異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第11話「領都に着きました! お肉はいくらで売れるかしら」

 

 わたし達の荷馬車は今、領都に入る門前に無事たどり着いた。

 

「うわあ、これが領都!?」

 

 わたしは感激して馬車の荷台に登って見上げた。

 町への入り口は石造りの城門。門の横は自然石で高い石垣が積んである。それより圧巻なのは、石垣から続くそびえるような土の壁だ。高さは4、50mあるだろうか。垂直の壁ではなく斜面になっていて、盛り土とか土塁の桁外れにでかい奴とでも言おうか。大小の石ころの混じった硬そうな土でできていて、木はないけど草は普通に生えている。もしかして自然の山なんだろうか。その壁がV字に切れたようになっているところに城門があるのだ。

 

 門のところでは腰に剣を下げた兵士が入管チェックをしていた。

 

「皆、降りとくれ」

 

 ライナーさんに言われて、馬車に乗っていたわたしとサンドラちゃん、御者の2人は降りて、徒歩組のライナーさんらと一緒に並んだ。ライナーさんは村で発行した通行証を兵士に渡し、入場税を払った。兵士は通行証に申告された入城メンバーと実物を比較して確認し、その間に別の兵士が馬車を手慣れた様子でチェックする。兵士は申告通りであるのを確認し終え、辞典のように分厚い帳簿に何やら書き込むと、ニッコリと微笑んで通行証を返し、場内への道を開けた。

 

「ようこそライナーさん。今日は何を持ってきたんです?」

 

 親し気に話しかけてきたところをみると、ライナーさんと兵士は顔見知りのようだ。何度も来てるからだろうか。

 

「マンモスの肉がありますよ。仲買に卸しますから、後で市場に出回るでしょう。夕食にどうです? 息子さん食べ盛りでしょう?」

「マンモスですか! それはぜひ買い求めねば」

 

 馬車を引き連れて、わたし達は歩いてトンネルのような城門をくぐった。暗がりから出てぱあっと明るい日差しで目を細めた先に現れたのは、大きな広場と、その向こうに綺麗に並ぶ石造りのヨーロッパ風の建物だった。

 

「わあああー」

 

 わたしは思わず感嘆の声を上げてしまった。

 土壁から街までは50mくらいの空間を開けてあって、そこが広場になっている。建物は2階か3階建てで、装飾はほとんどないものの、雰囲気はヨーロッパだ。

 何より圧巻なのが、この町を外輪山のようにぐるりと囲っている、見上げるような高さの土壁だ。この景色は地球では見た事がない。

 

「どうです? 大きな街でしょう?」

 

 ライナーさんに感想を聞かれる。街や建物の大きさだけでいえば東京の足元にも及ばないけど、この雰囲気はない。

 

「きれいな街ですね、感動です。街にも目を奪われますけど、それ以上にこれ、盛って造ったんですか?」

 

 わたしは街を囲む土壁へ振り返る。

 

「元々あったとも、大昔の人が長い年月かけて盛ったとも言われています。どっちなんでしょうね?」

 

 自然のだとしたら、火山の外輪山かな。阿蘇の外輪山の中だって町があるし、東京の離島の青ヶ島なんか火山の噴火口の中に住んでんじゃない? って見えるもんね。

 わたし達は馬車に乗り込むと、市場へ向けて、町の中心へと石畳の道を進んでいった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 商店や露店がずらりと並び、活気ある声であふれるブロックに入った。奥の倉庫らしき建物がある方へ進んで行くと、1軒の店の前で馬車を停めた。

 

 のたくった字の書かれた看板があるなあと思っていると、転生の恩恵か途端にするりと読めるようになる。看板には『肉のコーデッド 領都本店』とあった。

 入ってすぐのところに牛のようなのと、人型の肉が釣る下がっていて、一瞬ぎょっとした。そこはお肉問屋らしかった。

 

「な、何の肉? これ」

「オークじゃない?」

 

 人型の肉塊を指さすと、サンドラちゃんが教えてくれた。いやあ、殺人鬼やプレデターでもない限り、皮はいで内臓抜いた人型の肉なんて見ることないからびっくりしたよ。お猿を食べる国ならあり得る光景なのかな。

 

「こんにちは」

「やあ、ライナーさん」

 

 ライナーさんと同じような30代後半な感じの人が、布巾で手を拭きながらやってきた。

 

「もう村の近くまで鹿が下りてきましたか?」

「いえ、今日は鹿や猪じゃないんです」

 

 チトレイさんが法力で4つの箱を同時に持ち上げて店の中に運び入れた。リネールさんも2箱を持ってやってくる。箱の一つが開けられた。

 

「おお、マンモスですか! はぐれものが現れたので?」

「ええ。10トンクラスです。とても運びきれないので、荷馬車を何台か出してもらえませんか?」

「10トン!? 村は大丈夫だったんですか?」

「村の男総出と、そこのお嬢さんのお陰で、無事狩ることができました」

「ほう!」

 

 肉問屋店主は顔を上げてわたしの方を向いた。しかし、ちんちくりんなわたしを見て、表情はすぐに疑問を浮かべたものになった。

 

「なんと美しい黒髪。外国の方かな? まだ成人前のようですが、それなのに危険な狩りに参加されたのですか?」

「ええ、まあ。マヤと言います。お見知りおきを。それとわたし、一応17歳です」

「「「ええ!?」」」

 

 店主さんのみならず、肉を切り分けていた従業員の方々も一斉に声を上げた。

 そーかい、そーかい。どうせ子供ですよ。

 

「こ、これは失礼しました。是非今後ともご贔屓(ひいき)に」

「それで店主。実は目玉はそっちじゃないんだ。これ分かりますか?」

「ほうほう?」

 

 いよいよ本命が入っている方の蓋が開けられた。

 わたしは、いくらで買ってくれるんだろうとわくわくして、一部始終を見守る。

 防腐用に包んである葉っぱを解き、肉の塊を見た店主さんは、まずはハテナマークを浮かべた顔になった。そして暫らく肉をひっくり返したりしながら観察すること十数秒。

 

「ま、まさか、サーベルタイガーですか?」

「「「えっ!?」」」

 

 再び奥の従業員の人達からも驚きの声が出た。そして作業を止めてこっちへ走ってきた。

 

「しかも凄く新鮮です! 昨日獲って燻したばかりのようだ」

 

 おおー、いい反応だよ! 喜んでもらえてお師匠様もお喜びに違いない。

 

「こ、これはいったい!?」

「マヤさんがお師匠様と仕留めたのだそうです。村のすぐそばでした」

 

 再び全視線がわたしの方に向く。

 これがわたしの美貌に引き寄せられたものだったら嬉しいんだけど、ちんちくりん狩人ではなぁ。

 

「とは言っても、わたしは餌役の囮で、仕留めたのはお師匠様です」

 

 リネールさんとチトレイさんがサーベルタイガーのお肉の入った箱を次々に運び入れた。

 

「こんなに!? どれだけでかいタイガーですか!」

「500キロはありました」

「そ、そんなバケモノクラスを……。あなたのお師匠様とはいったいどなたですか?」

「はい。トロ様と言います」

「トロ……」

「トロ?」

 

 皆には思い当たらないようだった。あんな凄い人だったのに、あまり名は知られてないのかな。

 

「もしかして、東方三勇士の一人じゃないですか?」

 

 店主がはっと思い当るものがあって顔を上げた。

 

「え? 9年前に戦争を未然に防いだという噂の?」

 

 へえ。初耳だよ。ハンターじゃないのか、お師匠様は?

 

「東方の勇士の話しは知ってるが、その人トロっていうんだ」

「その話ってあれだろ? 湿地帯に誘いこんで、そこで火山が噴火したとか言うやつ」

「なんだそれ、どんな空想物語だよ」

「ああいう英雄伝や旅伝道師の話は、えてして大げさに脚色されてるからなあ」

 

 ああ、それって水素爆発起こしたんじゃないかな。湿地の沼の水を水素と酸素に分解して。お師匠様、すげぇわ。

 

「そうなのですか?」

 

 聞かれたのは勿論わたしだ。とは言ってもわたしも初めて聞く話ばかりだ。

 

「わ、わたしはごく最近弟子になったばかりで、身の上話は全然聞けてないんです。今回もサーベルタイガーを仕留めたら、次があるって、お肉の処分だけわたしに押し付けて、さっさと行ってしまわれましたし」

「押し付けたって言ったって、サーベルタイガーだぜ?」

「俺も押し付けられたいぞ」

「本当にあんた、勇士の弟子か?」

 

 どうやら獲物を横取りして弟子と名乗ってるだけじゃないかと、疑いの目を向けられたみたいだった。

 

「それは疑いようもないぜ!」

 

 その疑いをきっぱりと切って捨てたのはリネールさんだった。

 

「俺達の目の前でマンモスを仕留めたのはマヤさんだ。それに、領都へ来る途中に盗賊団に襲われたんだけど、20人をあっという間に制圧したんだぜ」

「「「えええ!?」」」

 

 もういいよ、その驚きの合唱と目線は。見かけ通りのかわゆい女の子として見てほしいんだけどなー。

 

「何か、特別な法力を持ってるのですか?」

「ええ、まあ」

「ど、どんな!」

「秘密です。あえて言えば、火との相性がいいって感じですかね? さっきの火山噴火みたいの、お師匠様ならきっとできると思いますよ? わたしは修行の身なんで無理ですが」

 

 いや、たぶん出来そうな気がするけど。そんなこと明かしたら怪獣みたいに扱われちゃうよ。

 

「「「はああ~」」」

 

 なんだか期待と呆れと宇宙人を見たようなのを混ぜたような声が皆の口から出た。

 はっと我に返った店主さんはすぐライナーさんへ向き直った。

 

「ライナーさん、それでこれ、うちに売ってくれるんですね!?」

「え、ええ。リトバレーの産物は、多少出来が悪い時も引き取ってもらってるご恩もありますし」

「いや、領都に近いこともあって、急な依頼を受けてもらったりしてますし、良い時の品質にはいつも満足してるんですから、そこはお互い様です」

「ありがとう。それでは是非お取引を」

「分かりました。全量引き取らせてもらいます。ちょうど領主邸で隣国との会議が予定されていて、晩さん会の話が来てますから、今売り込み時です。キロ当たり1金貨でいきましょう」

 

 あれ、村で見積もった時はキロ当たりハーフ金貨、日本円換算で5万円じゃなかったっけ?

 

「えええええー!?」

 

 今度はわたしが絶叫してしまった。

 100グラム1万円!? 300キロくらいあるから、3,000万円!? もう大間の本マグロの域だ。土地付きの家が建てられちゃうよ!

 

「マンモスも久々の入荷ですから、初入荷分はキロ2小金貨でどうでしょう?」

 

 ってことは、500キロ持ってきたから1000万円。折半ってことになってるから、わたしが受け取るのは500万円! あかん、これは宝くじが当たって人生ダメにするやつかもしれないわ。まだ村にはマンモスのお肉だけで5、6トンあるし、牙も残ってるというのに!

 

「マヤさん、よろしいですか?」

 

 ライナーさんが尋ねてきた。

 

「お、お任せします。村に損が出ないように」

 

 店主さんは満面の笑みでわたしに手を差し出した。

 

「良い取引ができました」

 

 

 

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