異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
ヴェルディ領主は、前線基地の南にある南門の方へと、ノシノシと歩いてやってきた。
頭上の方でガサガサと音がする。そちらに目を向けると、枝の奥の方に黄色と黒の縞模様が見え隠れした。黄色という派手な色があるというのに、間に黒を挟んでいるせいか、木の中に紛れると意外と目立たない。体長1.5mの巨大グモ『タイガー・スパイダー』であった。
脚をわしゃわしゃと動かし、重なる枝の間をあの巨体がどうして縫って来れるのか不思議な速度で接近してきた。
ヴェルディは腕を組んだまま、斜め上目線でクモを睨みつけて動きを見据えていると、若い
ヴェルディは若い
ヴェルディは何事もなかったかのようにまた歩き出す。
南門は
ヴェルディが門の見えるところに来ると、そこにいた大男に声を掛けた。
「こっちはどうだ、ジオニダス」
声を掛けられた
「こっちは散発的に魔物が襲ってくるだけです。ですが周囲の木にはかなりのスパイダー系の魔物が潜んでいます。おそらく補給部隊を襲った別動隊が道伝いに来るのを待って、同時に攻撃してくるつもりでしょう」
「そういった戦術指揮を執ってる奴はどこにいるんだ?」
「魔族のことですな? 斥侯のパーティーに探らせてますが、危なくて殆ど動けてないです」
「その辺にいて、我々のように大声を出して命令していれば、見つけやすいんだがな」
現在、南門を守備する
木の上に登っていた見張りの
「道の奥に大型の影!」
「来やがったか、別動隊の魔物!」
「遠距離視法力者を呼べ!」
ヴェルディはジオニダスに尋ねた。
「中隊長に言って、カタパルトで攻撃させるか?」
道を凝視しながらジオニダスは答えた。
「いいえ。我々で足止めくらいしますよ」
遠距離視法力の者が走ってきた。
「遅くなった。どこだ?」
「道の最奥。まだ木の向こうだ」
遠距離視法力の者が目を凝らした。じっと見つめること数秒。
「むっ、あれはイグアノドンだ」
「なに?」
そのまま様子を観察していると、それらは緩やかに曲がる道を伝って、南門から直接姿が見える所までやってきた。
「間違いない、補給部隊のイグアノドンだ! 数頭の馬と騎乗兵もいる!」
「なんだと?」
つまりワイバーンの別働隊にやられたと思われたイグアノドン補給部隊がやってきたというのだ。しかも補給部隊にはいないはずの騎兵もいるという。
どういうことだとヴェルディも頭をひねる。
「もしかすると補給部隊は、
「確かにヴェルディ様の言う通り、
「追加の討伐隊は騎馬兵も募集したのか?」
ヴェルディの質問に、ジオニダスは首を横に振る。
「いいえ、騎馬傭兵の依頼は出してないですが」
「ヘキサリネ兵の姿もあります!」
ますます解らない。この集団は何だ?
だがこれは魔物の方も予想外だったようで、イグアノドンの集団を発見したワイバーンが、ぎゃあぎゃあと騒ぎ出した。コウモリも昼間にもかかわらず頻繁に飛び回っている。
さらに時間が経過し、補給部隊が南門前の直線路にまで到達した。南門にいる
10頭のイグアノドンと荷車。ヘキサリネ兵集団。4騎の騎馬。そして
この道は直線になったところで幅が広くなっており、見通しが良くなっている。攻めてくる敵が丸裸になり、南門からの遠距離攻撃に晒されやすいようにしてあるのだ。しかし進んでくると、一箇所わざと道幅を狭くしている所があり、そこで進軍を鈍らせるようにさえしてある。
攻め込まれ辛い反面、言い換えれば、来るのが友軍の場合、攻撃に晒されやすい道とも言える。
補給部隊からも南門が見えたようで、スピードを上げてこっちへ向かって来る。
すると周囲の森の中から、ガサガサと激しい物音がしだした。何者かが補給部隊の方へ移動している。
「森に潜んでいたスパイダーが動いてるんじゃないか?」
「見ろ、ワイバーンも急降下してくるぞ!」
「補給部隊を援護するぞ!」
「「「「おう!」」」」
うおおおおーっと
一方こちらは補給部隊。
数頭のワイバーンが急降下してきて、補給部隊の先頭をめがけて岩を落とした。
「直上、気を付けろ!」
先頭にいた
ドスンドスンドスン!
大岩が道のど真ん中に落ちた。それはもちろん人間に当てようとしたものだったが、外れても障害物になることが意図されていたようである。
「このっ、邪魔っけに置きやがって! しかも狭くなってる所で!」
わざと道幅を狭くしている所に、落ちた岩はいやらしい間隔で横に並んでいた。
「この幅だと、荷車が通らねえんじゃねえか!?」
補給部隊の動きが止まる。隊列で一番目立つイグアノドンと荷車が、広い道路の真ん中に晒されることになった。
マヤはワイバーンが飛び交う真只中で荷車の隊列が停まったものだから、背筋が凍った。
「敵に航空優勢が取られてるところで停まるなんて、いっちばんヤバいんじゃない!?」
サンドラがのどかにマヤを見上げて問うた。
「こーくーゆーせーってなぁに?」
「こ、航空優勢っていうのは、昔は制空権とも言って……」
旋回してぎゃあぎゃあと叫びあっていた5頭のワイバーンが、話し合いが終わったのかスピードが変わった。攻撃に転じたと感じたリネールが警告する。
「やばい、来そうだよ!」
4頭のワイバーンがぱっと散開して低空へ消えた。1頭だけは近くを飛び、バレルロールのような軌道を取りながら高速で補給部隊の周りを旋回した。
「撃て撃て撃てーっ!」
弓のような飛び道具に加え、火の玉やその系統の法力を持つ者が攻撃する。
「うわわわわっ」
「きゃーっ!」
マヤとサンドラは頭を低くして縮こまった。ワイバーンを追って、マヤ達の頭上をオレンジの火の玉や弓矢が飛び交う。それらは素早いワイバーンによってほとんど置き去りにされ、後ろで爆ぜたり飛び去ったりした。
レオナルドが叫ぶ。
「あいつだけに気を取られるな! 他の奴にも気を配れ! 陽動かもしれないぞ!」
低空へ降りた他のワイバーンは木で見えなくなっている。と思ったら、急に斜め右後ろから1頭が現れ、中央付近の荷車が襲われた。見えないのを利用してワイバーンは接近と急襲を図っていたのだ。
「シールド!」
咄嗟にクーノが天井の様にシールドを張った。ワイバーンの脚の爪がシールドの表面をギャリリリッと引掻く。
幸い荷物の上に掛けていた幌膜の一部を持って行かれただけで済んだ。
「どこから来るか分かんねえぞ!」
「俺に任せろ!」
そこは、探知法力を持つ『龍の鱗』パーティーのパイアスが引き受けた。
「ワイバーン2頭、左へ回り込んでこっちへ来る!」
その声を聴いて、同じく『龍の鱗』パーティーのデッカーとガーター、ハルド、それに弓を持っている竜使いが左の方へ構える。
だが姿は見えない。
「どの辺だ!?」
ワイバーンはかなり低空飛行をしているようで、道からは森の木々が邪魔をして全く見えなかった。