異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
戦場では常に想定外の事が起こるものである。
だが実戦経験のないガイアスには、想定外はすべて慌てさせる要素だった。
別の
「ここへ通づる道を大型獣が歩いてきているだって?」
コウモリの見た映像を共有すると、それはイグアノドンによる輸送部隊だった。
ん? こいつらは少し前、ワイバーンでオーク・ソルジャーの小隊を輸送投下して、始末させたはずだろ? 戦闘兵を随伴してる様子はなかったから、念のためワイバーンを1頭支援に残して万全を期したはず。そのオーク・ソルジャー小隊が来たならともかく、ヘキサリネ軍の輸送部隊の方が到着?
「まさかオーク・ソルジャーの小隊を退けて来たとでも!?」
ガイアスはもう一度
「これは……輸送部隊だけじゃない。兵士と冒険者集団もいる。もしかしてこいつらが輸送部隊に追いついてオーク・ソルジャーを……?」
ガイアスは想定外に一気に頭に血が上る。
泉の敵拠点は制圧済み。増援の兵や冒険者はそこで阻止されるはずである。
となれば、泉の拠点を制圧するより前に北へ向かっていた一団だろう。戦獣や補給部隊の他にもいたということだ。
輸送部隊が運んでいる補給物資には当然武器の補充もあるだろう。人的増援はたいした数ではない。それでも合流を許せばヘキサリネ軍の士気は上がるに違いない。
そこでふと気付いた。
「逆に言えば、目の前でこいつらを全滅させれば、防戦中のヘキサリネ軍の心はポッキリ折れるんじゃない?」
援軍、希望、期待。
全滅、絶望、落胆。
口が裂けたようにニャァっと笑った。
「なあんだ。動き始めれば後は見ているだけで完了する、僕のいささか華やかさに欠ける基地攻略に彩を添える為に、魔の神は絶好の退屈しのぎを僕に与えてくれたってわけか」
ガイアスは
「ワイバーン、タイガー・スパイダー、仕事だよ」
暫くして、ワイバーン7頭がその辺から岩をつかんで輸送部隊の方へ、また南門周囲に集結させていたスパイダー集団も輸送部隊に向かって動き出した。
「南門から見えるところに輸送部隊が来たら攻撃開始だよ。まずワイバーンは敵隊列の前方を岩で塞ぐんだ。道を塞いで敵の足を止めたら、タイガー・スパイダーは人間どもを潰せ。ワイバーンは散開して死角を突いて大型獣を仕留めな」
地上の魔物と飛行系の魔物の連携攻撃や、囮に敵の目を引き付けての複数による死角からの攻撃といったものは、現場の魔物が自発的にに実施する。
ワハイム沼で強化した魔物には、こうした連携行動パターンをビルドしたライブラリの
「パターンの開発には僕も関わっている。実戦で使うのは僕が一番最初だろうね。そして僕が実戦での成果第一号を持ち帰る。くひひひ。そうすればおそらく僕は近いうち、教導魔導師として参謀に抜擢されるに違いない」
そうしてガイアスは高笑いをし、魔物達の自律行動を開始した。
南側は魔物に任せ、ガイアス自身は北側からの前線基地中心部の侵攻を見ることにした。
といってもこちらも基本自律行動である。ワインをゆっくり飲みながら、次々と来るであろう戦果報告を聞いていればよいのである。気になるのは、がむしゃらに突撃ばかりさせる低級ゴブリンロードくらいのものだ。
北側から侵攻する魔物と対峙するヘキサリネ軍は、思ったよりも頑固に抵抗していた。
基地中央広場の南に広がる林。その境に急造された陣地はなかなかに堅固だった。空からのワイバーンの攻撃を受けにくい林の中に戦獣を置いて、即席で土塁を作り、ゴブリン兵を迎え撃っている。
「このようなシチュエーションでのワイバーンの戦術パターンをもう少し増やさないとだねえ」
ゴブリンロードはやみくもに突っ込ませるばかりで、ゴブリン兵はなかなか林の入り口に取りつけないでいる。さらにヘキサリネ軍は、カタパルトを使って破裂する鉄球をゴブリンが固まっているところへ投げ込んでくる。これでさらにゴブリン兵に被害が出ている。
奪取した北門からは、まだまだぞくぞくとゴブリンが入ってきている。いくら大量に用意したゴブリン兵とはいえ、そろそろ終わりだろう。
しかしオーク兵とサンダーウルフも混じり始めている。第2兵団の主力は強化したオーク兵だ。オーク・ソルジャーほどではないが、インストールしたライブラリで多少の集団連携攻撃ができる。個の力がゴブリンの比ではないので、同じように塊で突入させても、やられずに陣地まで辿り着くものが出るだろう。
さらにその後ろには第3兵団として、数は若干少ないが本命のオーガ兵が来る。
ヘキサリネ兵は予備兵力がない状態。この切れ間ない攻撃で、ゴブリン相手の時点で既に激しく疲弊している。
そこへさらに上位魔物による数の暴力だ。
どう見ても時間の問題でしかない。
そう思っていたのだが、ヘキサリネ軍に変化が現れた。
ドパアァァーンン!!
ゴブリン集団で破裂した鉄球の威力が上がった。一発でこれまでの3倍のゴブリンが吹き飛ばされたのだ。
「カタパルト投射された炸裂玉が大きくなった?」
ゴブリンの報告に、すぐさまウラを取りにいく。なぜ今になって弾が大きくなったんだ?
「
周回しているコウモリを呼びつける。だいぶコウモリの数が減っていた。戦闘の巻沿いを食うものが多いのだ。
降りてきた1匹の見た映像を共有すると、林の中に複数のイグアノドンと荷車を確認した。
「イグアノドン? 補給部隊のやつか? 南門はどうしたんだ?」
そういえば報告が上がってきてなかった。
「
南門の方面のコウモリに呼びかける。が、応答がない。
「まさか戦闘に巻き込まれて全滅してんじゃねーだろうな?」
少し放っておき過ぎた。
ヒヤリとして、慌てて基地南側に
そして急いで戻らせた1匹の見た映像を共有して息を飲んだ。
首を切られたものや頭を粉砕されたもの、胴が輪切りになったもの、そして燃やし尽くされたもの。補給部隊の攻撃に行かせたワイバーンとスパイダーが、全滅していた。
「な、なんで……こんなことに……?」
大広場のゴブリン共が急に騒ぎ出した。
「今度は何だ!?」
「ゲルグアガガ!」
どうやら基地中心にある大木に向かった冒険者がいるらしい。あそこは展望台となっていて、敵の監視兵がいた所だ。真っ先に探知法力者を始末して、敵の目を潰してある。
もしかして補給部隊に探知法力者がいたのか? それで再度周辺監視を? あるいは絶え間なくやってくる魔物に不安を抱いて、どれだけ増援が来るのかを目視確認したいのか?
こちらとしては、奇襲さえできれば、後はいくら戦力を見られても構わない。いやむしろ、絶え間なく来る魔物兵団を見て絶望してもらいたい。
「ひひひ、ならば見るといいよ。切れ目なくやって来る魔物兵団を見て、絶望するといいよ。それが最後に見た景色となるんだから」
取りあえず南門は放置だ。どのみち北門からの戦力だけでも潰せるのだ。もし南門から脱出されても、泉拠点にオーク・ソルジャーがいる。
今はちょっくら展望台の相手をしてやろうじゃないか。