異世界のオキシジェン・デストロイヤー ~Fランクハンターだけど、大物狩る許可はもらってます~   作:RightWorld

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第147話「作戦会議 その1」

 

 食器が片付けられたテーブルの周りに、椅子や椅子になりそうな物を引っ張ってくると、ヴェルディ様やユスティニアス中隊長、レオさんパーティー、リエラさんパーティーが座った。わたしも座らされる。軍の参謀達もやってきて緊張を強いられる。

 さっそくサンドラちゃんが、リネールさんにも手伝わせてお茶を淹れてまわった。

 

 おお、これはリトバレー村のハーブティーだ。

 

 サンドラちゃんが法力を加えて加工したリトバヨモギが加えられいて、これを飲むとお腹がポカポカしてきて、頭がすっきり冴えてくるという優れものだ。皆はお茶を一口すすると、ほわぁ~と顔を和ませた。このお茶の最初の一口にはこういう効果がある。

 

 さっそく次の行動についての話に入った。

 レオさんがまず口を開いた。

 

「今度こそ転移魔導具の始末をしないとだな」

 

 続いてヴェルディ様もやらねばならないことを明確にした。

 

「それに加えて、そこにいると思われる魔族もとっ捕まえるぞ。転送した魔物をワハイム沼で強化させてたって事は、転移魔導具の所の魔族とワハイム沼の魔族『ガイアス』は、連絡を密に取ってたはずだ。だから遅からずワハイム沼の魔物が壊滅した事は、転移魔導具の所の魔族にも知られることになる」

「ガイアスと連絡取れなくなるからですね?」

 

 ユスティニアス中隊長が認識を確認するように聞く。ヴェルディ様は頷いた。

 

「そうなると、転移魔導具側の魔族はどう動くのかしら。逃げる? 沼の奪還に来る?」

 

 リエラさんの問いにケンさんは考える。

 

「マヤさんが魔物の強化魔法を解いてしまったら、ひ弱な魔物しか残らなかったっすよね。ということは沼で強化しない限り、連中が転送した魔物は使い物にならない奴ばっかってことですよね。そうなると逃げるしかないんじゃないですかね?」

「逃げた場合、転移魔導具はどうなるんだ?」

 

 ユスティニアス中隊長の質問には、わたしが答えた。

 

「西の森の例だと、置きっぱなしでしょうね。無人のままでも、あの魔導具は魔物を転送させてましたから」

 

 レオさん、クーノさん、ヴェルディ様も次々と意見を述べる。

 

「沼が頼れないと知れば、最初から強化済みの魔物を送ってくることも考えられるぞ」

「いずれにしても魔導具は破壊しないとですね。ひ弱でもこれ以上魔物が増えるのは困ります」

「そして俺達が早く動けば動くほど、沼の魔物が壊滅したことを悟られずに済む。魔族に逃げられる確率も減る」

 

 皆は一様に頷いた。なるべく早く動いて、魔導具のところへ行き、魔族を捕える、ということで意見は一致した。

 

「ではどこに魔導具があるかだが……」

 

 そこが問題だ。なるべく早くと言っても、場所が分からなければどこへ向かえばいいのという話だ。皆は考え込む。

 行き詰まったので、リエラさんが一旦話題を切り替えた。

 

「ところで魔族同士の連絡って、どうやってるのかしら? 方法とか頻度とか」

 

 脈絡のなさそうな疑問だが、ジオニダスさんが反応した。

 

「そういう魔法があることは間違いないだろう。オークソルジャーが離れた個体間で意思伝達できるようにな」

 

 ジオニダスさんが言ったことに、わたしは一つ疑問を呈した。

 

「魔法ってことは、魔素が必要なんですよね? オークソルジャーは魔素を取り払ったらテレパシー……じゃなくて、その個体間の意思伝達ができなくなったじゃないですか。ヘキサリネって全般的に魔素が少ないんでしょう? 途中で魔素が無い所とか少ない所があると、連絡取れなくなるんじゃないのかなあ」

 

 ヴェルディ様はふうむと唸った。

 

「もしそうなら、転移魔導具の所とワハイム沼は魔素で繋がってるはずってことか。ちょっと確認してみよう。国内の魔素濃度は定期的に測定している。領都周辺は特に念入りにやっているんだ。おい、配伝兵を呼べ」

 

 ヴェルディ様はそう言うと、司令部付の兵士の一人を呼んだ。

 

「領都邸に連絡して、最新の領都周辺の魔素濃度分布を教えてもらってくれ」

「はっ、承知しました。」

 

 その兵士は部屋の隅に下がった。そこで少しの間、念じるように目を閉じた。

 数分後、兵士は会議卓に戻ってきた。

 

「領都邸より返事がありました。領都ヘキサチカは濃度0.5以下。周辺街道は0.5。東方面はイーストフォーまで1以下。南方面1。西方面はウエストフォーまで1。以西2。これは先週の2.5から減少傾向にあります。北方面はノースフォーまで2、以北1。北の森3。以上であります」

「えっ、領都邸からの返事って何? どういうことです? ここから領都と通信する手段があるんですか?」

「配伝兵の法力よ」

 

 わたしの疑問にリエラさんが答えた。

 

「そちらの配伝兵が、領都邸の配伝兵とメッセージ交換をしたのよ。彼らは配信伝達法力、通称『配伝』というのを持っている人達ね。貴重な法力だから、国やギルドでも重要な立場にいるわ」

「配伝!? 領都ほど離れた所ともテレパシー……念話みたいなことができるんですか?」

「配伝法力持ちによると、メッセージ交換用の大きな共有ストレージがあって、そこに各自が伝言箱(メッセージボックス)を持ってるんですって。伝えたい相手の伝言箱に、伝言を念じて書き込む感じだそうよ」

「へ、へー。共有フォルダにメモファイルを置くようなもの? ファイルサーバー方式の電子メールみたい。ストレージって共有して使えるものもあるんだ」

「そこが本当にストレージかは分からないわ。そう解釈するのが一番理解しやすいから、通説ではそうなっているのよ」

「相手との距離は影響ないんですか?」

「ないみたいね。共有ストレージにアクセスさえできれば、距離は関係ないようよ」

「えーっ、それってこの世界のワールドワイドなインターネット空間みたいなものじゃないですか! 魔素に縛られた魔族の連絡魔法が可哀想に思えてくるんですが」

 

 魔素さえあれば何でもできそうな魔法だけど、そういったものに依存しない法力は、やっぱり魔法を駆逐しただけのことはある。

 ヴェルディ様が話を戻した。

 

「前提として魔素濃度0.5では連絡魔法が通じないとすれば、各方面は街道で仕切られる形となる。中でもやはりここ北方面の魔素濃度が突出して高い」

 

 ギルドマスターも分析に加わる。

 

「西方面の魔素も高めだが、減ってきているというのは、アイポメアニール採取クエストの時にマヤがスタンピードを阻止したのが効いてるんでしょうな。そうなると西ではない」

 

 ヴェルディ様もそれに同意した。

 

「転移魔導具のある場所は、北の森のどこかとみていいだろう」

 

 脈絡のない話と思われたリエラさんの疑問は、なんとわたし達の目的地探しに役立った。サンドラちゃんのお茶の効果だろうか。

 

「それじゃ北の森をしらみ潰しに探すか?」

 

 レオさんがそう言うと、マスターは否定した。

 

「いや、北の森は深い。簡単ではないぞ。それに時間がかかり過ぎる」

「そしたらどうすんだよ」

 

 レオさんが問うと、ヴェルディ様もユスティニアスさんもジオニダスさんも、むうと唸る。

 なら一旦置いといてと、わたしは違う視点から尋ねた。

 

「転送させた魔物は、ワイバーンでこっちまで運んでたんでしょ? てことは、ワイバーンが離着陸できるだけのスペースが必要だと思うんだけど」

 

 ワハイム沼は沼の岸辺が広いそうだから、そこに降りたんだろう。最前線基地にはオークを降下させてはきたけど、降りることはしなかった。一番広い中央の広場なら下りられたかもしれないが、戦場になってたんで、降りるに降りられなかったのだとわたしは思う。

 

「確かに。だがそんな所、北の森にあるか?」

 

 ユスティニアス中隊長がジオニダスさんに投げると、ジオニダスさんは記憶をたどるように腕を組んで上を向いた。

 

「ワイバーンが離着陸するには、開けた土地か、100m以上の高さの切り立った岩山が必要だ。だが北の森に急峻な地形はない。森が深くて開けた所もない。該当しそうな所はなかったはずだ」

 

 土地勘のあるギルドマスター、ユスティニアス中隊長、ヴェルディ様が頭をひねるということは、かえって悩みを増やしてしまっただろうか。

 そんな中、サンドラちゃんが叫んだ。

 

「アイポメアニールの元群生地!」

 

 皆の視線がサンドラちゃんに集まる。

 

 

 

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