異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
聞き取り調査も終わり、携帯食が配られ、みんなは軽く栄養補給をする。
マヤがナッツとドライフルーツをポリポリとかじっていると、コドリン上級軍曹がレオナルドとサンドラの所にやって来た。
「お陰様で傷は完全に治りました。我々は補給が終わり次第、前線部隊に戻るため出発します。お嬢ちゃん、ありがとな」
サンドラは、てへへへとはにかむ。
レオナルドは意外そうな顔をした。
「
「一刻も早く領主様の元へ向かいます。ワイバーンとオーク・ソルジャーが空から向かってるかもしれませんから」
レオナルドは干し肉を噛みちぎっているデッカーに向いた。
「
デッカーは干し肉をバリバリと咀嚼しながら答えた。
「討伐した魔物を片付けて、装備の点検が終わり次第ですかな。だが魔物の数が半端ねえ。急ぐってなら、後でパーティー報酬で揉めるかもしれねえが、記録を取るのをやめるかね。死骸を残すわけにいかねえから、燃やすのにどこか1つパーティーに残ってもらって、後始末してもらうとかしねえと」
するとホワイトガーディアンのニエミネンが発言した。
「もうすぐうちのエリンが、魔石取りとタグ付けを終えるはずだよ。取り終わったオーク・ソルジャーはマヤさんが運んでくれるんだよね? そうすれば一緒に行けるんじゃないかな」
とそこへ、グッドタイミングでエリンが「魔石を取り終わったオーク・ソルジャーを1か所に集めといたわよぉ」と報告に来た。
「この小娘が運ぶだと? 120頭をか?」
デッカーがまた胡散臭そうにマヤを見下ろす。
「あ、はい。運びますよー。凍っちゃうけど」
「よし、すぐやってこい」
「レオさーん、もうちょっとモチベーション上がる言い方ないんですかぁ?」
がるるるとレオが牙をむくので、マヤは急いで立ち上がって、ニエミネンとエリンに連れられて、オーク・ソルジャーを集めたという場所へ向かった。
引き続き胡散臭そうな目で追うデッカーも、舌打ちしながらも気になって、干し肉を咥えたまま後をついていった。
そこには討伐されたオーク・ソルジャーが山と積まれていた。マヤが初撃でやった胴体が真っ二つのものから、
手首や足首には印がつけられていて、どのパーティーが仕留めたか分かるようになっている。後で報酬の配分比率の参考にするためだ。
半分はマヤがやったものなのに、マヤが「うわー、酷い殺戮現場だわ」と他人事のように言ってるのに、ニエミネンは苦笑いした。
「着てる鎧とか、持ってる武器とかはどうするんです?」
「ギルドが査定するよ。人間が扱うサイズじゃないから、大概はバラしたり溶かしたりして、道具や武器の材料にする。珍しい合金が使われてたりすれば高い値が付くよ」
「それじゃ鎧着たまま持っていけばいいんですね」
マヤは両手を上に広げて法力を発動した。
「
オーク・ソルジャーの山全体が青い固体酸素で覆われた。
「うわ、寒ぅ!!」
なにせ固体酸素はマイナス200度以下。周囲の土からはとたんに霜柱が立つ。
「固体酸素コンテナ、ストレージに収納」
オーク・ソルジャーを包み込んだ固体酸素は一瞬でシュンと消えて、マヤのストレージにしまわれた。
マヤのストレージは酸素しか格納できないが、例外的に酸素で覆ってしまえば、中に何が入ってようが一緒にしまえるのだ。マイナス200度以下に凍ってしまうけど。
後を付いてきて疑わし気な目で見ていたデッカーは、目が点になって、くわえていた干し肉を落とした。
「なんなんだお前の法力は! 燃やしたかと思えばまた氷? それにストレージまである。法力を幾つも持っているのか!?」
「秘密です」
商売道具で切り札でもある法力の事は、詳しく教える必要はないというのが
それでも大概は断片的情報で、どんな法力か見当つくものである。しかしマヤの法力は、経験豊富なデッカーをもってしても全くもって想像することができなかった。デッカーはぐぬぬぬと歯ぎしりする。
「無事全部仕舞えましたよー、コチコチに凍りましたけど」と戻ってきたマヤに、これまで物運びを担当していたフィリアはほっと胸をなでおろした。
「これでもう私は
だが何を言っているのと、マヤとリエラに肩をはたかれた。
「いえ、そうはいきませんよフィリアさん。凍っちゃいけないものはわたしのストレージにはしまえませんから。生野菜とか卵とかコンニャクとか、おいしい食材運びには引き続きフィリアさんは欠かせないです」
「いわば食料専門の運び屋ね。
「
「ぷっ、フードトランスポーター・メイド……」
またまた新たなメイド種別を作られて、フィリアは悲鳴を上げる。
「これ以上私の品格を落とさないでください! リエラ様、何を笑って? ああ、ねえ侍女長の前では間違っても、決して、絶対、口にしないでくださいよぉー! あの方に知られたら絶対正式名称に使われちゃいますー!」
◇◇◇
装備を担いで立ち上がる
ところが。
「レオナルド王太子殿下、馬車はあちらですぞ」
「我々も街道に戻り、帰国いたしましょう」
足元で偉そうに反り返っているイレムを従えたレオナルドが、マヤと一緒に行こうとするので、慌てて声を掛けた。
レオナルドは護衛騎兵の方へ振り返ると。
「ああ、先行ってていいぞ。俺はちょっとヴェルディ殿に挨拶していくから」
「「「「なっ!!」」」」
「まだお戯れをお続けなさるつもりですか!?」
「ケンとクーノを連れて行くから大丈夫だ」
「ヴェルディ様は魔素溜まりの近くにおられるのでしょう!? 危険過ぎます!」
「そんなことないだろ。仮にも一国の国主がいる所なんだ。安全は十分確保しているだろう」
「そ、そう言われればそうかも……いえいえいえ、ワイバーンが向かっているかもしれないのですよ! それに国主が最前線の交戦部隊の陣頭指揮を執るなんて、ヘキサリネもどうかしてます!」
「俺の親父は国を平定するのに陣頭指揮を執ってたぞ。自ら先頭に立つのは、ワリナだって特別な事じゃない」
「国王陛下の場合は国内の話です。他国の国内問題の先頭に立つ必要はないでしょう!」
護衛騎士の言うことはもっともである。だがここでレオナルドはひと呼吸置くと、雰囲気を変えて言った。
「俺には俺の戦略ってのがある。ここは俺が国を背負った時の、
将来ワリナとヘキサリネとの関係への布石、いわば政治的判断だと言われてしまうと、騎士も言葉が詰まる。こうなると引き止めるのは難しかった。
単なる道楽という線も捨てきれなかったが……
「ま、心配するのもわかる。そうしたら、騎馬護衛騎士4騎は同行を許す。馬車同乗の兵士は文官の馬車と共にいよ。俺が戻るまでここに待機。それならいいな?」
「わ、分かりました。どんな前線であろうとも、我々が身を挺してお守りいたします」
「その忠誠心、嬉しく思うぞ」
なんやかやレオナルドは理由をつけて、帰国を後回しにして、まだまだ討伐隊に付いていくことになった。
「とはいえ、王子に何かあったら俺達の首は物理的に飛びますよ……」
「心配するな。遺族への恩給は弾んでやる」
後ろに向かって手をひらひらさせて、
一部始終を見ていた
「どっちの国も、暴君に仕えるのは大変だねえ」
「どっちの国? その暴君に、もしかして私も含まれてるのかしら?」
マヤの背後から、リエラことマリエラ皇女が手をワキワキさせて、マヤに襲いかかろうとしていた。