異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
わたしがイレムに蹴られた足を抱えてぴょんぴょん跳ねていると、重たい靴の音を幾つも連ねて、『龍の鱗』メンバーが戻って来た。
「あ、あの、デッカーさん」
受付予備嬢のレーナさんは、律義にもイレムのことをデッカーさんに伺い立てた。
「この子が討伐隊に参加したいんだそうです。Fランクですが『探知法力』が使えるんですけど、どうでしょうか?」
ギロリとデッカーさんはイレムを見下ろす。
「探知法力なら俺のパーティーのパイアスが持っている。それに北の狩場は今、エリア討伐ランクBだ。Fランクはお呼びじゃねえ。大人しくここでママのおっぱいでも飲んで待ってな」
「や、やっぱりそうですよねえ。ほら、だめだって。また今度ね」
デッカーさんに頭ごなしに否定され、レーナさんにも諭されて、イレムは口を尖んがらかせて押し黙った。
「で、ケイトの言う、俺のパーティーに一時的に参加させて、マスターのところまで連れて行くって奴はどいつだ?」
「あれです。あそこのちっこいの。こっち来てマヤさん」
来い来い来いと手招きするケイトさん。
「はい?」
呼ばれ方が気にくわないが、仕方なしに『龍の鱗』の元に行く。
「このちんちくりんです。Fランク
「こんな娘をエリア討伐ランクBの中に? さっきの子供と大差ないじゃねえか。ジオニダスは何を考えてるんだ?」
「さっきの子供って、まさかイレムと大差ないって言いました?」
それはさすがにムッとくる。
「それに護衛して連れて行けならともかく、俺のパーティーに入れるたあ、どういうことだ?」
「この子はアンリミテッド・パーティーの資格を持ってるんですよ。どこかのパーティーに入れてあげないと、資格が生きないんです」
ケイトさんの説明に、キョトンとする『龍の鱗』の人達。
「アンリミテッド・パーティー?」
「アンリミテッド・パーティーだって? この子供が?」
「子供じゃないです! こっちの国じゃ小さく見えるのかもしれないけど、17歳の成人ですから。マヤです。よろしく」
「17? おいおい」
「そりゃあ見栄張るにしても、サバ読みすぎだろ!」
けはははと、毎度のごとく笑われる。
視界の向こうで、リネールさんが必死に笑いを堪えていた。
おいリネールさん、あんたも毎度ウケけてんじゃないわよ!
何がツボなのか知らんが、リネールさんはわたしの見た目と実年齢が釣り合わなくて、誤解されるのを見るのが楽しくて仕方ないらしい。
ちなみに『アンリミテッド・パーティー』っていうのは、実ランクに関係なく、所属パーティーの討伐ランクで獲物が狩れるという特殊ライセンスのことだ。Fランクのわたしは、普通ならFかEランクの獲物しか獲っちゃいけないけど、所属パーティーランクがBランクならBの獲物を、AランクならAランクの獲物を狩ることが許される。
ギルドマスターが、わたしの扱う危なっかしい……もとい、素晴らしい法力も場合によっては役に立つ事もあると考えて、付け加えてくれたものだ。というか、もうそれにすがって生きていくしかない。
「見かけで判断しないでほしいわ」
不機嫌な顔でいると、デッカーさんが笑うのをやめて見下ろしてきた。
「アンリミテッド・パーティーか。俺のパーティーに入って、Aランクの魔物仕留めるつもりか?」
「必要ならやりますよ」
「本当にできんのかよ」
そこにケイトさんが割り込む。
「ああ、それなら問題ありません。先日5階級差違反をやらかしたばかりですから」
「なっ!?」
「5階級差!?」
「5階級差違反!?」
「んなの聞いたことねえぞ! どんなことしたら5階級も差がつくんだ!?」
「ま、まさかお前……FランクでAランクのを仕留めたのか?」
「おい、
「嫌なんですけどこれ見せるの。なんだか前科を自慢してる堅気じゃない人みたいで」
しぶしぶ胸からタグを出す。裏面には彫り込まれた一文があった。
「おお、4階級差違反を取り消し線で消して、5階級差違反で上書きされてやがる」
「マジかよ……」
5人が物凄い珍獣を見る目をわたしに向けてくる。ぶつかったら戦車の方が割れる、あり得ないUMAを目にした顔だ。
「ああそうそう。マスターから、『俺のところに来るまで、できるだけ目立つな』って永久Fランクに注文つけてました。だから本当にAランク級の魔物が出たとかみたいな危機でない限り、このコを極力使わないでください」
ケイトさんの追伸に、また信じられんと言った顔を向ける『龍の鱗』メンバー。
「それって本当にこいつがAランク仕留められるってことだよな?」
「ふん! たまたま瀕死のやつにでも出くわしたんだろう。俺は実際見るまで本気にしねえぞ!」
デッカーさんは腕を組んでそっぽを向いた。現実逃避しましたよこの人。
「なんでもいいです、パーティーに入れてくれるなら。もうこれ以上ペナルティ貰いたくないんで」
ペナルティのことを言うと、デッカーさん以外の人達が表情に同情の色を見せた。でも一瞬だ。
「ペナルティには同情するが……。いやしかし、いくら瀕死の奴に出くわしたとしても、普通やるか? 腐ってもAランクだぞ? 普通は手ぇ出さねえだろ」
「よっぽど自暴自棄にでもなってないと、ンなこと出来ねえ。まあ恐れを知らなかった子供の頃なら、俺でも関係なくやってたかもだけどな」
それじゃイレムでしょ。男って子供の時は皆そんななのかしら。
討伐に行きたいとわめいていたイレムをちらりと見る。
イレムは先日のアイポメアニール採取の時、格上を倒したくて、何度となく魔物に切りかかっちゃあ、簡単にはね返されたり、吹っ飛ばされたりしていた。死ななかったのが奇跡だわ。
イレムはニーシャに「ほら、帰るだわよ」と腕を引っ張られて、ギルドから連れ出されるところだった。
そうしている間も、わたしのことをあーだこーだ言って品評してた『龍の鱗』の人達は、結論に達したようだ。
「「「お前やっぱ、どうかしてるわ」」」
「むわーっ、普通じゃない人認定しないでくれる!?」
◇◇◇
増援討伐隊は全員が揃い、広いスペースのある買取カウンターの前に整列した。
Aランクのパーティーが、デッカーさんの『龍の鱗』5名+わたし。Bランクパーティーは、ニエミネンさんの『ホワイトガーディアン』と他に2つ。Cランクパーティーはリエラさんのとこだけだ。
他に『龍の鱗』に護衛される形で、サンドラちゃんとリネールさんの『リトルウィング』が同行する。
以上が、第二次探検者増援部隊の陣容だ。
総勢20名だった。
全体を仕切るデッカーさんが、皆の前に出て話しをする。
「俺達は魔物を倒しつつ、ヘキサリネ軍の最前線基地に併設している
なるほど、官民共同戦線ってことか。
「見つけたら当然、それを破壊するんだよな?」
「そうだ。だが依頼では破壊を支援せよとのことだ」
「ということは、破壊はヘキサリネ軍が主体でやるのか」
「おそらくな」
ふん? わたしの依頼には破壊しろってあるけどなあ。
「さあ行くぞ、出発だ!」
「「「「おうっ!!」」」」
デッカーさんの掛け声で皆は装備を背負うと、ギルドにいた皆に見送られて、勢いよくギルドのドアをゲギギャっ! と容赦なく開け、第二次探検者増援部隊は出陣した。
わたし達が出ていった直後、ギルドのドアはもげて、バターンと倒れた。
設定のおさらいとしては、アンリミテッド・パーティーくらいでした。