異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~ 作:RightWorld
最前線基地北門にヘキサリネ兵と
そこでは
「なんで門の外に出ちゃいけねえんだ!」
「あまり先へ行くと死ぬといわれているので。マヤ殿というマスターが連れてきた
「またあのうさん臭い女か!」
「事実、魔物が来なくなってるじゃないですか」
門扉のところにいる兵士が、なんとかなだめていた。
「ユスティニアス中隊長とギルドマスター ジオニダス様が到着しました!」
「やっと来たか、待っていたぞ!」
立ち上がって目を向けると、中隊長とマスターに続いてレオナルドやマヤも一緒にやってきたので、デッカーは苦い顔をして何か言いたげに口を開いたが、ヴェルディ領主もやってきたので口をつぐむ。が、ますます苦い顔になった。
目の前にやって来たマヤを2階から見下ろすような目線で睨むと、挑発的な態度で話しかけた。
「その後、俺は5頭のワイバーンの止めを刺した。ゴブリンもオークも20頭は下らねえ。サンダーウルフも10頭倒してる。お前はちったあ戦果上げたのか、アンリミテッド・パーティー?」
目線を合わすと首が悲鳴を上げるので、マヤは正面を向いたままぶつぶつと返した。
「競争なんかしてないって言ったのに。だいたいそのワイバーンだって、地上に落っことしたのは、わたしがやったようなものよね? わたしが魔素取っ払ったからでしょ」
「ふん。地上に降ろしたからって、無傷のワイバーンの戦闘力は並の魔物の比じゃない。仕留めるにはそれなりの実力が必要なんだぜ」
「わたしだってこの基地入る前に3頭輪切りにしたじゃん。それにゴブリンもオークもわたしの方がもっと倒してるんじゃないかしら……」
マヤは聞こえないくらいの小声でぶつぶつと呟く。パンと手を叩くと顔を上に向けた。
「はいはい、そんなに競争したいんなら、こっからわたしちょっとがんばりますよ。勝ったら何してくれんのかしら」
デッカーは意地悪そうにニヤァっと笑った。
「魔物のランク補正入れた上で、Aランク1頭差がつく毎に高級蒸留酒1本ってのでどうだ? 上位
魔物のランク補正とは、簡単に言えばAランクの魔物1頭を倒すのは、他のランクの魔物だと何頭倒すのに相当するか、という換算値だ。正確な力量を表すものではないが、こういった賭け事ではよく使われる。例えばAランクはBランク4頭分、Fランクだと1024頭分といった具合だ。
横耳で聞いていたユスティニアスが、まったく
「わたしお酒飲まないんだけどなあ。わたしが勝ったら、1頭差につきリトルウィングの皆に、商業ギルドサロンの大盛りフルーツパフェ、トッピング乗せ放題を1つずつね」
「いいだろう。へん、当分酒代はいらねえな」
「デザート一生タダで食べられるわ」
二人がそれぞれ勝ち誇った顔でふっふっふと笑っていると、ジオニダスがやってきた。そしてマヤに向かってニヤついているデッカーの肩に手をポンと置いた。
「いろいろ言いたいことはありそうだが、ひとまず抑えておけ。変な約束してないだろうな? ろくな目にあわないぞ」
「ふっ、もう遅いぜ」
「もう遅いわ」
「?」
ジオニダスは怪訝な顔をするが、すぐいつもの怖い顔に戻って仕事の話をした。
「『龍の鱗』は遠距離視法力者を連れて、ハヤブサ岩への突入と、そこからのワハイム沼の半島を偵察してくれ。岩までの道はヘキサリネ軍が開ける」
「わかった」
ちなみにこの時点でのスコアを比較すると。
<1日目途中経過スコア(ハヤブサ岩強行偵察前)>
・デッカー(Aランクプラス)
オーク・ソルジャー11頭+ワイバーン9頭(共同4頭)。ゴブリン20頭以上。オーク20頭以上。サンダーウルフ10頭。
・マヤ(Fランク アンリミテッド・パーティー 5階級差違反制裁中)
オーク・ソルジャー62頭。タイガー・スパイダー45匹。カメレオ・タイガー・スパイダー1匹。ワイバーン4頭(うち1頭共同)。オーク・ジェネラル1頭。オーク50頭。サンダーウルフ50頭。ゴブリン30頭。
北門が開くと、ユスティニアス中隊長が一番最初に門を出た。後ろに続くのは兵士ではなく、マヤとレオナルド、イレム、そしてリエラとフィリアだった。そこから少し間を空けて、やっと兵士が姿を現す。
門を出て暫く行くと、踏み均されて広くなった道に、魔物がバタバタと倒れているのが見え始めた。兵士や
「イレム、魔物の反応は?」
「500m先に100匹ほどいる。大きさはオークよりでけえ」
「それ結界の外ですね」
「マヤ、結界の位置を移動させろ。500m前進」
「はーい」
レオナルドの指示通り、マヤは両手を空に向かって持ち上げて結界をずらした。
暫くして。
「やべえレオ兄ちゃん、さっきの100匹の反応が次々に消えてくぞ」
「……」
ユスティニアスが口を開けたまま沈黙した。
「あははは、見たくないわー」
「戦いもしねーで魔物倒すなんて、ずるいぞガキババア」
「マヤ、お前本当にやべー野郎だな」
リエラ、イレム、レオがそれぞれ思いを口にする。
「やべー野郎ってなんですか。邪悪を滅ぼす女神の力ですよ。はい、500m進んでも大丈夫ですよ」
レオナルドはユスティニアスに振り向いた。
「兵士を前へ。500m前進」
「しょ、承知した。500m前進!」
道を進みだすと、路上だけでなく、脇の林の中も、魔物の死体が文字通り山となって折り重なっているのが見えた。後ろから来た魔物が、倒れた魔物を乗り越えようとしてそこで息絶え、また後ろから魔物が登り、そして息絶えというのを繰り返して山が作られているらしい。
死んでる魔物の顔を見たフィリアが「ひぃい、またこの顔ですぅ」と怯えて顔を引き攣らせた。マヤの法力で酸欠死すると、どれももの凄い苦しそうな顔をして息絶えるのである。これも孤児院の子がマヤを
「な、なんでこんな顔して死んじゃうかなぁ……」
そう言って顔に斜線を浮かべていると、棒立ちになっているデッカーに気付いた。近付いて声を掛ける。
「現在進行系で魔物やっつけてますけど、賭けのこと忘れてないですよね?」
デッカーの顔は蒼白になっていた。かろうじて声を絞り出した。
「い、いったいを何やったらこんな……。だだだ、だいたいいくら数倒そうが、ゴブリンなんぞFランク。Aランク1頭と引き換えるにゃあ1024匹倒さねえと……」
「この辺からEランクのオークに変わりましたけど。あっちのはDランクのサンダーウルフとタイガー・スパイダー? あれ、あの大きな人型のは何です? 見たことない」
「こ、こりゃあオーガだぞ。こ、こんなの領都の周辺にぁ生息してませんぜ」
「転送とかいうので連れてこられたってことか」
「それがこの数!? オーガ兵団ですよこれ。人型魔物では最強の軍勢です」
「その凶暴なオーガ兵の集団でさえこんなあっさりと……」
額に角が生えたオーガも百の単位で倒れている。勿論皆この世の苦しみを一身に受けたような表情である。
「うぅ……鬼が“鬼の形相”を超える恐ろしい顔で……」
フィリアがリエラの後ろに隠れて、顔だけ出して震えている。護衛はどうしたのだろうか。
「オーガってランク何なんです?」
マヤが聞くと、ユスティニアス中隊長が声を震わせて答えた。
「オ、オーガはBランクだ。その中でも戦闘力は抜きん出ていて、限りなくAランクに近い上位種と位置付けられている。だが兵団を組んでるとなると、クエストではしっかりAランクの難易度だったはず……。
「ふーん。そのオーガさんも100頭は下らなそうね」
中隊長は気の毒そうにデッカーに目を向ける。デッカーは色を失って全身真っ白にしていた。他の兵士や
「やべえぜ、デストロイ現象……」
「これがデストロイ現象……」
「やはりマヤ殿はザ・デストロ……」
マヤは慌てて両手をバタバタと振って機先を制した。
「そ、その先は言っちゃだめえっ!」