異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第131話「探検者増援部隊到着」

 

「「「オーエス、オーエス」」」

 

 南門から来た探検者(エクスプローラー)も加わって、道を塞ぐ岩をどけていった。

 リフト法力持ちが、道に散らばった岩のかけらや邪魔な石をまとめて浮かせて脇へどかす。石が掘った穴を排土板(ブレード)法力の者が埋めてならした。

 一連の作業を見ていたマヤは、『この人達、土建屋さんに就職したら絶対ありがたがれるわ』と思った。人力(?)でこのパワー。機械化は簡単には訪れないかもしれない。

 

「前進!」

 

 竜使いが号令し、イグアノドンがのっしのっしと歩き出す。

 左右を兵士や探検者(エクスプローラー)に守られて、とうとう荷車の隊列が前線基地の南門に辿り着いた。

 

「ここが最前線基地」

 

 荷物の上に乗っていたマヤは、門の梁を体を斜めにして避け、荷車と門の中に入った。

 中に入ると基地は非常に広く、兵員宿舎や倉庫や司令部などの施設を建てるに十分な敷地があった。またカタパルトやバリスタといった投擲用の砲台、兵士が整列したり大型獣を繋いでおける広場などもあり、臨時の施設のようには見えなかった。

 

「それはね、ここを切り開いたときに分かったんだが、ここにはもともと砦のようなものがあったようなんだ。木や草を少々刈るだけで、その地形を再利用できたんだよ」

 

 補給部隊を誘導している将校が教えてくれた。

 

「昔の砦跡? それっていつ頃のものなんですか?」

「ヘキサリネの記録には無いので、それ以前……百年以上前にはなるだろうな」

「そんな昔に、ここにこれ程大きな基地を作るような何かがあったって事ですね」

 

 

 基地の奥からは、ひっきりなしに剣撃や何かにぶつかる音、破裂音のようなの、火炎放射のような音、そして雄叫びや気味の悪い吠え声などが響いていた。サンドラが不安そうに音の聞こえてくる方に顔を向ける。マヤも聞こえてくる音を気にして、荷物の背から降りるのを止めると、先程の将校が手を貸してくれながら音の正体を教えてくれた。

 

「魔物の先頭集団が500mほど向こうまで来ているんだ。装甲獣を主戦力にして押し留めているところだ」

「「へぇー」」

 

 マヤとサンドラの声がハモる。

 

『つーか、この将校さん見たことがある。領都周辺警備隊の中隊長さんだ。たしかユスティニアスという名前じゃなかったっけか』

 

「じゃあ俺は増援の兵の配置を割り振ってくる」

 

 そう言って中隊長がその場を去ると、代わってまた別のどこかで見た顔の人がやってきた。

 

『この人も見たことがある。えーとどこだっけ。そうそう領都邸だ』

 

「って、ええーーー!? 領主様!?」

 

 マヤだけでなく、サンドラも驚いて石のように固まった。

 

「よう、やっと来たか」

「本当にいましたよ、最前線に国のトップが……」

「ウチは小さい国だからな。後ろでふんぞり返っていれば勝手に回ってくれるような国じゃないんでな」

「まあ中途半端に後方拠点にいないで最前線にまで出張ってきてたのは、今回は正解でしたね。泉の所にあった駐屯地、魔物に占領されてたんですよ。あそこにいたらヤバかったですよ」

「なんだって?」

「もう奪還して、そこにいた兵士さんも連れてきたんですけどね」

 

 そう言ってマヤ達と一緒にやってきた兵士達を指し示した。

 

 

 その兵士達に中隊長が声を掛けていた。

 

「来て早々ですまんが、北門から押し寄せてくる魔物を止めるのに参加してくれ……って、お前はコドリン上級軍曹じゃないか!」

「はっ、中隊長殿! 一時後方に下がっておりました負傷兵、ただ今より戦線に復帰いたします!」

「負傷はどうしたんだ……?」

「ははははっ、物凄い回復薬で治してもらいました!」

 

 コドリン軍曹がサンドラに向かって片目を瞑る。サンドラはへへっと笑顔を返した。

 

「ああ、そうか。君はあの薬の調合レシピ作成者だったか」

 

 えへへとサンドラちゃんは恥ずかしそうに照れた。

 

「コドリン軍曹達が戻ったぞ!」

「本当か!?」

「俺よりこっちの方が欲しいんじゃないか? ほら補給品だ」

「おお! 炸裂玉あるか!?」

「持ってけ泥棒。15cm玉か? それとも30cm玉か?」

「両方くれ!」

 

 補給部隊と一緒に来た兵士達が、まさかのキャンプ・スプリングに後退したはずの負傷兵、しかも全員回復して戻ってきたとわかり、前線基地の将兵は沸き立った。

 コドリン軍曹にヴェルディ領主が声を掛けた。

 

「キャンプ・スプリングが一時魔物に占領されたというのは本当か?」

「はっ。領主様が装甲獣部隊と共に出立した後に、ワイバーン30頭、およびオーク・ソルジャー120頭からなる陸空魔物連合によって攻撃を受けました」

 

 コドリン軍曹はヴェルディと中隊長に、ワイバーン空挺部隊によって始まった奇襲、続く地上からの制圧部隊による攻撃と占領、その後の第二次探検者増援部隊による基地奪還解放を、簡単に説明した。

 

 一方、第二次探検者増援部隊の出迎えをしたのは、ギルドマスターのジオニダスだった。

 

「デッカー。みんな。よく来てくれた。」

「マスター無事だったか」

「皆、怪我とかはないか?」

「大きな怪我人はいない。軽傷者は薬師見習いだという子供が全部手当てしてしまった」

「サンドラか。あいつはもう母親と引けをとらないな。それよりマヤ。目立たない様にしろって伝言、行ってなかったか?」

「え、目立ってました?」

 

 マスターが肩を落として、また大きく嘆息した。

 

「ワイバーンが3頭、一瞬で輪切りになったのを見たぞ。あれ、お前だろう。ニンジンじゃねえんだぞ。まあそれ以外にも数頭のワイバーンを増援部隊はやっつけてたから、それで霞れてればいいんだが」

「それってやっぱり、マヤさんの存在を隠しておきたいから?」

 

 マヤの後ろからひょこっと顔を出して問いかけたのはリエラだった。

 

「マリエ……っ! いやリエラ嬢、まさかと思ったがやっぱり来ちまったか」

 

 マスターは、すみませんすみませんとお辞儀を返す連れのメイドの姿も確認すると、溜息を一つ吐いてマヤの話に戻った。

 

「ここぞという時まで魔族には知られないようにしたかった。最後の一撃でマヤを使うのが理想だったんだが……」

「その意図には途中で俺も感付いて、なるべく大人しくさせてたんだが、こっちもあの状況だったんでな、難しかった」

 

 言い添えたのはレオナルドだった。マスターがまた目を大きくする。

 

「レ、レオナルド王太子まで!? なんだってあなた達はこんな所に来たがるんだ」

 

 想定外の人に驚いていたのはマスターだけではなかった。

 

「帰国はどうしたのだ帰国は」

 

 それはヴェルディだった。

 レオナルドは友人にでも挨拶するかのように、気楽な感じで「よう」と右手を軽く上げた。

 

「今日、帰国の為に出立したんだが、そしたら門の所に楽しそうにしてる連中がいたもんだから、ちょっと後ろをついて行ってみたところ、ここに来ちまったというわけだ」

「それでワリナの騎兵もいるのか」

 

 ヴェルディが目を向けた先には、喧騒の基地内でレオナルドの命令を待っている間、所在なさげにしている4騎の騎馬兵がいた。

 この王子様も何やってるんだかと、マスターはまた呆れていた。

 

「ワリナ本国から帰国命令が出たと言ってたのに、なかなか帰らねえでいると思っていたら、まさかこのタイミングを狙っていたとは。ここじゃ王子様待遇はしてやれねぇぞ?」

「気遣い無用。今俺は、探検者(エクスプローラー)のレオだからな」

 

 レオナルドが自分を親指で指してニヤッと笑った。

 

「騎馬兵もか?」

「ああ。俺のパーティーメンバーだ。ワリナ騎兵ではなく、探検者(エクスプローラー)として付いてきている」

 

 ヴェルディはジオニダスの方にちらっと目をやる。念のための確認だ。

 

「レオナルド王太子のパーティーは、護衛の者を一通り探検者(エクスプローラー)登録しています。もし探検者(エクスプローラー)の立場を利用してヘキサリネで武力行使をした時のペナルティ、つまりワリナ王国が各種ギルド連盟から除名処分を受けることについて、了承のうえで、です」

 

 兵隊が他国内で武力行使することは、当然主権侵害の戦争行為だ。しかし兵が探検者(エクスプローラー)として活動宣言していれば、道中で魔物や盗賊と派手に大立ち回りしても問題はない。要人の身辺警護という特別枠もあるが、あえて探検者(エクスプローラー)にしているのは、その方が自由度が高いからだ。

 だがもともとワリナ騎兵ということは、ちょっとしたことでいちゃもん、難癖をつけられる可能性は大いにある。なので普通だったらやらない。そこをあえてというのは、ヴェルディとレオナルドの信頼関係に期待しているのだろう。

 

 普通、戦争するには国境を越えて兵士を送らねばならない。そこで探検者(エクスプローラー)を隠れ蓑に兵隊を送り込んで、ある時一斉に蜂起させる、というのは当然思いつく方法だ。

 しかし国をまたいで活動する探検者(エクスプローラー)・冒険者を始めとする各種ギルドは、中立の組織である。そこで、そのような行為にギルド資格が使われたと認められた場合、その国をギルド加盟国から除名するという罰則を課すことにしている。国境をまたいだ商業、物流はギルドに依存しているので、ギルドからハブられるというのは、いわば経済封鎖されるようなものである。そうなれば鎖国、自給自足の国家運営を迫られるわけで、デメリットしかない。

 

 疑わられるようなことがあればワリナの国益にならないので、今回はレオナルドの独断だろう。それが道楽なのか、個人的な利益なのか。いつもお付きの側近二人は楽しんでいるだろうが、巻き込まれた騎馬兵はたまったもんではない。

 いずれにしろここでは、苦戦している様子のヴェルディにとってはありがたい話で、レオナルドはヴェルディに貸しを作れるのだ。

 

「まったく……。まあいい。Sランク探検者(エクスプローラー)とAランクパーティーの増援に感謝する」

 

 ヴェルディとレオナルドは、お互いニヤリと笑って握手を交わした。

 

 

 

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