異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第142話「【悲報】ガイアス、マヤちゃんの正体に気付く」

 

 ガイアスが詰みとなったことを自覚認識したその時、カチンとガイアスの胸の中で何かのスイッチが入ったような音がした。それに気付いたガイアスが目を大きく見開いた。

 

『まさか発動した!?』

 

 次にガイアスの意志に関係なく口からプログラムされた言葉(呪文)が紡がれた。

 

「火と光の上位精霊よ、我に応えよ。我の魔力を全て捧げん。魔力が欲しければ応えよ」

 

 ガイアスが上を向く。下級精霊の中で上位のものが反応して寄ってきた。

 ガイアスの目が驚きで開かれる。またも自分の意志とは関係なく動き始める自分に愕然とした。しかもこれはヴェルディの法力によるものではない。魔族の仕掛けなのだ。

 

『レ、レジストラジオネ・ロッサが発動した!? 僕に? 僕にか!? 僕はこれで終わりってこと? 終わりと判断されたっていうの? み、見限られたっていうの!?』

 

 一寸後、ガイアスの頭の上に魔法陣が輝いた。ガイアスが吸い取られるように萎み始める。ガイアスの意志とは別に、規定された続きの呪文を口が唱えた。

 

「火の精霊よ。我の中で、我の魔石を火炎と変え、我を内部から燃やし尽くせ。」

 

 ガイアスの口からゴォッと炎が吹き上がった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「マリエラ様!」

 

 咄嗟にフィリアがリエラの前に立ち塞がり、クーノがシールドを展開、全員をシールドの後ろに匿った。

 

「むっ、魔法で自害する気か!」

「ええ、魔法!? 魔素はどこから!?」

「止めろ! ってどうやりゃあいいんだ!?」

 

 ヴェルディ、マヤ、レオナルドが叫ぶが、対処方法が分からない。

 ガイアスは炎が出る口から、焼ける喉も構わず規定された最後の呪文を唱えた。

 

「光の精霊よ……赤の光を高く遥か山の上まで……打ち上げ……よ」

 

 マヤが両手を突き出し、クーノの張るシールドに構わず、ガイアスに向かって法力を発動した。

 

酸素分子振動(オキシジェン・バイブレーション)!」

 

 魔法であるなら阻止しようと強制的に酸素反応促進を試みた。

 ガイアスの周りにパラパラと魔石の粉ができて落ちる。

 シールドの向こうにもかかわらず、ガイアスの周りに変化が起きたので、クーノはおおっと感嘆した。

 

「マヤさんの法力はシールドでも止められないんだな」

 

 しかしマヤはそれどころではない。テントの中の酸素がみるみる減っていくのを感じ取ったからだ。空気中にある酸素が魔素との結合に使われている。このままだと皆が窒息してしまう。

 

「やばっ! 酸素充填(オキシジェン・フィリング)

 

 マヤの酸素ストレージから酸素を供給する。すると今度は炎を上げているガイアスの火がさらに激しくなってしまった。

 

「あ、あれー!?」

 

 立ち上がる炎でテントの天井に大穴が開いた。

 ガイアスは自分の体が魔法以上に燃え出したので目を見張った。そしてそれをしたであろう女児、マヤへ大きく開いた目を向けた。驚愕がガイアスを規定行動から逸脱させ、燃える口から自らの言葉を絞り出させた。

 

「お……お前はまさ……か……オキシジェン・デストロイヤー……!」

「え!?」

 

 またもや、みも知らぬ人、しかも魔族の魔法使いに、自分からは口にしたことのない法力名を言われ、マヤは動揺して後ずさった。

 ガイアスはそれだけ言うと、顔が業火に包まれ、口も目も炎の向こうに見えなくなった。

 

「ああ、燃えちゃう!」

 

 縛っていた縄が炎で焼けたことで、ガイアスの手が上にゆっくりと持ち上げられる。その手の先から赤い玉のようなのが生成された。

 

「なにそれ危険物!? なんか分かんないけど酸素充填(オキシジェン・フィリング)酸素分子振動(オキシジェン・バイブレーション)!」

 

 爆発でもしたらと思ったマヤは、魔法を阻止すべく酸素供給と酸素反応促進を続ける。

 しかし阻止することはできず、ボンッと軽い音をたてて赤い玉が打ち上げられた。

 それは木の上まで上がったが、それほど高くは上がらず、林の向こうに消えた。

 

 炎の中のガイアスだったものは、砂の人形が崩れるように粉々になって、そのまま燃え尽きてしまった。

 唖然と燻るガイアスの燃えカスを見詰める皆。

 

「うう、消せませんでした。魔法じゃなかったのかな……」

「内側から燃えてたわね。この辺に漂ってる魔素ではないのかもしれないわ」

 

 魔法を阻止できず悔むマヤに、リエラも訳を探る。

 一方ヴェルディは悔しがって拳を握りしめた。

 

「うぬぬ、まったく尋問できなかった。ヘキサリネに入り込んだ魔族は3人と言ったか。せめてあと2人がどこにいるかは確認したかった」

 

 そこに落ち着いた声で話かけたのはレオナルドだった。

 

「ヴェルディ、前にアンフィスバエナ騒動の時に、魔族と思われる奴が燃えたのは聞いてるか?」

「アンフィスバエナ騒動の時の魔族? ああ、報告を受けている」

「燃え方が今のと同じだった。あの魔族、あれも侵入者カウントに入ってるんじゃないか?」

「むう。なるほど、そうすると残りはあと1人か」

「俺の勘だが、そいつは転移魔導具のところにいるんじゃねえかな」

「ああ、そうに違いない」

 

 そこでヴェルディはようやくレオナルドの方に気を回せられるようになった。

 

「ワリナとミリヤでも魔族は活動を始めているそうだ」

「ああ。直接入り込んではいないが、隣国には潜入済みだと言ってたな」

 

 リエラも話に加わった。

 

「ヴェルディ様、我々の国に関しても情報を聞き出していただきありがとうございます。魔族は隣国を介して何かやっているということですね」

「その隣国がどこかまでは聞けなかった」

「ワリナもミリヤも、国境を接する国はヘキサリネを除いて3ヵ国ある」

「その全てなのか、一部の国なのか」

 

 ヴェルディとレオナルド、リエラが考察していると、テントの幕を捲ってケンが声を上げて入ってきた。

 

「魔族が打ち上げた何かが、北門の方向に飛んでいきました! それほど遠くない所に落ちたと思われます!」

「何だと!?」

「そういえば、アンフィスバエナ騒動の時の魔族も、打ち上げ花火みたいに何か打ち上げましたよね。もっとずっと勢い良く、高く飛んでいきましたけど」

 

 マヤが言うと、あの場にいたジオニダスも思い出したようだ。

 

「確かに、内側から炎を上げて燃え、赤い火の玉を打ち上げたというのは、あの時と同じだ。魔族の自害方法の決まり手順なのか?」

「だとすると打ち上げた火の玉には何か意味がある」

 

 レオナルドが言った。

 

「それがその辺に落ちた……ってんだな?」

 

 レオナルドに確認するようにヴェルディは顔を見合わせた。ヴェルディはバッとマスターに向いた。

 

「ジオニダス、捜索と回収を!」

「承知しました。しかし落ちたのはマヤが危険地帯を作った方角です。それを解除しないと探検者(エクスプローラー)が入れません」

 

 皆の目線がマヤに向けられる。

 

「ひいっ! か、解除しろと言われれば解除しますけど、魔物がやってくるかもですよぉ?」

「確かにそうだ。簡単には解除できないな」

 

 中隊長はマヤの意見に同意する。それじゃあと中隊長はマヤに質問を投げた。

 

「いっぺんに全部の解除はしないとか、うちの兵士が進むのに合わせて危険地帯を動かすとかっていうのはできないか?」

「ま、まあ面倒だけど、できなくはないです」

「では頼めるだろうか?」

「もちろんOKだ。いいなマヤ、やれ」

「な、なんでレオさんが返事したうえに、わたしに命令をー?」

「お前を的確かつ有効に扱えるのは俺だからだ。なんか文句あっか?」

 

 言うこと聞かない生徒を睨みつける先生のような目を向けるレオナルドに、マヤは背筋を震わせた。

 

「い、いえ、ありません……」

 

 あの破壊神(ザ・デストロイヤー)を顎で扱えるなんてスゲーという声が、外野から聞こえてくる。

 

「マヤさんをあんまり脅しちゃダメよ」

 

 リエラがレオナルドの背中を掴んで注意した。

 

「む……。で、では北門の外のマヤの『結界』を部分的に解除しつつ、ワハイム沼方向に兵を進める。兵が確保した内側を探検者(エクスプローラー)は捜索し、魔族が打ち上げた物を探す。イレムを連れてこい。マヤの結界の外に魔物がどれくらいいるか探らせる」

 

 なぜだか仕切っているレオナルドは、最後にヴェルディの方へ向いた。

 

「てな具合でいいか?」

 

 ヴェルディは大きく笑って頷いた。

 

「ひとまずそれでいい。だが魔族が撃ち放ったものについては後から出てきた事案だ。本来の目標は魔法転移魔導具の存在確認。これが優先する。中隊長、ハヤブサ岩までの道を確保しろ。マヤは『結界』の解除と再設置範囲について中隊長から指示を受けてくれ。ジオニダス、遠距離視法力者は捜索隊からは外しておくように」

「「了解しました」」

 

 ユスティニアスとジオニダスが揃って返事した。

 

「マヤの管理は引き続きレオナルド王太子に任せる。乱暴に扱うなよ。あとで返してもらうからな」

「あいよ。これの使い方をよく見とけよ」

「わたしは道具じゃないんですけどー」

「よーし、皆行動開始だ!」

「「「「おう!」」」」

 

 

 

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