も突破して、ストレージ容量が爆増ししたから、ついに先々々代から受け継いでた道具を持ってこれるようになったのよ。もう私の専任護衛次女はフィリア以外あり得ないから、安心してお務めなさい」

「えっ。も、もしかして永久就職ですか!? ずっとお側にいて良いと? う、うひゃあ(ハート)」

 

 喜びが極まって、フィリアさんが飛び上がってくるくると回る。

 わたしはリエラさんにじと~っと目線を送った。

 

「限界突破って、また予備ストレージを使わせたんですか?」

 

 フィリアさんの法力は『ストレージ』というもので、何でも入れられる倉庫のような空間を持っている。限界突破っていってるのは、その容量を増やすことだ。先のアイポメアニール採取クエストの時に、偶然にもその方法が判明したのだ。ただそれをやると本人はかなり苦しい目に遭うようで、暫く寝込んでしまうほどなんだけど。

 

「そうなの。ただ前回は1週間意識が戻らなかったから、次やったら死ぬかもしれないわね」

「リエラさん、フィリアさんをもっと大事にしましょうよ!」

 

 

 と、そこへ、がばーんとギルドのドアが開け放たれた。同時に埃が舞って入り口辺りが見えなくなる。

 

 埃が次第に晴れてくると、そこには2m級の身長の超マッチョな壮年の男の人を筆頭に、鋭い目つきをした5人の探検者(エクスプローラー)が立っていた。

 

「Aランクパーティー、『龍の鱗』!」

 

 サロンにいた若い探検者(エクスプローラー)が、彼らを見てそう言った。

 

 

 




今回の設定のおさらいは、リエラさんとフィリアさんでした。
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