異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第122話「最前線基地のピンチ その1」

 

 領都北の森で発見された魔物溜まり。

 その近くに作られたヘキサリネ軍の最前線基地では、領主ヴェルディが重装甲獣部隊を引き連れて到着し、迎えた兵士達の歓迎を受けていた。

 

 基地の中央に生える巨木を利用した監視塔の展望デッキから、その様子を眺めていた監視兵達は、その役目通りそこに忍び寄る危機に真っ先に気付いた。

 

「東の方角より接近するものあり!」

「なに!?」

「数50以上と思われる! カウント中!」

 

 発見した兵士は探知法力を持っていた。

 探知によると、通常の動物とは違う明らかに統率の取れた動きが見られ、その監視兵は狼狽えた。

 

「確認急いでくれ!」

「……そ、それが、何かおかしい。真っ直ぐ向かってきます。本当にブレることなく直線でこっちへ来るんです!」

「直線で? 東からこっちへ来る道なんてあったか?」

「平原があるが、東西の幅はそれほどないはずだ。あとは深い森のはずだ」

「たとえ平原であったとしても、岩や谷などの地形によって普通は真っ直ぐには来れないはずです。よほど整備された道でもない限りは」

「それで数は!?」

「か、数は90!」

「90匹か。何だろうな」

「速度も異常です! 全速で駆ける馬(ギャロップ)のような速度でやって来ます!」

「ギャロップで地形も無視して真っ直ぐ来る、だと?」

「まさか空か? 空を飛んで来るのではないか!?」

 

 慌ただしくなった展望デッキ。

 遠距離視の法力持ちが東の方角を凝視する。

 他の者も何か見えぬかと東の方角に集まった。

 皆が集まるものだから、遠距離視の法力持ちは後ろの上官に話しかけた。

 

「各隊に知らせた方が良くないですか?」

 

 だが振り向いたところにいた兵士は、見慣れない顔だった。

 

「あれ、あなたは?」

 

 見慣れぬ兵士から蔓のようなのが体中から生えてきて、遠距離視法力者の体に巻き付いた。そして動けなくなったところで兵士の腕が硬い槍のようになり、遠距離視法力者の腹を貫いた。

 さらに別の蔓が伸び、探知法力者の体にも巻き付いた。

 探知法力者が急に持ち上げられたので、他の兵士達もその異常な兵士に気付いた。

 

「何だこいつは!」

 

 槍のようになった腕が探知法力者の腹をも貫く。

 崩れ落ちる2人の監視兵。

 

「うわあ、探知法力者がやられたぞ!」

「遠距離視法力者もやられてる!」

「ト、トレントだ! トレントが兵士に混じっている!」

 

 トレントは植物系の魔物である。擬態能力があり、人や動物の姿を真似て待ち伏せし、近くへ呼び寄せて喰らうということをする。

 だがこのトレントはちょっと違っていた。擬態して自ら兵団の中に入って紛れ、襲う機会を伺っていた。そう、そこにいる者を選別し、対象者を絞っていたのだ。監視能力のある兵士を、ヘキサリネ軍の『目』を狙っていたのだ。

 索敵能力を失ったヘキサリネ軍は、空を移動中と思われる魔物の動きが見れなくなってしまった。

 

「司令部へ、司令部へ知らせろ!」

「くそ、このトレントをなとか突破しないと!」

 

 

 

 

 監視塔の上の騒ぎが知れ渡ったのは、顔を血で真っ赤に染めた監視兵が監視塔から降りてきてからだった。

 話を聞いた兵士が司令部へと伝令を走らせた。

 

 

 司令部用の小屋の下で、地図を囲んで話し合っていたヴェルディ領主と、領都防衛軍第二中隊長のユスティニアス、ギルドマスターのジオニダスらは、外の騒ぎに異変を感じ、会話を中断した。

 そこへ伝令が飛び込んできた。

 

「中隊長、兵士の中にトレントが混じっているそうです! 監視塔の兵士が襲撃されました!」

「何!?」

「その襲撃に遭う直前に、探知法力者が東の方角から接近するものを探知していました。数は90。空を移動していると思われ、真っ直ぐこちらへ向かっていると言っていました」

 

 ハッとジオニダスは顔を上げた。思い当たるものがあった彼は、弾けるように叫んだ。

 

「ワイバーンだ! オークを連れて飛んできてる可能性がある。中隊長、対空迎撃を!」

「な!? ワイバーン? 対空迎撃!?」

 

 ヴェルディもその話に思い当たった。

 

「マヤが遭遇したというやつか」

「方位は!? 今どの辺に!」

「探知法力者がやられて、分かりません!」

 

 ヴェルディはジオニダスに疑問を投げた。

 

「まさかトレントは意図的に探知法力者を狙ってたのか?」

「魔物にそんな知能が? ……いや、もし魔族が指揮をしてるなら、ありえますな」

 

 ユスティニアスが危機感を目に宿らせてジオニダスに向いた。

 

「マスター、探検者(エクスプローラー)の遠距離視法力者を貸してくれ」

「無論だ中隊長。しかし目視捜索には高い所、つまり監視塔が使えないとだぞ」

「監視塔への対応は?」

「現在交戦中。ですが基地内で、しかも中央付近でもあったので……」

 

 ここは宿営地でもある。多くの兵は武装を解いていた。完全武装の兵士は門の近くにおり、他には基地防衛の歩哨が司令部建物の周り、及び外周部に点々としていた。中央に武装兵はなく、対応が遅れているのはそのせいでもある。

 ユスティニアスは苦虫を噛み潰したような顔をしたが、すぐに真顔になった。

 

「ただちに制圧する!」

 

 ユスティニアスは立て掛けていた剣をガッと掴んだ。陣頭指揮を執るつもりのようだ。

 早足で出口に向かって歩きつつ、伝令に次々と命令する。

 

「総員を戦闘配置につかせろ! 各小隊は点呼を取れ。変なのが混じってないか仲間の顔よく拝めよ! 重弓兵隊にワイバーンの迎撃を指示!」

 

 

 

 

 ジオニダスは基地の東側の探検者(エクスプローラー)用エリアに駆けて行き、何の騒ぎだとテントの外に出てきた探検者(エクスプローラー)達に向かって大声を上げた。

 

「遠距離視法力の者を呼べ! 空を見張って、接近するワイバーンを見つけさせるんだ。護衛も付けろ! 兵士に化けたトレントが基地内に入り込んだらしい!」

「マジっすか!? こりゃてーへんだ。おい、松明点けろ!」

「松明? まだ明るいっすよ?」

「知らねえのかおめーは。トレントは植物だから火を嫌うんだよ!」

 

 この辺はしょっちゅう魔物を相手している探検者(エクスプローラー)の方が慣れていた。

 

 

 

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