異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第144話「ハヤブサ岩強行偵察 その2」

 

 そうやって結界を移動させつつ前進を続け、破壊された砦に到達した。

 無残な砦の様子から、生存者がいないのはひと目で分かる。数人を現場確認に残し、先へ進む。

 そしてハヤブサ岩を結界の内側に入れた。

 

「岩までの道を確保せよ!」

 

 兵士達がハヤブサ岩へ通ずる獣道へ突入していく。

 暫くして戻ってきた伝令が報告した。

 

「弱っていたタイガースパイダーを1匹始末した他には魔物なし! 道を確保しました!」

 

 強行偵察と言っていたのに、あっさりと魔物支配地域に入り、それどころか障害となる魔物は殆ど姿を見ることもなく無力化済み。拍子抜けである。

 

「デッカー、行こう」

 

 パイアスに肩を叩かれるまで、デッカーは意識がどこか違うところに飛んでいた。

 

「はっ! お、おう。い、行ってくる……」

 

 デッカーはやっとこ立っている感じで、ふらふらと歩いて行った。

 

「デッカーさん、心が折れかかってるわよ?」

 

 リエラがマヤに言った。

 

「あっちが言い出したことですから。しっかり責任取ってもらいます」

 

 デッカーは、ここまで夥しい数の高ランクの魔物の死体を前にして、開いた口が塞がらない状態だった。さぞ口が乾いていることだろう。マヤが言った通り、本当に一生分のデザートをリトルウィングに奢り続けなければならなくなりそうだった。

 夢遊病者のようになったデッカーを連れた龍の鱗パーティーと遠距離視法力者は、ハヤブサ岩へと向かった。

 

 ハヤブサ岩は崖から飛び出た岩で、ワハイム沼を上から見下ろせる絶好の位置にある。岩までの道は少々険しく危険らしいので、行く人数は制限された。

 

「イレム、この先の魔物は?」

「500m先に3匹。たぶんスパイダーの何かだ」

「向かってくる魔物はすっかりいなくなったな。沼の魔物自体がもういないか、上がってくるのを止めてるのか」

 

 イレムの探知法力結果を聞いて、レオナルドは沼の状態を予想した。

 

 

 

 

 デッカー達探検者(エクスプローラー)はすぐに戻ってきた。ジオニダスとヴェルディの所へ行くと、魂が抜け気味のデッカーに代わり、パイアスが報告した。

 

「遠距離視法力者がくまなく見ましたが、ワハイム沼の半島に、魔導具の類はありませんでした。大量のブラウシュテルマーと、ウルフ系の魔物が100頭ほどいるだけです」

「転移魔導具が無いだと?」

 

 ヴェルディは意外な結果に眉目を寄せた。

 ブラウシュテルマーは魔素瘴気を吐く魔物の花だ。沼の周りの魔素は物凄い濃さになっているに違いない。それはそこで魔物を強化させていたという予想を裏付けるものだ。だが魔導具が無いということは、魔物の転移はそこでは行われてなかったということになる。

 

「ここは魔物を強化するだけの場所だったようです。沼の開けた湖岸にワイバーンの足跡が多数ありました。おそらく発着場にしていたのでしょう。想像ですが、ワイバーンでここに魔物を連れてきて、濃い魔素を使って魔物を強化していたのではと思います。ブラウシュテルマーが大量にあったのはそのためでしょう。沼を中心とした窪地のような地形で魔素が溜まりやすく、ホットスポット化しやすかったことが、ここを選んだ理由だろうと」

「魔物出現点、つまり転移魔導具は別の所だというのか」

 

 一緒に報告を聞いたレオナルドとリエラが見詰め合った。

 

「キャンプ・スプリングで抱いてたモヤモヤはこれだ」

「そうね。魔素溜まりにいる魔物をワイバーンを使って空中移送してキャンプ・スプリングを奇襲したと思ったけど、ワイバーンが飛んでいった方角は魔素溜まりの方じゃなかったんで腑に落ちなかった。つまり魔素溜まり以外にもワイバーンの拠点があったってことだわ」

「そのワイバーンの拠点こそ転移魔導具の場所だ」

 

 そこでマヤは疑問を口にした。

 

「転送装置のそばで強化すればいいのに。もしここが地形的に魔物強化に適していて、ここでやらざる得ないなら、何でここに転送装置を置かなかったんでしょう? なんでわざわざワイバーンで連れてくるなんて手間をかけたんですかね?」

 

 ヴェルディも頷いた。

 

「マヤの疑問はもっともだ。ということは、ここに転移魔導具を置けない理由があるのだろう」

「どうする? ヴェルディ」

 

 レオナルドが聞いた。

 

「うむ。一旦前線基地まで戻ろう。中隊長は砦を兵士が常駐できるくらいに修復。監視兵を置いて、沼の残りの魔物が登ってきたらアラートが上がるよう整えてくれ。ジオニダス、探検者(エクスプローラー)は引き続き魔族が打ち上げた物の捜索を」

「「了解しました」」

「マヤ、『結界』はこの先も維持できるか?」

「ずっと結界ばっか見てメンテナンスしてればできますけど、基地まで戻ると遠くなっちゃうんで、正直どこまでできるか。他のことやりだせば手が回らなくなって管理できないだろうし、張ったまま放っておけば、そのうち壁に穴が開いて外の酸素が入ってきたり、結界内の植物が光合成で酸素作ったりして、消滅しちゃうと思います」

「む、サンソは植物が作るのか?」

「自然界にあるのはそうですね」

 

 リエラさんが目を輝かせてわたしを覗き込んできた。後で詳しくと好奇心旺盛なお姫様が訴えている。

 マヤは、はいはいと額に汗して頷いた。

 

「わかった。マヤの『結界』はそのまま放置し自然消滅でよい」

「はーい」

 

 マヤ達は基地へと引き返した。

 

 

 

 

 なおマヤの結界に入り込んでお亡くなりになった魔物は推定で、

  ゴブリン80頭、オーク400頭、サンダーウルフ500頭、タイガー・スパイダー50頭、オーガ200頭。

 ただし、道から逸れた森の中で死んだ魔物もいるので、数は今後増えるのが確実視されている。

 

 

<1日目途中経過スコア(ハヤブサ岩強行偵察後時点)

・デッカー(Aランクプラス)

   オーク・ソルジャー14頭+ワイバーン9頭(共同4頭)。ゴブリン20頭以上。オーク20頭以上。サンダーウルフ10頭。

・マヤ(Fランク アンリミテッド・パーティー 5階級差違反制裁中)

   オーク・ソルジャー62頭。タイガー・スパイダー95匹。カメレオ・タイガー・スパイダー1匹。ワイバーン4頭(うち1頭共同)。オーク・ジェネラル1頭。オーク450頭。サンダーウルフ550頭。ゴブリン110頭。オーガ200頭。

 

 

 

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