異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
ヘキサリネ軍の兵士達が道の左右に並んで歓声を上げ、その列を出迎えた。
兵士の列に見送られながら、鉄の装甲車に足が生えたような無骨な形状の物が、ズシンズシンと地面を震わせながら歩いていく。背中にはハッチがあり、そこから『乗員』とも言える兵が身を乗り出して、声援に応えて手を振っていた。
やがて柵に囲まれた砦が見えてきた。空堀の後ろに丸太と板を組み合わせて作られた門がある。空堀を渡る橋に到達すると、門の扉が開かれる。ハッチの『乗員』は身を屈めてゲートの天井の梁を避けた。中に入るとさらに大きな声援に迎えられた。
ここはスタンピードに対応するヘキサリネ軍の最前線基地である。
大掛かりな基地で、半径は500mくらいあり、全周を柵と空堀で囲っている。中央に生える巨木を中心に、北側に宿舎の天幕群と小規模な広場、東には古びた遺跡の建物群があり武器・弾薬倉庫になっている。巨木の辺りから南側が大きい広場になっており、その南と西に林を残す。林の木々は資材用として使える。林の中には司令部建物が点在し、南端に今兵士達の喝采が響いている南門がある。
基地内に入った装甲車のようなのは、大型の動物に鉄板や装甲板で体を囲う鎧を着せたもので、装甲獣という。中でも角竜や剣竜、鎧竜など、装甲など着けてなくても頑丈な外皮に覆われている大型恐竜を使ったものは重装甲獣と呼び、地上白兵戦闘では無類の強さを誇っていた。
重装甲獣の外観を形作る鎧は
ヘキサリネのはミリヤ系統の竜鎧で、胴回りを囲む角張った装甲はリベット止めなので無骨さが際立つ。背中に砲塔でも着ければ、第ニ次世界大戦初期の装甲車や戦車くらいには見えそうな外観だ。
そしてそれに乗り込む形で恐竜を操縦する『乗員』ともいえるのが、『竜使い』だ。
「素晴らしい重装甲獣だ。この戦力があれば、沼手前にいる魔物集団もあっという間に蹴散らせるでしょう!」
「これでようやく魔素中心点の半島への突入ができますなあ」
生傷癒えない前線兵士たちは明るい展望に沸き立った。
馬に乗って重装甲獣部隊を自ら引き連れてきたのは、ヘキサリネ領主ヴェルディ・オブ・ヘキサリネ。
ヴェルディは領都周辺警備を担う領都防衛隊第二中隊の中隊長、ユスティニアスの出迎えを受けた。
「待たせたな中隊長」
「領主様のお手を煩わせてしまい、申し訳ありません」
「いや、俺も敵の力量を見誤った。早くこいつらを出していればよかったな。損害を最小限に抑えてくれて感謝する」
そこへ揃いの制服や装備を身に着けた兵士達とは一線を画した、好き勝手な服装や鎧を着込んだ一団がやってきた。その中でも一際ガタイのでかい男がヴェルディに歩み寄ってきた。ハンター・
「おおジオニダス。沼の半島の偵察はできたか?」
「残念ながら領主。魔物に隙きが無くて接近できませんでした。やはりハヤブサ岩までの道をヘキサリネ軍にこじ開けてもらって、遠距離視法力の者に上から半島を視察させるのが最も近道です」
「そうか。斥候に優れた
装甲獣は林の中の道を伝って、中央広場に集められた。
装甲獣の後ろにはソリを引いたイグアノドンがいて、広場に入ると列の前に出てきた。
竜使いが座れの号令をかけると、命令を受けた装甲獣はぐらりと揺れて、脚を折って屈んだ。装甲部分が地面に着地すると、ガシャガシャガシャーンと大きな音を立てて砂埃を巻き上げる。
埃が収まるやいなや、イグアノドンが引いてきたソリから干し草とタライ、樽が下ろされ、装甲獣の頭のところに置かれる。タライには樽から水が注がれた。
「重装甲獣の運用は大変ですねえ。大量の水と餌を持って動かねばならない」
「そしたらこれは少なくないか? すぐ食い尽くしそうじゃないか」
草を与えていた竜使いは顔を上げて、兵士達の疑問に答えた。
「随伴竜には3回分くらいの餌と水を引かせていて、現場ですぐ補給できるようにしてます。それとは別にイグアノドン10頭からなる補給隊があって、後ろから付いてきています。もうすぐ到着するでしょう」
「ナルホドなー」
基地中央には1本の巨木がそそり立っていた。
その巨木の上から、重装甲獣が餌を食べる様子を眺める兵士達がいた。
巨木の上にはデッキが作られており、基地周囲を展望できるよう監視塔となっていた。
監視塔にいる兵士達は、探知や望遠の法力を持った監視兵である。彼らの仕事は言わずと知れた見張りであった。
「上から見ても装甲獣は迫力ありますなあ」
「軍馬や牛とは趣きが違いますからな。あれが魔物の群れの中に入れば、挽肉製造機に早変わりです」
「魔物って言っても、この先にいる大半はゴブリンらしいじゃないか。ゴブリンの挽肉はいらないなあ」
ははははと、デッキで笑いが溢れた。
しかし一人の監視兵が、ハッと顔を上げた。
「東の方角より接近するものあり!」
「なに!?」
「数、50以上と思われる!」