異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第125話「補給部隊のピンチ その2」

 

 ワイバーンは目標を再び補給部隊のイグアノドンに変えた。

 

 レオナルドはワイバーンの動きをしっかりと追っていた。

 その動きから補給部隊のイグアノドンに再度照準を付けたなと察すると、隊列の中央に移動してきた。

 『龍の鱗』パーティーもまたワイバーンの狙いに気付き、デッカーとクロスボウ使いのガーター、風を操れるハルドが後方から走って来た。

 

「どうする、Aランクパーティー?」

 

 灼熱化させた剣を構えたレオナルドがデッカー達を煽る。

 

「そこで見ていてもらいましょう」

「打ち漏らしたら俺が貰うぞ?」

「それはない」

 

 ふっとレオナルドは口の端に笑みを浮かべると、一歩引いた。代わってデッカーが前に出る。

 

「奴の左を攻撃する」

「「分かった」」

 

 デッカーが手を突き出し、多数の氷の(つぶて)を作り出す。ガーターもクロスボウの弦を引いた。

 

「アイシクルバレット!」

 

 デッカーの攻撃を合図にクロスボウも放たれる。

 

 向かってくるワイバーンのやや左、ワイバーンにとっては右側を氷散弾が掠める。

 ガーターの矢は正確に顔を狙っていた。瞬時に反応したワイバーンは左へロールする。

 しかしそのタイミングで左に風の壁が発生した。ハルドの法力だ。

 左旋回を阻止されたワイバーンは慌てた。狙撃された顔をかろうじて伏せて躱す。

 風はワイバーンを中心に旋風となり、それは風の檻で閉じ込めたようになった。

 

 動きが封じられて固定目標となったワイバーンを、ガーターのクロスボウが再び狙う。

 

 眉間に向かって飛んでくる矢。

 到達する直前、旋風が止んだ。矢は風の影響を受けることなくワイバーンの眉間に突き刺さる……

 と思いきや、ワイバーンは鋭い歯が並んだ口で矢を掴み取り、噛み砕いた。

 攻撃を防いだワイバーンは、旋風が止まっている今が反撃の時と、翼を羽ばたかせる。

 

 が、

 

「アイシクルキャノン!」

 

 散弾ではなく、大きな塊になるまで生成した氷砲弾が、ワイバーンの胴体を突き抜けた。

 ガーターの矢に意識を集中していたことで、逆に胴体の動きが止まっていたのである。デッカーは十分に狙いをつけて氷砲弾を発射することができた。

 胴体に大きな穴を開けられたワイバーンは、道と森の境に墜落した。

 

 デッカーは地面に横たわったワイバーンを背にして、誇らしげに振り返った。

 

「見たか! これぞAランクを狩る資格を持つパーティーの実力!」

 

 竜使いやヘキサリネ兵、探検者(エクスプローラー)達が、うおおおおーっと大歓声を上げて『龍の鱗』を讃えた。

 大歓声を受けて、鼻の穴を広げてドヤ顔になったデッカーは、それら観衆を見渡した。

 

 見せつけねばならない。『ヤツ』はどこだ?

 

 その対象は、ようやくふらふらと辿り着いたところだった。

 デッカーのいう『ヤツ』とはマヤのことである。

 マヤは、サンドラとリネール、イレムと共に一番最後に到着した。ヒーハーゼーハーと息も絶え絶えの状態で、やっとこ出した声はこれである。

 

「……も、もう走れない。ちょ、ちょっと休ませて……」

「マヤちゃん、まずは水を飲もう」

 

 サンドラに差し出された水筒をあおるマヤ。そして手のひらを自分の顔に向けると、

 

緊急(エマージェンシー)酸素吸入(オキシジェン・インヘイラー)

 

 しゅぱーっと顔に向かって空気を吹き付ける。単なる空気ではなく酸素である。

 

「ふう。ありがとう、サンドラちゃん」

 

 少し顔色が回復したマヤが水筒を返す。

 

「ほんと、体力ないねえ」

 

 リネールがニヤニヤして言うと、

 

「お昼まで寝てないで、早起きして少し走ったりした方がいいと思うの」

 

 と、サンドラが止めを刺した。

 

「がーーん!」

 

 2人に追い打ちをかけられ、再び酸素吸入をするマヤ。

 そのマヤの前に影が立った。顔を上げると、デッカーである。

 

「見たか、俺の活躍を!」

「へぇ? 何のことでしょう?」

「き、貴様! あれだけ模範的な戦いしたのに見てなかったのか! 見ろあのワイバーンを!」

 

 デッカーが指さした先には地面に横たわるワイバーン。胴体を撃ち抜かれ、膨大な血の海に沈んでいる。

 

「すげぇ! これさっき飛んでたワイバーンか!? おっさん、これ倒したのかよ! すげぇな!」

 

 デッカーが気に入る反応を見せたのは、イレムだった。

 一方、濃い酸素を取り込んで、酸欠で喘いでいた脳みそや細胞達がようやく復活してきたマヤは、復活して最初に見せられたのが血の池に浸るワイバーンの惨殺体とあって、物凄い嫌な顔をした。

 

「うええええ気持ち悪う! もしかしてあれも持って帰るんですか?」

「ボウズ、貴様なかなか見どころがあるではないか。それに比べこの生意気な小娘! 貴重なAランクの素材だぞ。持って帰るのは当然! お前のストレージとやらに入れる隙間が無いなら、泉の拠点で倒したオークを捨ててでも入れるのだ! 俺達『龍の鱗』の戦果を実証する証拠だからな!」

 

 そしてずいっと顔を近付ける。

 

「いくら倒そうがオーク・ソルジャーは群れであってもCランク」

 

 そして親指て自分の胸を示す。

 

「俺が倒したのはAランク」

 

 姿勢を起こして再び見下ろすと、へっへっへと笑った。

 

「別に張り合ってなんかないんだけど。こっちはFランクなんだし。むしろ初心者相手に威張り腐ってる方が大人気なくない? ぶつぶつ」

 

 スーハースーハーと顔に吹き付けた酸素を吸って、疲れを癒やすのを優先するマヤ。

 リエラとフィリアがサンドラを呼びにやって来た。

 

「イグアノドンが1頭大怪我してるんだって。薬師さんがいるよって言ったら、連れてきてって言われたの。パテと薬草は大量にあるんだけど、配合が分からないんだって」

「恐竜さんも人と同じ配合でいいのかな?」

 

 顎に指を当てて傾げるサンドラに、フィリアが助言する。

 

「農工用で使役している恐竜の怪我の対処は、動物の家畜と殆ど違いありませんでしたよ」

「じゃあわたしの知ってる配合でもよさそうなの。竜使いさんところに行ってくるね」

 

 続いてレオナルドが、倒したオーク・ソルジャー20頭を馬に引かせて運んできた。

 

「マヤ、ぶっ倒したオークを持ってきた。そこのワイバーンと一緒にしまっといてくれ」

 

 マヤは酸素吸入をやめると、はーっとため息を吐いた。

 

「すっかりフィリアさんのお株を奪っちゃったな。はいはい、持って帰りますよーっ、冷凍にして」

 

 

 

 

<1日目途中経過スコア(補給部隊救出後)>

・デッカー(Aランクプラス)

   オーク・ソルジャー14頭(3頭追加)+ワイバーン1頭(共同)。

・マヤ(Fランク アンリミテッド・パーティー 5階級差違反制裁中)

   オーク・ソルジャー62頭。

 

 

 

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