異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第109話「龍の鱗のアンリミテッド・パーティーの評価」

 

 わたしがイレムに蹴られた足を抱えてぴょんぴょん跳ねていると、重たい靴の音を幾つも連ねて、『龍の鱗』メンバーが戻って来た。

 

「あ、あの、デッカーさん」

 

 受付予備嬢のレーナさんは、律義にもイレムのことをデッカーさんに伺い立てた。

 

「この子が討伐隊に参加したいんだそうです。Fランクですが『探知法力』が使えるんですけど、どうでしょうか?」

 

 ギロリとデッカーさんはイレムを見下ろす。

 

「探知法力なら俺のパーティーのパイアスが持っている。それに北の狩場は今、エリア討伐ランクBだ。Fランクはお呼びじゃねえ。大人しくここでママのおっぱいでも飲んで待ってな」

「や、やっぱりそうですよねえ。ほら、だめだって。また今度ね」

 

 デッカーさんに頭ごなしに否定され、レーナさんにも諭されて、イレムは口を尖んがらかせて押し黙った。

 

「で、ケイトの言う、俺のパーティーに一時的に参加させて、マスターのところまで連れて行くって奴はどいつだ?」

「あれです。あそこのちっこいの。こっち来てマヤさん」

 

 来い来い来いと手招きするケイトさん。

 

「はい?」

 

 呼ばれ方が気にくわないが、仕方なしに『龍の鱗』の元に行く。

 

「このちんちくりんです。Fランク探検者(エクスプローラー)なんですが、この子をマスターのところまで連れて行ってください」

「こんな娘をエリア討伐ランクBの中に? さっきの子供と大差ないじゃねえか。ジオニダスは何を考えてるんだ?」

「さっきの子供って、まさかイレムと大差ないって言いました?」

 

 それはさすがにムッとくる。

 

「それに護衛して連れて行けならともかく、俺のパーティーに入れるたあ、どういうことだ?」

「この子はアンリミテッド・パーティーの資格を持ってるんですよ。どこかのパーティーに入れてあげないと、資格が生きないんです」

 

 ケイトさんの説明に、キョトンとする『龍の鱗』の人達。

 

「アンリミテッド・パーティー?」

「アンリミテッド・パーティーだって? この子供が?」

「子供じゃないです! こっちの国じゃ小さく見えるのかもしれないけど、17歳の成人ですから。マヤです。よろしく」

「17? おいおい」

「そりゃあ見栄張るにしても、サバ読みすぎだろ!」

 

 けはははと、毎度のごとく笑われる。

 視界の向こうで、リネールさんが必死に笑いを堪えていた。

 

 おいリネールさん、あんたも毎度ウケけてんじゃないわよ!

 何がツボなのか知らんが、リネールさんはわたしの見た目と実年齢が釣り合わなくて、誤解されるのを見るのが楽しくて仕方ないらしい。

 

 ちなみに『アンリミテッド・パーティー』っていうのは、実ランクに関係なく、所属パーティーの討伐ランクで獲物が狩れるという特殊ライセンスのことだ。Fランクのわたしは、普通ならFかEランクの獲物しか獲っちゃいけないけど、所属パーティーランクがBランクならBの獲物を、AランクならAランクの獲物を狩ることが許される。

 ギルドマスターが、わたしの扱う危なっかしい……もとい、素晴らしい法力も場合によっては役に立つ事もあると考えて、付け加えてくれたものだ。というか、もうそれにすがって生きていくしかない。

 

「見かけで判断しないでほしいわ」

 

 不機嫌な顔でいると、デッカーさんが笑うのをやめて見下ろしてきた。

 

「アンリミテッド・パーティーか。俺のパーティーに入って、Aランクの魔物仕留めるつもりか?」

「必要ならやりますよ」

「本当にできんのかよ」

 

 そこにケイトさんが割り込む。

 

「ああ、それなら問題ありません。先日5階級差違反をやらかしたばかりですから」

「なっ!?」

「5階級差!?」

「5階級差違反!?」

「んなの聞いたことねえぞ! どんなことしたら5階級も差がつくんだ!?」

「ま、まさかお前……FランクでAランクのを仕留めたのか?」

「おい、探検者(エクスプローラー)タグ見せてみろ!」

「嫌なんですけどこれ見せるの。なんだか前科を自慢してる堅気じゃない人みたいで」

 

 しぶしぶ胸からタグを出す。裏面には彫り込まれた一文があった。

 

「おお、4階級差違反を取り消し線で消して、5階級差違反で上書きされてやがる」

「マジかよ……」

 

 5人が物凄い珍獣を見る目をわたしに向けてくる。ぶつかったら戦車の方が割れる、あり得ないUMAを目にした顔だ。

 

「ああそうそう。マスターから、『俺のところに来るまで、できるだけ目立つな』って永久Fランクに注文つけてました。だから本当にAランク級の魔物が出たとかみたいな危機でない限り、このコを極力使わないでください」

 

 ケイトさんの追伸に、また信じられんと言った顔を向ける『龍の鱗』メンバー。

 

「それって本当にこいつがAランク仕留められるってことだよな?」

「ふん! たまたま瀕死のやつにでも出くわしたんだろう。俺は実際見るまで本気にしねえぞ!」

 

 デッカーさんは腕を組んでそっぽを向いた。現実逃避しましたよこの人。

 

「なんでもいいです、パーティーに入れてくれるなら。もうこれ以上ペナルティ貰いたくないんで」

 

 ペナルティのことを言うと、デッカーさん以外の人達が表情に同情の色を見せた。でも一瞬だ。

 

「ペナルティには同情するが……。いやしかし、いくら瀕死の奴に出くわしたとしても、普通やるか? 腐ってもAランクだぞ? 普通は手ぇ出さねえだろ」

「よっぽど自暴自棄にでもなってないと、ンなこと出来ねえ。まあ恐れを知らなかった子供の頃なら、俺でも関係なくやってたかもだけどな」

 

 それじゃイレムでしょ。男って子供の時は皆そんななのかしら。

 

 討伐に行きたいとわめいていたイレムをちらりと見る。

 イレムは先日のアイポメアニール採取の時、格上を倒したくて、何度となく魔物に切りかかっちゃあ、簡単にはね返されたり、吹っ飛ばされたりしていた。死ななかったのが奇跡だわ。

 イレムはニーシャに「ほら、帰るだわよ」と腕を引っ張られて、ギルドから連れ出されるところだった。

 

 そうしている間も、わたしのことをあーだこーだ言って品評してた『龍の鱗』の人達は、結論に達したようだ。

 

「「「お前やっぱ、どうかしてるわ」」」

「むわーっ、普通じゃない人認定しないでくれる!?」

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 増援討伐隊は全員が揃い、広いスペースのある買取カウンターの前に整列した。

 

 Aランクのパーティーが、デッカーさんの『龍の鱗』5名+わたし。Bランクパーティーは、ニエミネンさんの『ホワイトガーディアン』と他に2つ。Cランクパーティーはリエラさんのとこだけだ。

 他に『龍の鱗』に護衛される形で、サンドラちゃんとリネールさんの『リトルウィング』が同行する。

 以上が、第二次探検者増援部隊の陣容だ。

 総勢20名だった。

 

 全体を仕切るデッカーさんが、皆の前に出て話しをする。

 

「俺達は魔物を倒しつつ、ヘキサリネ軍の最前線基地に併設している探検者(エクスプローラー)キャンプまで行き、マスターと合流する。聞いたところによると、北の森のハドル谷にあるワハイム沼に魔物の集まりがあるらしい。そこに魔物の湧き出し点があるのではないかと推測される。ヘキサリネ軍と協力し、湧き出し点を見つけ、湧き出してる理由を探ることが俺たちの任務だ」

 

 なるほど、官民共同戦線ってことか。

 

「見つけたら当然、それを破壊するんだよな?」

「そうだ。だが依頼では破壊を支援せよとのことだ」

「ということは、破壊はヘキサリネ軍が主体でやるのか」

「おそらくな」

 

 ふん? わたしの依頼には破壊しろってあるけどなあ。

 

「さあ行くぞ、出発だ!」

「「「「おうっ!!」」」」

 

 デッカーさんの掛け声で皆は装備を背負うと、ギルドにいた皆に見送られて、勢いよくギルドのドアをゲギギャっ! と容赦なく開け、第二次探検者増援部隊は出陣した。

 

 わたし達が出ていった直後、ギルドのドアはもげて、バターンと倒れた。

 

 

 




設定のおさらいとしては、アンリミテッド・パーティーくらいでした。
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