異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第134話「監視塔攻防 その1」

 

 ドガガッ、ドガガッ、ドガガッ

 

 駆ける馬の蹄音。

 

 ヘキサリネ陣地に向かっていたゴブリン達が音に気付き、叫び声を上げて一斉に馬の方へ向きを変える。すると……

 

 シュルルルルル……

 ボボン、ボボン、ボボボン!

 

 そのゴブリンを炸裂玉が襲った。ヘキサリネ陣地後方のカタパルトからの攻撃だ。大半のゴブリンは再びヘキサリネ兵のいる方へ牙をむいて怒りを表し、武器を振り回して陣地へ向け駆けて行った。

 ゴブリン溜まりになっている所にいたゴブリン・ロードが馬の方を憎々しげに睨む。すると、近くにいたオーク・ジェネラルが動き出した。ブゴォッとオーク・ジェネラルが合図すると、集まったばかりのオーク兵40頭ほどが巨木の方へと向かった。

 

 

 

 

 4騎の馬は150mをあっという間に駆け抜け、巨木に取り付いた。レオとクーノがサッと飛び降り、イレムもぎこちなくも飛び降りる。マヤは……騎馬兵の手を借りたにもかかわらず、落っこちて尻もちをついた。

 

「あいたた……」

「へっ、かっこう悪ぅ」

「むうーっ。レディーには手を差し伸べて降りるのを手伝うとか、引き起こしてくれるとかしてもいいのよ、ちゃんとした紳士になるんだったら!」

「誰がレディーだって? 全然大人じゃねえだろ。ってかガキババアだろっ」

「ぬわぁにいぃーー?」

「漫才してないで上にあがるぞ! お前たちは下の守備を頼んだぞ!」

「ははっ! お任せください!」

 

 リエラやケン達は懸命に走っているが、まだ到着していない。が、待っている暇はない。

 騎馬兵に階段下を任せ、レオ達は階段を駆け上がった。

 

 

 先頭はクーノ。階段の幅のシールドを張って、盾のようにして上がっていく。

 

「無人になってから、スパイダー系が巣を張ってるんじゃないかと思う。イレム、この木に魔物がいないか見てくれないか!?」

「あいよ! えーと、上の方に2匹反応がある!」

「やっぱりな」

 

 第3階層まで上がった時だ。

 

「この近くにいる!」

 

 イレムが言うと、クーノのシールドに粘着性の糸が絡んだ。が、シールドにくっつくことはなく、糸は滑り落ちていく。

 

「右だ!」

 

 枝と葉の間から、黄色と黒の縞模様のものが、のそっと出てきた。タイガー・スパイダーだ。タイガー・スパイダーがブベッと粘液を吐いた。

 クーノがさっとシールドを移動させて粘液を防いだ。

 

「サンクス、イレム。お前いると楽だぜ!」

 

 クーノに褒められてイレムが嬉しそうにする。

 シールドの横から、レオが剣を灼熱化させて飛び出した。

 

「おらぁーっ!」

 

 じゅばぁっと溶けるように剣がクモの頭を貫通した。どさりとデッキの上にクモが落ちる。

 

「一丁上がりっと。ん? マヤはどうした?」

 

 振り返ると、マヤだけいない。

 少しして、ふーふー言いながら、どてっどてっと一応駆け上がってきた。

 

「皆さん……速いです……きゃあっ!」

 

 階段を上がったところに、ひっくり返った巨大グモがいたので悲鳴を上げた。引き攣った横目でそれがタイガー・スパイダーだと認識すると、怯えた声で言った。

 

「こ、これの脚が美味しかっただなんて、何かの間違いだわ……」

 

 タイガー・スパイダーの脚には肉が詰まっており、魚肉ソーセージ似の味なのである。アイポメアニール採取クエストの時には飽きるほど食べたものだ。

 イレムがマヤの横の辺をキョロキョロしながら呟いた。

 

「もう1匹降りてきたんだけど……」

 

 すると一点で視線が止まる。

 マヤはイレムの顔を見た後、その目線の方に目を向けた。じっと見ると、横の枝の上に、微妙に背景の景色がレンズを通したように歪んだ所がある。マヤの体からぼわっと水色のフレアが立った。

 

「ぎゃああああ固体化酸素(オキシジェン・ソリドファイ)!」

 

 歪んだ景色が水色の氷に固められた。すると氷の中で何かが明滅し、やがて何かはタイガー・スパイダーになった。体が透き通る光学迷彩の能力で、周囲の景色に溶け込んで近付き襲ってくるカメレオ・タイガー・スパイダーだ。

 カメレオ・タイガー・スパイダーは氷漬けになった状態で、ごとんとデッキに落下した。

 マイナス200度以下の固体酸素で覆われては、1分も経たずに芯まで凍ってお陀仏である。

 

「ちっ。マヤは攻撃するなって言ったろ」

 

 レオは苦い顔をした。マヤは興奮が収まらない状態で返す。

 

「だって、だって、すぐそこにいたんですよお!? 防衛本能です!」

「これは仕方ないのでは? 外からも見えなかったでしょうし、大丈夫でしょう」

 

 クーノが言う通り、3階層は葉が生い茂った中の方にあり、外からは見えにくい。レオも渋々ではあるが納得した。

 

「イレム、他はもういないか?」

「うん、もうこの木に魔物の反応はないよ」

「よし、てっぺんまで駆け上がるぞ!」

「ひー、まってくださーい」

 

 

 最後の階段を登り、木の幹に張り付くように作られた、緩く上り坂になっている渡り廊下のような通路を行くと、周囲の葉が刈られて360度見晴らしがよくなっている展望デッキに着いた。広さは6畳ほどもある。

 一面に血の跡や、一部床が焦げた跡などがあって、マヤは顔を引き攣らせた。

 

「ぜーはー、な、なんの、殺害、現場ですか」

「探知や遠見の法力者を狙った刺客に襲われたって言ってたやつだな」

 

 探知法力を持つイレムは身震いした。

 クーノが展望デッキから身を乗り出すようにして、北門の方を見た。

 

「いやいや若、この魔物集団、きりがねえっすよ。アリの行列みたいに北から続いてます」

「まあそんなこったろうとは思ったよ。マヤ、ここから基地が一望できる。その外側、50mくらいから外へ向かって『結界』を張れ」

 

 マヤは手すりのところまで行くと、ぐるりと見回した。魔物だらけだが、気にするのはそこじゃない。

 横にひょこっとイレムも顔を出す。こちらもうじゃうじゃいる魔物など目もくれず、法力を発動して目を凝らす。

 

「基地の外に人はいないですよね。いたら死んじゃいますからね。内側の膜を張っちゃいます」

 

 目安として、張りたい位置に片目を瞑って指を向ける。

 

酸素障壁(オキシジェン・バリヤー)内壁生成(ビルドインナーウォール)。外側も一旦同じ位置に張っちゃおう。外壁生成(ビルドアウターウォール)

 

 その時、イレムが叫んだ。

 

「レオ兄ちゃん、あそこだ! 強い魔物反応!」

 

 北門から入って少し行ったところの、門兵詰所のようなところ。人型だがゴブリンやオークとは違う、棒を持った黒装束の者がいた。

 

「黒ローブに魔法杖。いやがった!」

 

 急にそちらから重圧のようなものがのしかかってきた。

 杖がこちらを向いた。魔法陣が杖の先に現れる。

 

「気付かれた! 逃げるぞ!」

 

 

 

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