異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第133話「監視塔へ」

 

 探検者(エクスプローラー)ギルドマスターのジオニダスさんに連れられて林の中に入ると、装甲車がいた。

 

「おお?」

 

 装甲車はガシャガシャと音を立てて歩いた。

 歩いた?

 

 それは鉄板の箱を被った恐竜だと分かった。箱とは言ったけど真四角ではなく、恐竜の体形を生かして覆うように作られており、結構格好良い。

 

「上に回転砲塔付けたら、戦車になりそう」

 

 わたしの呟きを聞いたらしいリエラさんが、くりくりとした目で探りを入れるようにわたしを見てきた。

 

「ほうとう? せんしゃ? その話、あとで詳しく聞かせてね」

 

 しまった。また不用意に異世界情報を呟いてしまった。

 オーバー・テクノロジーな話をしても、洞察力に優れたこのミリヤのお姫様は理解してしまうかもしれないのだ。危ない危ない。

 

 装甲獣は壁のようになって並んでいた。その間を通って壁の向こうへ行く。

 

「子供!? お嬢ちゃん、何でこんな所に? 危険だよ」

 

 わたしに気付いた兵士がびっくりしてそう言った。

 

「そ、そうですよねぇ。やっぱりわたしはここでお(いとま)を……」

「戻っていいわけねえだろ」

 

 回れ右したわたしを、後ろから来たレオさんがまた襟首を掴んで引き戻した。

 ぞろぞろとやってきた探検者(エクスプローラー)集団に、何だなんだと目を向けてくる兵士達。ここにいる兵士は臨戦態勢を取って出番待ちをしているようだった。

 その先が戦闘の最前線で、別の装甲獣を盾にして、法力の火の玉や弓矢を飛ばして兵士達が戦っていた。

 

 その兵士達の数十メートル先で何かが炸裂し、土煙が舞った。土煙の中から奇声を上げて数体のゴブリンが現れる。ウオォォと槍を持った兵士が迎え撃ち、斬り合いになった。激しい剣撃の音。ゴブリンが倒され死体の山に加わる。負傷した兵が下げられ、待機していた交代要員がすぐさま配置につく。その間に弓矢が放たれ、また法力の火炎玉が飛ぶ。

 

「息つく暇もなくゴブリンが攻めてきてるじゃないですか!」

 

 中隊長が説明した。

 

「北門からどんどんと入ってくるので、きりがない状態なんだ」

 

 マヤの体がぽぅっと水色の靄をまとう。

 

「これもうわたしがオキシジェン・カッターで刈り取ったほうが早いのでは……」

「待て待て、まだ暴れてもらっちゃあ困る」

 

 レオさんに止められた。

 

「だからこっそりと、お前に結界とかいうのを張ってもらうんだ」

「基地を見渡さないと張れないんですよ? 監視塔まですぐ行けるか分かんないのに、その間にも怪我人が……下手すると死んじゃう人も出るかもしれないのに!」

「そこは私達の問題だ。それに超回復ポーションも持ってきてもらっている。持ち堪えてみせよう」

 

 中隊長はきっぱりと言った。

 うむーっと不満そうな顔をするわたし。だけど。

 問答してる暇はないか。

 

「分かりました。早いとこやりましょう。その基地を見渡せる監視塔ってどこです?」

「あの右手に見える大木だ。一番上に展望デッキがあって、そこまで階段が作ってある」

 

 うおー、これは立派な巨木だ。杉とかメタセコイアの、ばかみたいにでかくて、枝が生え放題になってるやつって感じ?

 

 監視塔は基地の真ん中に生えている巨木にデッキを取り付けたものだった。デッキは5階層あって、最上階が展望デッキ、つまりわたしの目指すところ。一番下のデッキはぐるりと木の幹を囲っていて広く、事務所のようなものまである。それほどまでに木は大きい。

 

 現在巨木は魔物側の支配内にあった。

 中隊長の説明が続く。

 

「北門から雪崩込んだゴブリンは、西寄りの兵舎伝いに後退するヘキサリネ兵を追う形で攻め入っていたので、監視塔に残っていた兵は、魔物に囲まれる前に東回りで脱出した。そのルートを使えば気付かれずに近付けるはずだ」

 

 レオさんがざっと巨木と周囲を見回した。

 

「直線距離にして150mってとこか。小細工なしで突っ切ってった方が早くねえか?」

「ゴブリンは後ろにいくらでも控えている。見つかれば向かってくるは必須。ゴブリンとは思えぬ身体能力だから、手こずりますよ。」

「わたしとしてはさっさと済ませたいから、真っ直ぐ行っちゃいましょうよ。こっち来たらスパスパ切ってやります。」

「だからお前は戦うなって。一種独特で目立つんだよ。でも真っ直ぐ行くのには俺も賛成だ。俺の騎兵を使おう。ケン、クーノは、てっぺんまでマヤに付き添って護衛しろ。上に行ったらワイバーンが襲ってくるかもしれんからな。俺と騎兵、リエラ、フィリアは木の周りに展開。マヤが戻るまで魔物を近づけさせるな」

 

 皆が頷いた。

 

「俺はどうすればいい?」

 

 イレムが聞いた。わたしは託児所の職員として止めに入る。

 

「あんたはここにいなさい。Fランクなんて役に立たないし、絶対余計なことするでしょ」

「お前だってFランクじゃねえか! 俺、ちょっと法力で辺りを見てみたんだけど、そしたらもの凄く光ってる反応があっちの方に1個あるんだ。強力な魔物じゃねえかな」

 

 と、北の方を指さした。

 

「ん? 強力な魔物? それとも……」

 

 レオさんははっとした。

 

「気が変わった。イレムも連れていく。ケン、俺がてっぺんまで行く。代わりに木の下を頼む」

「了解っす、若」

「えー? そしたらイレムのおもりはレオさんやってくださいよぉ?」

 

 っと託児所の職員をレオさんに押し付けようとするわたし。

 すると中隊長が増援を申し出る。

 

「こっちからも兵力を回しますか?」

「そんな余裕ねえだろ。普通に牽制してくれりゃあいい。俺らが走り出したら、正面からのゴブリン共への攻撃を強めてくれ。俺達の戻るところをなくさないでくれよ」

「はは、了解です」

 

 中隊長は笑って了承した。

 

 

 突入するのは、ワリナの騎馬兵4騎。騎馬兵とタンデムで、わたし、イレム、クーノさん、そしてレオさんも馬に跨った。馬の横にリエラさん、フィリアさん、ケンさんがつく。この3人は自力で150mを走らなければならない。

 林の中をやや東に移動し、正面に巨木を見据えた。

 

「行くぞ!」

 

 4騎の馬と、伴走する3人が一斉に駆け出した。

 

 

 

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